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歯医者の会話。次郎とセンセイ

「次郎さん、大変言いづらいのですが」

なんでしょう、先生。

「貴方の歯茎から〇が溢れています」

え、何ですって?何が溢れている?

「とても字面を乗せることができないので
伏せ字にしてありますが、どえらいものです」

ええっと、つまり、私の命にかかわると…?

「いいえ、次郎さんの命に別状はありません」

なあんだ、よかった。

「よくはありません」

すみません。

「このまま放っておくと歯が危険ですよ」

いったいどうすればいいんです?

「安心してください、次郎さん」

よかった。

「安心するのが早すぎます」

すみません。

「こう見えても私、腕利きの歯科医でして」

それ、自分で言っちゃいますか。

「貴方の歯に薬を入れて蓋をしちゃいます」

蓋をする?え?歯に薬を入れる?え?

「落ち着いて下さい」

すみません、詳しく説明お願いします。

「まず、貴方の奥歯は穴が空いています」

ええっ!?いつの間に。

「こないだ削って空けたじゃないですか」

そうでしたっけ。寝てたもので。

「とにかく、その空いている所に薬を入れます」

たっぷりですか?

「たっぷりです。少し変な味がします」

うっす。どんとこいです。

「そして薬が漏れないように蓋をします」

ああ、なんとなく理解できました。

「分かっていただけましたか」

つまり、大量の薬を入れることによって
ぼくの歯と歯茎は健康になるってことですね。

「その通りです。理解が早い」

じゃあ、やっちゃってください。

「やっちゃいます」キュイーン。

あ、麻酔とかしないんですね。

・・・

二週間後

「ようこそ次郎さん。御加減はいかが?」

すこぶる快調です。

「例の歯は痛くありませんか?」

薬の妙な味がしますけど、痛くはないです。

「そうですか。経過は順調っと(メモメモ)」

これでぼくの歯は健康になったんですね。

「慌てないでください。とりあえず診ますね」

あーん。

「あれっ」

んが?

「あれあれ?ぐいぐい」

んがが!?んが!?

「あ、すみません痛かったですか?」

ちょっと痛かったです。歯茎押しました?

「ぐいっと押しました」

なんで押したんですか?

「ええとですね、次郎さん」

はい。

「あなたの歯茎、以前より〇が溢れています」

はい。
…はい?

「分かりやすく言うと悪化してますね」

なるほど分かりやすい。

「どうやら薬が効かなかったようです」

そんな。

「安心してください」

にっこり。

「私は腕利きの歯科医ですからね」

それ、自分で言わないほうがいいですよ。

・・・

近所で評判の歯医者さんに通って早や半年。

私はそこの先生と冗談みたいな会話をしながら

治療を続けています。


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