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理科室まがった #毎週ショートショートnote

商都小学校に赴任し半年が経った。
生徒達とは仲良くなったし、苦手な保護者対応もなんとかやっている。
気になることといえば理科室だ。
この学校の理科室は、まがる。

明日の授業準備のため、僕は理科室前へとやって来た。だが、予想通り部屋がない。

「おーい。へそ曲げてないで、出てきてくれないか?」

理由は分からなくもない。
二日前に理科室で実験をしたのだが、やんちゃな生徒が水をぶち撒けてしまった。
この理科室は綺麗好きで、少しでも汚すと機嫌が悪くなる。おまけに校舎は古く、壁の剥がれや天井のシミが目立っていた。恐らく、理科室にとっては耐え難いのだろう。

「なあ、機嫌直してくれよ。またピカピカに掃除してあげるから」
「田中先生?」

急に声を掛けられ体が跳ね上がった。
振り返ると、憧れの伊藤先生がいた。

「あ、いと、先生」
「え?お一人ですか?」
「り、理科室、機嫌悪くて。へへっ」

指差した方向には、何の変哲もないただの理科室が存在していた。
僕を見る彼女の顔は、憐れみで満ちていたのだった。

(428字)


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これはお題になっているのか( ˘ω˘ )うう
小学生の頃は、理科室の人体模型やホルマリン漬けが怖かったです。

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