あなた色に染められて?
「嫁ちゃんってさぁ、変わったよね」
日曜日の昼下がり。
買い物へ向かう車内にて
止まらない嫁との会話中にふと
ぼくの脳内に煌めいたものを口にした。
「私が変わった?どこが?」
「最初に会った時とは全然違うじゃない」
「何?見た目の話してる?」
「ああ、そういえば見た目も変わったね」
「え、どう変わったの?」
「いや、めっちゃキレイになったよね」
「(グーパン)」
「殴らない、殴らない。どうどう」
「フシャー!」
「いやホント、顔シュッとしたよね。
スタイルも元々いいし、服もお洒落だし」
「(グーパン)」
「いたいいたい、殴らないの。DVダメ、絶対」
「これはDVじゃないよ。愛情表現だよ」
「愛情が過激すぎるよ」
「私、前よりは良くなったかなぁ」
「いやー、前も良かったけどね。
今のほうがかなり、いいと思うよ」
「どのへんが?」
「ほら、前ってボーダーの服ばっかだったし」
「・・・そうね。あとドットが多め(笑)」
「ドット柄もあったね。最近は見ないけど」
「断捨離祭りで盛大に捨てちゃったからね」
「ああ、だから最近着てないのか」
「そうそう。・・・で?」
「え?」
「だから、見た目の話はいいとして」
「はい?」
「私のどこが変わったの?見た目以外」
「ああ、その話ね」
「その話よ」
「そりゃ、性格だよ」
「えー?私性格変わってないよ」
「それじゃあ聞くけどさ・・・」
「うん」
「●●なんて昔言わなかったよね」
「うっ」
「他にも、▲▲とか■■とか、××までさあ」
「うううっ」
「満面の笑みでそんなこと言ってなかったよね」
「そ、それはさあ」
「何?」
「夫くんのせいだよ」
「ぼくはそんな◆◆なこと言わないよ」
「言ってるよ!夫くんに影響されたんだよ」
「まあ、少しは言うかもしれないけど」
「そうだよ。夫色に染められたんだよ」
「やめなさいその昭和的な言い回しを」
「こんな私にしたのは夫くんだよ。およよ」
「(だめだこいつ、早く何とかしないと)」
「でもねえ」
「うん?」
「変わった自分のことも嫌いじゃないんだよね」
「あ、そうなの?」
「まあね。こんなノリで話せるの嫌いじゃない」
「・・・」
「・・・?」
「・・・」
「どうしたの、黙っちゃって」
「あー、いや、あのね」
「うん」
「さっき嫁ちゃんさ、あなた色に染められた
とか何とか言ってたじゃない」
「言ってたね」
「染められたのは、ぼくのほうなのかも」
「はい?」
「だからね、よくよく考えてみたら
ぼくも大分、嫁ちゃんに染められたなって」
「私に?染められたの?」
「そう。スプラトゥーンみたいにね。
ぼくが放水して嫁ちゃんに色を着けていたら」
「私がローラーで塗り返していたみたいな?」
「それ!そんな感じだよ!さすが分かってる」
「まあね。スプラトゥーンやったことないけど」
「ぼくだってないよ。イメージイメージ」
ふと始まった変化の会話。
その着地点は意外や意外。
嫁ちゃんはぼくに変えられたと主張して
ぼくは嫁ちゃんに変えられたと主張する
お互いの意見が奇妙に収まる形となった。
夫婦って段々似てくるものだと言われるけど
こんな風に少しずつ色が混じる感じなのかな。
やっぱり今日も、嫁ちゃんとの会話は面白い。