買い物してる私をお仲間だと思われましたか?
週に1、2回、娘を施設に預けている平日の午前中に、近くのスーパーやドラッグストアへまとめ買いをしに行く私。
娘を迎えに行くまでのフリータイムは、1時間半しかない。
前日から買い物のコースを決めて、必要なものは必ずメモしておく。
若い頃から買い忘れが多かったので、もともと、メモを持って買い物をするタイプだ。
必要なものを頭で覚えて買い物できる人を、心から尊敬する。
最近ではボールペンではなく、マジックでメモをするようになった。
「ボールペンで、でっかく書いたらいいやん!」と息子は笑うが、自分の目が、もう信用できない。
だから、『マイネーム』という、お子様の持ち物に名前を書くときによく使われる油性のマジックを愛用し、「買っておかなくては!」と気付いたときに、すぐメモをするようにしている。
それはさておき、店内では、私はかなりの早足で歩く、または小走り。
時間が限られているので、効率的に必要なものを買って行きたい。だから、陳列の場所がよくわかっているお店を選ぶことになる。
あまりの早足に、たまたま私を見かけた妹は、声をかけられなかったらしい。
「姉ちゃん、獲物を狙ってる目つきで、人を寄せ付けない必死さが笑えたわ。」
と妹に言われて、ぞぞっとした。
50歳を超えて、あまりにもかっこ悪い。
昔は何をやるにもゆっくりすぎて、親にあきれられるような子だったのに。いつからこんな、せっかちになってしまったのだろうか。
時間に追われて、慌てる癖がついてしまったのだと思うが、もう少しゆとりを持って、せめて店内を歩ける大人になりたいものだ。
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その日も娘を預けてから、よく利用するスーパーへ直行した。
ちょっとせっかちを反省した私は、ゆっくりの動きを意識して、ご機嫌に買い物カートを押していた。
辺りをキョロキョロ。
そういえば私は人間観察が大好きだけど、最近は、店内では商品しか見ていなかった。
これでは、知り合いに会っても気がつかなかったはずだし、興味深いものも見落としていただろう。
パンのコーナーで、腰の曲がった優しそうなおばあちゃまと目が合った。
暑い日だけど、赤紫色の厚手のジャンパーを着ておられる。
「なんでも高くなりましたな。この食パンも、こんなに高くなったら、もう、よう買いませんわ。こないだは、118円やったのが、188円になっとるでな。もう朝は、パンはやめやんとあきませんわ(やめておかないといけないわ)。」
「ええ。そうですね。何でも高くなりましたね。」
私は、食パンに伸ばしかけた手を引っ込めた。
おばあちゃまの前で、なんとなく買えなくなった。
後からまた買えばいい、と思いながら、笑顔で会釈して、その場を去った。
店内をひとまわりして、結局、食パンを買わずにスーパーを出た。
まぁいい、朝はご飯派の我が家なんだし。それよりも、急いで向かいのドラックストアへ行かなくては、娘の迎えの時間が迫っている。
ドラッグストアでまたカートを押しながら、ちらっとメモを確認した。
最近のドラッグストアは食材も安い。
ヨーグルトを買おうと思い、食品コーナーの棚を見ていると、今度は、大きなサングラスのおばあちゃんにまた話しかけられた。
「あんた、ちょっと!ここのヨーグルトやっすいわ!迎えのスーパーやったら158円やけど、ここは98円やわ。このりんごのヨーグルト、私好きなんやわ。お買い得やでいっぱい買ってくわ。」
大きめの声でヒソヒソ話をしているような口ぶりで、私に3連のヨーグルトを絶賛オススメしてこられた。
我が家は無糖のヨーグルトしか食べない。
りんごかぁ。甘そうだな。
そう思っていると、おばあちゃんは3つも買い物かごに入れた。つまり小さな容器のヨーグルトを9個もお買い上げ。
そんなに、美味しいの?
迷いつつ、1つ、つられて私もかごに入れる。
「あんたも、ヨーグルトはここで買ったらええわ!」
というおばあちゃんの言葉に、
「ええ、ありがとうございます。」
と応えて、笑顔で会釈。
あれ?さっきも、こんなシーンがあったような。デジャヴ?
なんとなく調子を狂わされつつ、まぁ、いいか、と、レジに並ぶと、私の前に並んでいたお爺さんがサッとふりかえり、リレーのアンダーパスのように、こそっと私に何かを差し出した。
15%の割引券だ。
たしか、今日までのやつ。
「もう一枚あるから、あんたにやるわ。」
半分しか閉じていないウインクまで、一緒にいただく。
「ありがとうございます。助かります。」
そう言って、私は頭を下げた。
おじいさんは、買い物が終わると「いいから、いいから」みたいな目をしてこちらを見たので、私はまた笑顔で会釈をした。
たった1時間くらいで、このシチュエーションは三度目だ。
レジで、先程いただいた割引券を提示して、高い商品を一つ割引してもらった。一回の買い物で一枚だけ使えるという、よくある割引券。
実は財布の中にも同じ割引券を持っていたが、それは出さずに持ち帰った。今日までだから、もう使えない割引券。
でも、おじいさんのご厚意のほうが嬉しくて、自分のものは家で処分した。
欲しかった食パンを買わずに、りんごの三連ヨーグルトを買い、持っていた割引券を使わずに「親切な心」をいただいた。
ゆっくりと歩きながら買い物をしたら、お年寄りにモテモテだった。
でも、ちょっと考える。
これって、同情や共感、つまりシンパシーを私に感じたの?
私、そんなに、安い物を求めているように見えるのかな?
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。