書く技術・伝える技術『メンタルモデル』
たとえばリンゴ。
リンゴという単語を見て思い浮かべるものは
人によって違います。
それは果実のリンゴだったり
それは歌としてのリンゴだったり
それはミュージシャンの名前だったり
実はみんな違うことを思っていたりします。
「切り口から蜜がたっぷり見えるリンゴ」
このような文章だったら、ほとんどの人が
包丁で切られた美味しそうな果実を
想像するんじゃないでしょうか。
理解しやすい文章っていうのはこんな感じで
読み手に具体的なメンタルモデルを作らせるもの。
さらに、その一旦作られたメンタルモデルを
壊すことなく文章が続いていくものです。
メンタルモデルって何ぞや?というと
私たちが頭の中に作り出すイメージ。
自分なりの理解の世界のことをいいます。
それをふまえてここからが本題です。
『読み手の予想通りに文章を展開させる』
たった一読しただけで、読み手がはっきりと
記憶に残るように文章を理解させるためには
読み手の予想通りに文章を展開させることを
意識して書くのが効果的です。
たとえばこんな文章。
「私は好きな果物が三つあるんです。
一つ目はイチゴ。
二つ目はメロン。
そして三つめは、黄色っぽい果物です」
こんな文章を見ると、私たちは予想します。
三つ目の果物を頭が勝手に予想を始めます。
(イチゴ、メロン、バナナ!ではないか?)
(そうに違いない。カタカナ三文字だしな)
(いやまて、これは何かのひっかけ問題?)
こんな感じで、自分なりの理解の世界を
いくつか作って待機します。
正解は何だ!?と次の言葉を待ちます。
これは、メンタルモデルを作ることによって
与えられた情報を脳内で高速に処理するため。
予測を立てておけば、すばやく次の行動に
移ることができるからです。
「三つ目の果物は、バナナです」
答えが自分の予想していたものと合致していたら
(だよね!予想通り!)と一発で理解します。
自分の予想が当たるっていうのは想像以上に
嬉しい!と感じるし、頭がスッキリします。
これが“分かりやすい”と感じるメカニズム。
漫才とかマンガでもよくあるじゃないですか。
いわゆる『前フリ』。
フリが効いてるからこそオチが際立つってやつ。
聞き手に予想させるという工程は
文章を理解させるにあたって必要なものなんです。
逆に言うと、フリがあるにもかかわらず
オチが全く関係ないものだったとしたら
それは理解できないものになってしまいます。
あえて、それを狙って書く文章もありますけど
伝わりやすい文章ではないですよね。
せっかく相手の頭にメンタルモデルを作ったのに
それを全く無視した文章が続いては台無し。
これが“分かりにくい”と感じるメカニズムです。