40年前の2倍!?近視を知って、子どもの眼を健康に。Part1
世界的にも増加傾向!子どもの近眼
子どもの近視が増えています。
2021年度の調査では、日本の高校生の7割近く、中学生の6割近く、小学生でも5割以上が、裸眼の視力が1.0未満であることが分かりました。
特に小学生の近眼は、40年前と比べ、2倍以上になっているというデータもあります。
近視が増えた理由はさまざまな理由が考えられますが、大きな理由のひとつには生活習慣の変化があげられます。
スマートフォンやタブレット、ゲーム機などに接する遊びが増え、子どもも眼が疲れるようになりました。
外遊びで遠くを見ることが少ないこと、睡眠時間が少なくなったことも近視が増える要因となっていると指摘されています。
皆さんのお子さんにも、当てはまることが多いのではないでしょうか。
子ども時代の近視を避けるための節目と言われるのが6歳です。
小学校入学前などより低年齢で近視を発症した子は、成長に伴い、強度近視になるリスクが高くなるといわれています
近視は、様々な病気のリスクになります。
お子さんが小さい時から眼の健康を意識することが大切なのです。
そもそも、近視って何?
皆さんもご存じの通り、遠くのものが見えにくくなるのが近視です。
ではなぜ、遠くのものが見えにくくなるのでしょうか。
その秘密は、眼の筋肉にあります。
眼には、眼の筋肉(毛様体筋)とレンズ(水晶体)があります。
眼の筋肉が、レンズの厚さを調整することで、遠くのものも近くのものもはっきり見える仕組みになっています。
このように、遠くを見るときは眼の筋肉がゆるみ、近くを見るときは眼の筋肉に力が入ります。
治る近視と治らない近視?
さて、子どもの近視には2種類あります。
「仮性近視」と「軸性近視」です。
「子どもの近視は、治る」という話を聞いたことはありませんか?
治療次第で治る場合があるのが「仮性近視」です。
先ほど、ものを見るためには、眼の筋肉が重要な役割を果たしていると書きました。
ゲームやスマートフォンなどで、近くを見る機会が増えると、筋肉の緊張が続く状態になります。
遠くを見るときにも、眼の筋肉が緩まなくなってしまうので、レンズがうまく調整できず、遠くが見えにくくなってしまう、これが「仮性近視」です。
子どもの眼球の形が変わる?
一方で、元に戻らない近視もあります。これが図の右にある「軸性近視」。
絵のように、眼の長さ自体が伸びてしまい、筋肉がレンズを調整しても焦点が合わなくなってしまうのです。
「軸性近視」の原因の一つは、小さい時からの生活習慣だと言われています。
人間の眼球は、生まれたばかりの頃は小さくて、長さも短くできています。
6歳ごろまでに大人と同じようなサイズに成長してくるのですが、屋内で近くを見ることが多い生活をしていると、眼球自体の長さが伸びて、焦点が合わなくなってしまいます。
この「軸性近視」は、眼球自体の形が変わってしまっているので、もとに戻ることはありません。
子どもの眼を健康に!
近視は、遺伝するものでもあります。
親のどちらかが近視の場合、近視のなりやすさは2倍、両親がどちらも近視の場合、近視のなりやすさは5.7倍だという研究結果もあります。
ですが、生活習慣の改善で、子どもの近視のリスクは減らすことができます。
次のコラムでは、近視予防のための生活習慣について、お話したいと思います。
part2へ続く
監修:東北大学COI-NEXT「VISION TO CONNECT拠点」
吉田清香
宮城県出身
東北大学眼科学教室、日本眼科医会会員、日本弱視斜視学会会員、
日本小児眼科学会会員
藤岡俊亮
宮城県出身
東北大学眼科学教室、日本眼科医会会員、日本弱視斜視学会会員
執筆:沼田佐和子