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三秋縋「さくらのまち」感想文



マジの殴り書きに近い感想文


ライブラリーに入っている三秋縋作品。ってなんでイリヤの空くんが!?

断言したり、こうなんだろうって前提で話を進めるので、間違っているかどうかは知らん
でも俺は正しいと思っている

いいよね、これは俺が読んだ物語なんだし。
俺のものでしょ。
なっ、縋?
ソウダヨ!
俺の肩に乗っている縋もそう言っています。


感想に入る前に。


まず、前作の話をしなきゃいけない。
前作といっても単に作者の前作という意味で、「さくらのまち」はなにか繋がっているわけではない。

……という注意書きを置いてはみたが、もちろんネタバレ全開で感想を書いていくつもりだったのでいらなかったかもしれない。読めば分かるし

せっかくなのでこれを読んでいる未読の購入予定の人に一応語りかけますが、今作は三秋縋、そしてエンタメ小説の中でもかなりアタリなので読んでください。

以下はバリバリネタバレです。

まず「君の話」しなきゃだよな?

で、話を前作に戻す。

「君の話」の話だ。

というか「君の話」のネタバレ注意をしていなかったが、今しておく。

ネタバレしますよ。
そうじゃないと語れないから。


さて「君の話」を読んだとき、俺はマジで横っ面を張られたんじゃないか、という物理的衝撃を感じるほどのショックを受けた。

言うまでもなく、メタフィクションの演出の仕方がクソ馬鹿とんでもないレベルで高かったからだ。

ここで「え?メタ要素あった?」と思った人はメタフィクションだという前提で再読してください。

いや気付かねえわけねえだろ、という人もいるかと思いますが俺の友人は気付かなかったよ。
じゃあタイトルの「君の話」ってなんだと思ったんだよ、と聞いたら「普通にヒロインのことかと思った」と言っていました。
ちなみにメタに気付かなかったくせに面白かったって言ってた。これもうわかんねえな。


とにかくマジでビックリした。
終盤、安全地帯から物語を眺めてるこちらを急に振り返って、「いや、これはお前の話だぞ」と言われてることに気付いた時は、本当に肌が粟立った。

そりゃ「君の話」なわけだわ。

メタフィクションものって大体のワナビが思いつく手法で、「びっくりするやろなあ」ってしたり顔が見えるだけの、手軽で陳腐でおもんない最悪のもので俺は嫌いなんだけど、

これは本当に最高の、一歩先に進んだレベルのメタフィクションだった。
(そのうえで、俺の友人のようにメタフィクションだと気付かずに読むこともできる)。

さくらのまち

というわけで、「さくらのまち」の話にようやく戻る。

俺は途中まで、「さくらのまち」を従来の三秋らしい作品だと思って読んでいた。
澄んだ文体で、諦念が漂っているけどなにかを必死に求めている作品。

ところが、これにもメタフィクションが張り巡らされていたことに気が付く。

俺が驚いたのは、三秋縋という作家の集大成、そして大ネタバレともいえる「君の話」でやりきったと思っていたメタ性を、この作品でこんなにうまく使うのか、というところだ。

諸刃の剣にしかならない(と俺は勝手に思っていた)メタフィクションというものを、作品効果として使いこなしている。

俺と何歳も変わらないこの人は、魅力的なヒロインが書けて、文体がちゃんとしてて、切ない話も作れて、そして超絶難しい技法まで使いこなせる作家だった

ワナビとしては、勘弁してよ、心折れちゃうよ、と泣きたい気分である。


メタフィクションをどう使ったか。


あらためて俺が解説することもないはずだが、いちおう書いておく。
(レビュー等読んでいないのでこの作品がどう言及されているのか俺は知らない)

まず、この物語は「まるでヒロインの物語を舞台のように眺めている主人公」を据えて進んでいく。

つまり、このおかげで俺たち読者は主人公をこちら側として(潜在的に)見ることになる。

これが狙った設定なのは間違いない。

作品では何度もヒロイン側の世界の人々を【先生】や【団長】など、ロールでしか語らない。
そもそもヒロインが「この世界を舞台だと思って過ごしている」ことは言及されているし、プロンプターなどの設定もそう考えると露骨だ。

これは物語。
切なくて苦しくて可哀想な物語を、俺たち読者は主人公と見る。

主人公もまた、単なる観測者でしかないのだ。

この物語は救いようがなく、取り返しがつかないが、その悲しみの傍に主人公を置くことで、俺たちと主人公は(まるで小説内と同じく、親友とガレージの中で寄りそって映画を眺めるように)、ヒロインの物語を見ることになる。

この徹底したリンクっぷりが、どう考えても異常だ。
普通に読んでは気付かないかもしれないが、小説、物語のレベルを一段上に押し上げている。

俺たちの傍に主人公を置いてくれたというのは、もちろん深読みではない。最後の一文が如実に示している。

桜の町、と尾上は無意識に答えていた。
〈桜の町〉は見つかりませんでした、と少し後でナビが言うのが聞こえた。

さくらのまち

これだよ……。

さくらのまちはどこにもない。

だから俺たちにも、主人公にもできることはない。

どうしてこうならなかったんだ、なんでなにもできないんだ、という嘆きを、俺たちは共有している。

本はひとりで読むものだが、ここにその悲しさを負うものがいる。

だからこそ、「さくらのまち」は単なる「切ない物語」などではない。
技巧的なレベルが違う、と俺は腰を抜かした。


まじの殴りがきになっちゃった(まとめ)


ここで感想文は終わるものとする。

推敲してないし、読んですぐ出てきた感想を思うがまま書いただけなので恐らく支離滅裂だろう。

とにかく良いものを読めた。
しかも別にメタフィクションって意識しなくても普通にめちゃ面白い。
(正直「君の話」は終盤以外は「ふーーん」って感じだった。でも終盤にひっくり返った)

ま、俺もこのしょうもない現実を生きていきますワ。

それと、頑張って小説も書くよ。
俺もなかなか面白いモン書けるワケ。
待ってろよな縋。


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