本を何冊平置きで積むのか
本屋を始めた頃は、平積みする本と棚差しする本ぐらいの差しか考えていなかったけれど、時間が経てば立つほど、もう少し細かいところまで気になるようになってくる。
SPBSラジオの「飲み会の前のブックトーク「好きな本屋さんのはなし」ゲスト:橋本亮二さん(朝日出版社)」を聞いて…
開始37:00ぐらいに、長谷川書店さんへ営業へ行った橋本さんの話の中で、
自分もそのように感じていて、HUT BOOKSTOREの山積みは3冊までだと思っている。ほとんどの新刊書籍は試しで入れるときは1冊、少しは手に取ってもらえるかなという本は2冊を平置きにする。そして、これは押しですという本は何気なく3冊を積む。
4冊以上積んでしまうと、他の書籍がほぼ1冊しか並べていない中で、全体の雰囲気を乱すような変な空気感、違和感が生まれてしまう。押しが強すぎるというか、本屋側の意図が出過ぎる感じがする。
そんなこともあり、5冊入荷しても3冊を平台に並べて残り2冊はバックヤードに置いておき、売れたら補充する方法を取っている。
4冊以上積むときは、他の本と同じ平台に並べるのではなく、その本だけを並べる台を少し離れたところに設置をして、コーナーを作り、特別感を出すことで、たくさん積んでも許される感じを出しているつもりだ。
季節的なものやZINEはたくさん積む傾向
季節商品であるスケジュール帳は4冊以上平積みにしている。本を置く平台とは異なる台に置いているということもあるけれど、販売期間が2〜3ヶ月と短いものは少し強めに主張させるべく、空間の中で、あえて違和感を与えている。
またZINEも4冊以上平積みすることが多い。厚みが薄く、1〜2冊程度では存在感がないに等しい(特に中綴じの場合)。ある程度の冊数を積んでボリュームを出すことで、気づいてもらえる環境をつくっている。
書店によって考え方は違うはずで…
当店ではこのような感じだけれど、本屋によって違うはず。同じような規模の本屋はもちろん、大型店舗の書店や中・小型店舗の書店であれば、出入り口を入ってすぐに違うと分かる。
実際に大型店舗や中・小型店舗で働いたことがないため、勝手な憶測になってしまうのだけれど、大型店舗の書店であれば、山のように平積みすることで、今読むべき本を読みたい人がすぐに気付けるように、または、時間のない人でも本屋に入ってすぐに手に取れるようにしているはずだ。
数多くの本が並ぶ店内の中で、ボリュームを出すことで埋もれないように目立たせている。
名のある著名人、〇〇賞を受賞した作品など、大きなポップも付けて、今この瞬間の勢いをアピールしている。次々と本も売れていくと思うので、少量の陳列では本の補充が間に合わなくなるはず。そういう意味でもドンッと平積みしていると思っている。
たまに自分が足を運ぶ中型店舗でも、出入り口を入ってすぐのところに、1作品あたり十数冊ぐらいは平積みされているので、これが書店のスタンダードなのだと思っている。
ひと目見て“自分の本”だと思ってもらうために
その全ては、長谷川書店さんのところへ営業に行った橋本さんが話されていた「お客さんが自分の本だと認識する」、「本が語りかけてくるような感じ」のような気がしている。この言葉を聞いて、自分自身とても腑に落ちたという感じを受けている。
視線と沈黙のなかで訪れる人と本との距離感。
山のように積まれた本を見て、「みんなが読んでいる本=自分が読むべき本」、「あった!これこれ。これが読みたかったんだよ」と。大型店舗の書店では、山のように積まれた本を見て、今自分が読むべき本と思う人が圧倒的に多いのだと思う。
ポジティブというか、前向きというか、プラスの思考が働いている人が多い。そういう印象を受ける。
逆に当店では、他の本より少しだけ多めぐらいが、当店に足を運んでくださるお客さんにとって、ちょうどいい本の量だと思っている。それが当店にとって「お客さんが自分の本だと認識する」本の量。
それは単に、自分がプラス思考ではないだけかもしれないけれど、本屋の雰囲気やお客さんの雰囲気から感覚的に感じていること。理由を文章化することは難しい。そう、なんとなく、そんな感じがするのだ。
平置きにしてほしくないと言っている本もある
誰にでも見てほしいと強く主張をする本ではなく、棚の端ぐらいに並んでいたいと言っている本もあるように思っていて、棚差しされている本を端までスッーと目で追っていく人だけが気づく、ちょっと細かいところまで目がいくような人に読んでほしいと言っているような感じだ。
本の装丁や佇まいがそう思わせるのだろうか。そういう本は平置きも面出しもすることなく、そっと棚差しをする。すると…見つける人が見つけてくれる。
そういう世界が本にはあるような気がしている。
出版社さんは、いやいや…多くの方に見てもらうために平置きか、面出しに…と話されるかもしれないけれど、当店ではそうしている。
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