よし、ICOCAで行ってみよう
娘たちのICOCAをつくった。その名も「こどもICOCA」という。JR西日本が発行する交通系ICカードの子ども用バージョンだ。ほかの電鉄会社からもICカードは出ているけれど、私がICOCAを使っているので、このチョイスとなった。
我が家の双子の娘たちは今年、小学校に入学する。つまり、4月になれば、幼児として無料で公共交通機関を利用することができなくなる。
私は自動車を運転しない。そのため、私一人で娘たちを連れて遠出をするときは、おもに電車を使っている。改札を通るときには「はい、ぴったりついてきてよー」と彼女たちに声をかける。まごまごしているうちに改札機のフラップドアが閉じてしまえば、なかなか悲惨な事態が待っているからだ(経験あり)。
思えば、はじめて二人の手を引いて電車に乗ったときは緊張した。彼女たちはたしか4歳だった。エスカレーターはスーパーやショッピングモールなどで慣れているからいいものの、ホームと電車のあいだのあのすき間。あれに落ちたらどうしようとか、車両内でぐずったらどうしようとか、雑多な不安が押し寄せてきたものだ。
しかし、彼女たちはいつのまにかしゃっしゃっと電車に乗り込み、私があとに続くのを待つようになった。手をつなぎながらもわずかに母を先導するようなそぶりを見せるのだ。ああ、お姉さんになったね、と感じる瞬間。私がぼんやりしているうちに、あなたたちはそんなにしっかりしてしまったの。
幼稚園から帰ってきた娘たちは今、ぴかぴかつるつるのICOCAを手にはしゃいでいる。年季が入った私のICOCAと違って、券面はほんとうにつるつる。彼女たちのこれからみたい。このカードでもっといろんなところに行ってくれるといいな、と思っていると、彼女たちに尋ねられる。
二人「ねえ、イコカってどういう意味なん?」
私 「やっぱさあ、大阪弁で『これを使ってどっかに行こか』ってことじゃない?」
へーえ、そっかあ、という声が返ってくる。「ICOCAで行こか」。いつか、彼女たちはそのネーミングにまた違った反応を示すようになるかもしれない。きっとその頃には、母親といっしょなんかじゃなくて、さっさと自分たちだけで出かけて行ってしまうんだろう。
成長を見守るとは、とても楽しくて、ちょっと寂しい。