池袋ウエストゲートパーク 18(ペットショップ無惨)
ウエストゲートパークって最高ですよね
私にとってライフワークの一つとなっている本作ではある。本屋へ足を運び、文庫本コーナーであ行を探し『石田衣良』を見る。そして、第1刷がいつなのか確認し、一番最新なものを購入する。好きな本ならば、単行本のタイミングで購入しないの?と良く聞かれるが、スタートが文庫本なので、ブレずに文庫本を購入している。
IWGPは兄の影響でドラマをみたのがきっかけ。堤さん、クドカン。ここから彼らの作品を好きになった。
本シリーズは主人公のマコトが池袋のトラブルシューターとして、最新の社会課題に向き合いながら、絶対的なGボーイズのキングや横山刑事など魅力的なキャラクターと一緒にさまざまなトラブルに向き合っていく物語である。
肝となるのが、『最新の社会問題』であり、クレヨンしんちゃんみたいに永遠の幼稚園児ではなく、マコトも歳を重ねてくれるので、より親近感が湧く。多くの読者も、続編が出ると、『おっマコト久しぶり、最近なんかあった?』といった語りけながらページを読み進めていくのではないと思う。
最新作といっても文庫でだけど
今回はコロナ明けの2022年あたりのタイムラインとなる。感染症の拡大に伴い、飲食店は軒並み苦戦、主人公マコトの家は、果物屋であり、もれなくコロナの影響を受けて家業の状態は非常に厳しいといった感じ。
あの頃、買い物に行くことすらみんな怯えて、マスクは必須、店頭の除菌スプレーで念入りに消毒し、誰かが咳をしたものならば、少し距離を置くといった具合。スーパーのレジでも、キャッシャーとお客の間には透明のビニールが隔たりとなり、飛沫ブロックの対策がされていた。
今となってはやりすぎ?な感覚もあるが、全体調和というか、見えない敵に人類は見事に翻弄されていた。とはいえ、今もインフルエンザが猛威を振るっている状況を考えると、多かれ少なかれ、流行病というものは今後も続くだろうし、問題が発生するたびに都度都度最適な方法を我々は見つける必要がある。
さて、前置きが長くなったが、今回は、“若年層の介護問題”、“賽銭泥棒”、“マッチングアプリ”、“ペットショップ”の4つがピックアップされている。
詳細はぜひ本を読んでもらいたいが、本作のタイトルにもある、ペットショップはなかなか厳しい話。大型ショッピングモールには必ずといってペットショップはある。
人間の癒し、孤独を埋め合わせてくれる可愛い犬や猫。小さければ小さいほど、愛おしく今日にでも連れて帰りたくなるが、彼らはどこで産まれたのか?もし買い手が見つからなかった場合、どこに行くのか?
人間のペットとして生きることを運命づけられた動物たち。人間が知性があるゆえに、命を管理する側の立場であるが、仮に人間より上位の存在が現れたとき、今の人間とペットの関係のペット側に我々がカテゴライズされると恐怖でしかない。
過去の歴史を振り返ると、人間は人間の中で、上流、中流、下流、奴隷といった階層分けをしてきた。ただ、人格・人権を守る闘いの結果、階層分けは一見見えなくなったが、資本主義の名の下、格差社会となっている。世界でみると未だ奴隷階級はあるが、今もなお姿を変えて階層分けは行われている。強いものが弱いものを管理し、パワーバランスが崩れると一時的な革命が発生し、立場が逆転する。だからこそ、皆少しでも強い立場を求め、お金を稼いだり、自身の存在をアピールするため、日々頑張っているのだ。
一言でまとめると
かなり本題からは外れてしまったが、IWGPはこのように世の中の社会課題をマコトの目を通して、一緒に考えながら、考えることができる本である。
別にマコトと同じ感覚である必要はないし、違うことが問題でもない。ただ、なかなか本音が言いづらい世の中において、本を通して対話できる貴重な機会を得るには良い作品である。
次回作が文庫化されるまでに私もアップデートせねばならない。