私たち夫婦の特別な料理
このお話は「#仲良し夫婦サークル」の企画記事です。
特別な料理か・・・
自分でお題を出しておいてなんだけど
うーん、ありすぎる。どうしよう。
嫁ちゃんは料理がとても上手なので
何を作っても基本美味しい。
アツアツの味噌汁、粕汁、豚汁などの汁物が
最強に美味しいと思いきや
焼き魚、煮魚、魚のホイル焼きなどの魚系も
やっぱり最強に美味しい。
豚の角煮、生姜焼き、肉じゃがなどの肉系は
当然のように美味しいし
キャベツ、ごぼう、人参を使ったサラダ系も
モリモリほおばるほど美味しい。
まいったなぁ、どれにしようかな。
どの料理も、初めて作ってくれたときの
エピソードはぼんやり覚えている。うーん。
あっ、と思いついた。
それはとても子供じみた悪戯心。
「ねえ、嫁ちゃんさあ、聞きたいんだけど」
「なになに?どうしたの夫くん」
「ぼくは、君の料理、大好きじゃん」
「そうだね」
「嫁ちゃんが作る料理の中で
ぼくが一番好きな料理って何か、分かる?」
何十種類と作ってくれた嫁ちゃんの料理。
どれもが美味しいものばかり。
順位をつけるなんて無意味なことだけど
やっぱりぼく的に
「これがNo.1だ」と心に決めた料理はある。
それを当てろっていうのは無理な話だ。
なにしろぼくは、毎回「美味しい」を連呼する。
美味しくて踊りだすことだってたくさんあった。
「えー?みそと小葱のクリームパスタでしょ」
信じられないことに一発で当てた。
ええっ、なぜだ?なんで分かるんだ!?
「あ、当たった?やっぱりね~」
「ちょっと待って、なんで分かったの??」
「ビビッと受信したからね。すぐ分かったよ」
ぼくたち夫婦はたまに、波長が完全に一致する。
波長というのは思考の周波数みたいなもので
会話をしているとチューニングを合わせたように
相手の心がくっきり分かる瞬間が訪れるのだ。
これをぼくたちは「受信した」と呼んでいる。
そうか、受信したなら仕方がない。
特に勝負はしていないけどぼくの負けだ。
「じゃあさ、夫くんも当ててみてよ」
「え、何を?」
「夫くんの作ってくれた料理の中で
わたしが一番好きなやつを!」
「ええっ?」
まてまてまて。
ぼくが今まで嫁ちゃんに作った料理って
五品くらいじゃないか?
おお、書き出したら九品もあった。
もしかしたら他にも作ったかもしれないけど
どうにも思い出せない。作ってないんだろう。
さて、この中でぼくの自信作と言えば…
「えーっと、ナポリタン?」
「うーん、美味しいけど一番じゃないかな」
「じゃあ、ペッパーランチ?」
「あれ、美味しかったね!でも違うなぁ」
「ええ?じゃあ、カレーなの?」
「カレーも美味しいけど、そうじゃない」
「ええー、ウソでしょ?全然当たらない」
「パンがゆだよ」
「えっ、パンがゆ?」
まてまてまて。なぜにパンがゆなのだ?
このぼくですら「簡単に」作れる料理だぞ。
「わたしが弱っているときに作ってくれるよね。
それが特別感あっていいんだよね」
そうか。
たしかに嫁ちゃんは言った。
「わたしが一番好きなやつ」って。
「一番美味しいやつ」ではないのだ。
これじゃあビビッと受信なんてできっこない。
嫁ちゃんにはかなわないなぁと思った5月5日。