【新書】ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治 2019年
教員である私にとって、本書は
「子どもの将来まで考えているか??」と
突きつけられる内容であった。
児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務した著者、宮口さんは「褒める教育だけでは問題は解決しない」と警鐘を鳴らしている。
教育現場でよく取り上げられる「この子は自尊感情が低い」というフレーズ。
そこに続くのは、だから問題を起こしてしまう。よって、自尊感情を高めなければならない。
そのため、褒めることが大切だ。というようなこの、お決まりパターンについて。
特に私が共感したのは、p125から始まる内容。
社会で普通に働いている大人たちだって、自尊感情が低い人はたくさんいるという内容のあと。
大人でもなかなか高く保てない自尊感情を、子どもにだけ「低いから問題だ」と言っている支援者は、矛盾しているのです。
問題なのは、自尊感情が低いことではなく、自尊感情が実情と乖離しているということにあります。
(中略)
無理に上げる必要もなく、低いままでもいい、ありのままの現実を受け入れていく強さが必要なのです。
この、
「ありのままの現実を受け入れていく強さ」
という言葉。
できているとこを認める、伸びているところを認めるのはもちろん大事だけれども、できていない自分を見つめ、受け入れるということはもっと大事。
だって、大人になったらそんなことじゃ認めてもらえない。小学校みたいに、ちょっとしたことができても、「それは当たり前でしょ」と言われるのが普通。
私たち教員は、教員(ちょっとしたことを認めてくれる他者)がいなくても、社会を生きていけるような力や考え方を育てなくてはいけない。
問題があるのに、できている部分を褒めることは、問題の先送りにしかならない。
という言葉も、ズシっときたなあ。
ほかにも本書では、非行少年たちの認知機能の弱さについて触れられている。
見る力や聞く力が弱いと、現実を正しく認知できない。現実を正しく認知できていないことが、不適切な言動に結びついている。
想像する力が弱いと、自分が何をしたのか適切に理解できていない。
こうした可能性から、「反省以前の問題」があることを挙げている。反省させる前に、その子に理解できる力があるのか、我々は考えなければならない。
「子どもの将来まで考えているのか??」
この先に出会うであろう、気になるあの子たちへの関わり方が変わる一冊。
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