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料理上手の意外な言葉

「わたし、あなたの作る〇〇が好きだよ」

ウチの嫁ちゃんは、料理が上手い。
「上手い」というのは手際が良いだけでなく
作る料理がどれも美味しいという意味もある。
三つのIHコンロとオーブントースターを操り
あれよあれよと料理が並行で出来ていく様は
毎度のことながら恐れ入る。(しかも美味だ)

そんなわけでウチの特級料理長は嫁ちゃん。
料理を「作る方」は完全にお任せ状態だ。

しかし、幸いなことに、ウチの嫁ちゃんは
食べ終わった食器の「片付け」が大嫌いだ。

どうしてそれが幸いなのかって?
そんなの決まっている。
このぼくが活躍できる場面があるからだ!

ぼくは食器洗いや水回りの掃除が得意。
排水溝の掃除だってわりと好きなのだ。

嫁ちゃんが料理を作り、ぼくが洗って片付ける。
ウチのキッチンはそうして長い事まわっている。

・・・

先日のこと。
二人でキッチンの椅子でくつろぎながら
明日の夕食の献立のことで話していると
嫁ちゃんがぽつりとこんなことを言った。

「わたし、あなたの作るペッパーランチが
けっこう好きなんだよね」

…?
ぼくは数秒思考停止してしまった。
嫁ちゃんの言っている意味がわからなかった。

ぼくも休日のときは料理を作る。
いつも料理は嫁ちゃんが作ってくれるので
そのささやかな恩返し的な意味で。

でも、その味はハッキリ言って微妙だ。
10段階評価で言ったら5~7くらいだろう。
そのくらい自分だって分かる。
(ちなみに嫁ちゃんの料理は9~13くらい)

嫁ちゃんが言ったペッパーランチは、ぼくが
最近覚えたばかりの料理で味は大味もいい所。
油っぽいし、カロリー激高いし、男飯すぎる。
どう甘く見積もっても10段階評価で7だろう。

そんな微妙な覚えたての料理を
10点満点をバンバン叩き出す嫁ちゃんが
好きだって?そんなわけないだろう。

「いやあ、それがね、夫くん。聞いてよ。
わたしはあまり豪快な料理作らないでしょう?
新鮮なんだよね。それにねぇ、美味しいよ」

美味しい?そうなの?…そうかな?

「わたし結構好きだよ。ガッツリ濃いやつ」

ウチの嫁ちゃんはお世辞を言うタイプではない。
毎日会話をしているからそのくらいは分かる。
ええ…そうなの。そうだったのか。
意外すぎて嬉しいんだか疑ってるんだか
ぼくの感情がごっちゃになってきたぞ。
まあでも、悪い気分じゃないな。

「で、明日のごはんはどうしよっか?」

ぼくは宣言していた。
明日のお昼ご飯はカレー。
明日の夕食はナポリタンを
それぞれぼくが作ると。
わんぱくメニュー二連発だが
ぼくのレパートリーではこれが精一杯だ。
ぼくが立て続けにメイン料理を作るなんて
これまで一度もなかったことだけど
嫁ちゃんは喜んでくれた。
たまにはこういうのも良いかもしれない。

あ、サイドメニュー(サラダとかスープとか)は
鮮やかに嫁ちゃんが作ってくれました。

・・・

ウチの嫁ちゃんは、料理が上手い。
「上手い」というのは手際が良いだけでなく
作る料理がどれも美味しいという意味もある。

そしてさらに、もうひとつ。
ぼくに料理を作る楽しさを教えるのも上手い。


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