こぎとくん
これまで書いたやつをまとめることにしました
日記パート埃まみれのアカウントを引っ張りだして書いています。 文学フリマに足を運んだ。最後に行ったのは2017年か18年か、それくらいの頃。たまたま2024年5月19日の時間が空いていたから以上の意味を敢えて持たせず、浜松町から東京モノレールで流通センターへ向かった。 中学生の一時期、隔週で地元札幌から東京へ行く用事があり、物珍しさから好んで東京モノレールに乗っていた。北海道には私鉄も無いので京急という選択肢もあるはずなのだが、あの「複雑」な京急線の構造に嵌って飛行機の最
経堂のドトールにいる。 店奥の端っこ、ソファー席に座れた。 経堂のノジマで衝動的に折りたたみ式のBluetoothキーボードを購入した。 これが相場と比べて価格は妥当なのか、機能的に問題ないのかをチェックすることもなかった。 確かにコンパクトではあるが、折りたたむぶん、中央にスペースが存在している。T、G、Bが左手側、Y、H、Nが右手側にある。このスペース分だけ打ちにくい。"B"をタイプする時、私は右手の人差し指でタイプする癖があるのだが、右手側のNの左すぐ横にBはなく、代わ
子供が大好きで、妻のこともまあまあ好きで、家族で頑張っていこうという気概が持てている。それによって、ある程度自分を律することもできてきたし(まだ足りてないけど)、これまでの人生において一番といって差し支えないほど幸せである。 ところが、どことなく満ち足りていなさも感じる。最近ときどき、中学生の頃を思い出す。何者でもない割に自信に満ち溢れていた。人を見下していた。俺は何にでもなれると思っていた。何かを残す存在であると、信じて憚らなかった。 今では、それは誤りであったと当然
サブスクリプション。月2万で1日3食、ご飯を自宅まで配達してくれるアプリ。もちろん決まったメニューからではあるけど、たまにメニューの改廃がある。 最近、うな重がメニューに増えた。僕はうな重がとても好きで、本当に毎日3食、うな重だけを1ヶ月ほど食べ続けた。原価がなんぼのもんか知らないけど、定額なんだから食べたいものを食べなきゃ損だ。 今日も朝からうな重を食べている。お昼は外に出かける用事があるから、公園で食べようと思った。「外には配達してくれないんだよなあ」 なんともいびつだ
小さなドーム球場。僕たちは、県内の各市から集められた。 レペゼンホワイトストーン。僕は、ファーストを守ることになった。ばっちこい。 今日のピッチャーは、新山か。隣の市のチームでエース。新山、苦手なんだよな。なんか目がギョロっとしてて、心臓を掴まれそうな感じ。でもあいつも、結構ビビってるのかも。そりゃそうだ。相手は火星人。火星でいうところの、福島県あたりの代表選手らしい。 「一番 ライト 01011110 くん」 セカンドを守る賢志郎の母ちゃんがアナウンスをしている。こういうと
「せんせーこんにちはー!」 扉を開けるとカランコロンと鈴が鳴る。靴を脱ぎ捨て和室へ向かう。 「こんにちは!」 「はい、いらっしゃい。」 一目散に自分の定位置に座り、テーブルを前に正座をする。習字用の鞄から無地の半紙を取り出すが、3分の1は破けてしまった。気にせず文鎮で留め置き、墨汁を硯にドバっと入れ、筆をぬぅっと墨に浸す。硯の手前で2回ほど墨を落としたらすぐに半紙へ向かい、大きく大きく書いた文字は「うがい」。
オンラインサロンのタイトルに「大学」を冠する人は大学や学問へのコンプレックスが強いという話を昨日していた友人が、今日死んだ。 彼の家は母子家庭で、子供は彼一人だった。親友である僕にお母さんが連絡をくれた。遺品整理を手伝って欲しい、場合によっては形見として持っていて欲しいとのことだ。 彼は皮肉屋さんだった。 彼の押し入れの中には、皮肉の在庫がたくさんあった。 「ネットで変な語尾を使うおじさんは、聞かれてもいないのにきもい自分語りをする」 「『京都人は皮肉屋が多い 』的な話題
もやしは足がはやい。50mなら5.2秒で走る。 親友が昨日、不動産業界から足を洗った。水虫がひどいらしい。 あいつが担当してたプロジェクトで、足が出たらしいよ。進捗の遅延を責められて、逆ギレしたらしい。 取引先に謝罪に行く部長の足が重い。中学生の時、俺も足首につけてたな。 (了) それではまた。
今日は雨らしい。憂鬱だ。(※1) あの人に会えない寂しさを、なんとか紛らわしたい。(※2) スマホを手に取る。ゲームアプリもまとめブログも2分と持たず(※3)閉じてしまった。 LINEをすればいいじゃないかって?(※4)そんな簡単に送れるなら、とっくに送ってるつーの。 それでもなんとなく、あの人とのトーク画面(※5)だけは開きっぱなしにしてみる。 すると突然、あの人から連絡が。「いまなにしてる?」(※6) たちまち霧が晴れていくのがわかる。(※7) なのに私は
「すいません、池袋駅まで。」 タクシーに乗り込んだ。運転手が扉を閉める。運転手はチラチラとバックミラーを見ている。見ているのは私ではない気がする。車は目白通りを直進している。 「お客さん、歯磨きしてます?」 「はい?」 通常、タクシー車内で聞くことのない問いかけに、少し驚いてしまった。 「歯磨き」 とタクシー運転手はもう一度言って、右の手でブラッシングする真似をした。歯磨きを知らないと思われたのか。 「ええ、まあ。毎日。」 訝しげに私が答えると、運転手はわざ
賽銭箱に5円玉を放り込む。からんころん、と音がしない。あれ?と疑問に思う。このまま鈴を鳴らしてもよかったのだが、なんだか気味が悪いので、もう一度硬貨を投げる。5円玉はもうなかったから、10円玉だ。 ほいっと投げるが、やはり音がしない。周囲を見渡すが、人はいない。罰が当たるなと思いながら、賽銭箱のほうへ近づいて触ってみた。 なんと、これが柔らかい、ぷにぷにだ。おもちのような、赤子の肌のような。どうりで音が鳴らないわけだ。 触っていると何回も何回も触りたくなってくる。ずっ
「またか。」 僕は鍵を袋に入れて、鍵屋に電話をした。鍵が膨らんでしまい、使えなくなった。 最初は、「あれ?入りにくいな?」くらいのものだったのが、気付くとパンパンに膨らんで全く穴に入らなくなる。これを一週間単位で繰り返している。 「まあ、うちとしてはいいんですけどね。」 と言いながら、鍵屋はスペアキーを用意してくれる。 スペアキーで部屋に入ると、テーブルの上に先ほど袋に入れた鍵を取り出し、柄の方をかじる。いい具合に発酵していて、ほくほくと柔らかいのだ。 (了)
三年ぶりに地元に帰ってきた。この辺りも変わらないな、駅前の居酒屋がドーナツ屋になってたのは驚いたけど。 実家に着く。戸建て。二階建て。5LDK。鍵が開いていたのでドアを開ける。開けると、人がいる。いる。一人や二人ではなく、たくさんいる。ぎゅうぎゅうで入れない。たしかに、ここは実家のはず。表札を見返す。沢田。確かに。 「か、母さん?父さん?いる?ねえ、母さん?」 呼びかけると、居間の方から声が聞こえる。 「あら研二?おかえりー。いつ帰ってきたの?」 朗らかな声が
私、足の裏にイボがあるんです。ウイルス性の。液体窒素で溶かすんだそうです。怖いですよね。 ところが聞くところによると、足の裏にイボができない人もいるそうです。逆に、足の裏にイボがあることを隠している方もたくさんいるそうですね。 大河ドラマの主人公であるあの偉人も、本当は足の裏にイボがあったそうです。 ところが、主演のあの方は足の裏にイボがないんです。びっくりしました。私はね、足の裏にイボがある人が演じるべきだと思いますよ。足の裏。あなたの足の裏、見せてくださいよ。何も恥じるこ
「まあいいか、過失器使えば。」 彼は自転車で老人を轢いてしまった。老人は頭を強打して意識不明である。 彼は鞄からしずく型の過失器を取り出す。ダイヤルを中央から右へ回す。相手の方へ。 水蒸気が舞い、すべてが煙に巻かれてゆく。 やがて警察が来る。簡単な事情聴取を終えると、ろくに現場の調査もしないまま彼は無罪放免となった。逆に、老人遺族から慰謝料をもらう算段を立てている。 (了) 最近気づきました。これはショートショートではなくアイデアの種の種を放流してるだけなのでは、という
はい、では今日は造花専門家の生地地 成美(きじち なるよし)さんにお越しいただきました。生地地先生、よろしくお願いいたします。 よろしくお願いいたします。 今回は造花のなかでも生造花(きぞうか)を特集したいと思っているんですけども、ずばりこの生造花、最大の魅力はなんでしょうか。 そうですね、やはり生であるということ、これが1番ですね。 ええ。 生でしか出せない色味というのがあります。こちらなんか特に 先生、そちらはただの造花で 失礼、こちらですね。 はい。