おうちカフェはエンドレス
我が家は時々、「おうちカフェ」や「おうちランチ」のお店になる。
外でランチやお茶ができればいいんだけれど、娘の介護があって私がなかなか家から出られないので、友だちが我が家に来てくれることが多いのだ。
それは最近に限ったことではなくて、これまでもずっと。
特に肢体不自由の二女に関係のある友人たちはみんな、我が家のおうちカフェに慣れていて、気楽に来てくれる。
二女にも会ってもらえるので、私はそれも嬉しく思っている。
先日も、二女繋がりのママ友が遊びに来てくれた。
彼女と会うのは久しぶりで、積もる話がてんこ盛り盛りだった。
彼女は、二女が就学前に通っていた療育施設時代から特別支援学校に在学中も、ずっと一緒に過ごしてきた二女の友だちのママだ。
彼女の息子さんは、現在は娘とは違う施設へ通所している。
穏やかな息子さんとは対照的に、彼女はおしゃべり好きな仲間たちの中でも、トップクラスにおしゃべりが大好きな人だ。
やめられないとまらない、カッパえびせんのような天真爛漫な彼女は、5歳年上だけど5歳年下のように感じる。
「これはどうするの?」
「こんなとき、どうしたらいいと思う?」
それを素直に出せる彼女は、かわいい人だと思うし、
娘たちの在学中、
「〇〇先生と△△先生は、お似合いだから引っ付いたらいいと思うわ!」
みたいなことばっかりをいつも言っていて、そんなお見合いお節介おばちゃんみたいな性格も、かわいすぎて、一緒にいて居心地が良かった。
朝からリビングで爆睡中の娘をそっと眺めながら、キッチンの方へ彼女を招き入れた。
ダイニングテーブルに、手土産でいただいたケーキと熱い珈琲を並べる。
ちょっとカフェにいる気分で、ふたり、軽快におしゃべりが始まった。
自分の近況、それぞれの子どもたちのこと、懐かしい特別支援学校時代の思い出話などなど、そんな話は尽きることがない。
その日は午後から娘の訪問リハビリの日だったので、午前中だけお茶しよう、って約束していた。
でも、朝の9時半からのおしゃべりは、昼の12時を回っても終わらない。
「そろそろ帰るわ。昼からリハビリの先生が来るんだよね?」
「うん、2時半からだからまだ大丈夫だけど、そうだね、そろそろ。」
2人とも立ち上がったが、そのまま彼女が、
「あぁ、ちょっといい?そういえばさぁ、聞きたいことがあったんやけど。」
と、話が始まる。
私もそれにすぐに乗っかって、ペラペラ話してしまう。
私はちょっと頭の片隅に「昼ごはんを用意した方がいいかな」があった。
何ができるかな、素麺ならすぐにできるし、昨夜の残りのミートソースでパスタもできるし、サラダも材料はある。
作るか、どうするか、もう帰るのかな、どうしよう。
そんな気持ちでしばらく話を聞いていて、
「お昼、何か用意しよっか?」
と言うと、彼女が
「ううん、大丈夫!うわぁ、あかん!1時になってしまったわ。これから忙しいのにごめんね、行くわ。その前に、ゆうちゃんに挨拶だけして行くわ。」
と、リビングのベッドに横になりながら、目覚めてキョロキョロしている娘のゆうに話しかけてくれた。
ところがまた、娘の横で、人工呼吸器や気管切開の話が始まる。
彼女の息子さんもそろそろ、気管切開を考えているようだった。
私はチラッと時計を見た。
すでに時計は、1時半を回っている。
「話の途中やけど、ごめんな、そろそろ訪問に来てもらう準備をするわ。」
と言うと
「あ、ごめん、ごめん、ついつい。行くわ、ごめんね。」
って玄関まで行き、やっぱりまた、今度は玄関の段差や、子どもを連れ出す時の苦労や工夫について彼女は話し始めた。
昼ごはんを用意したらよかったな、と後悔しながら、なんだか自分も吹っ切れてしまい、とうとう2時になってしまう。
ママ友は、
「私たちってさ、またね、からが長いよねぇ。」
って豪快に笑った。
それはあなたよ、と思いつつ、
引き留めているのは私かな、と思いつつ、
「だよね!」
と、私も笑った。彼女は、
「またいろいろ教えて!また来るわ!」
と言って、帰って行った。
たしかに、お店でランチをしたあとも、店の駐車場でも私たちはかなり話す。
昔も、特別支援学校の送迎でばったり会うと、駐車場で長い時間話し込んでいた。
似たもの同士なんだな、と思う。
そもそも私には、こんなおしゃべり好きな仲間が多く、会うといつも長丁場になりがちだ。
原因は私か?と思わなくもない。
女子はみんな同じだよね、と思わなくもない。
お昼を食べる時間もなく訪問リハビリに突入することになったけど、ケーキとおしゃべりで満腹だったからちょうど良かった。
たくさん笑った。
思いっきり話した。
彼女と話していると、自分のやってきたことが不思議と整理されていく気持ちになる。
子どもたちも年齢とともに徐々に弱くなっていき、医療的なケアが増えた。けれども、子どもたちも私たちも元気で過ごせているので、ほんとにありがたいと思う。
それにしても、おしゃべりの時間はあっという間に過ぎる。
今度、彼女が来るときは、早めにお昼を用意しよう!
「じゃあ、またね!」からが、私たち、絶対に長いんだから。