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いい夫キャンペーン

「ウチの旦那がいい夫キャンペーン始めてさ」

ある日のこと同僚のAさんが語ってくれた。
はて?いい夫キャンペーンとは、なんだ?

かいつまんで言うと
結婚当初は妻をないがしろにしていた夫が年齢を
重ねたある日家庭内に居場所が無いことに気付き
これはいかん!(やあ、僕は気が利く夫だよ)と
今更のように家庭サービスを始めることらしい。

でもでも、旦那さん
家庭の事をやってくれるなら
良かったじゃないですか!と伝えると

「いやあ今更よ。いつまで続くのって感じ」

なるほどいい夫キャンペーンとは言い得て妙だ。

“キャンペーン”のあたりが期間限定感ありありで
どうせ本心じゃないんでしょ?と思われてそうで
実に物悲しい。

「わたしはもう、シャッター下りてるからね」

ここでAさんが語ったシャッターとは
心のシャッター。つまり、心を閉ざしていると。
過去の旦那さんの度重なるアレな言動によって
Aさんの心のシャッターはガラガラと閉まった
ということだ。

「今はシャッターの覗き窓からやり取りしてる」

そう言ってカラカラと笑うAさんを見て私は
(既に一線を引いたのだなぁ)と姿勢を正した。

ふむ。しかし、いい夫キャンペーンか。
これは使えるかもしれない。

私と嫁様が一緒に休みの日くらいは
私も“キャンペーン”をしてもいいかも。
家庭サービスならぬ嫁様へのおもてなし。
うん、なんだか面白そうだ、やってみよう!

・・・

「次の日曜日、お互い休みだね。
良かったらお昼、何か作ろうか?」

“キャンペーン”を始めて早や
数年が経とうとしている我が家。

私がメインで昼食を作る回数は爆発的に増えた。
(と言っても私は絶望的に手際が悪いので
嫁様の手厚いサポート有り前提の料理だが)

カレーやナポリタン、ペッパーランチなど私の
味付けの濃い「男飯」のスキルは目下上昇中だ。

「今日はどこか出かける?買い物行かない?」

特に用事があるわけではないのだけど
嫁様を外出に誘う頻度も爆発的に増えた。

自宅でのんびりアマプラ鑑賞も楽しいけど
嫁様は適度な外出も好きらしいことが分かり
ふたりの休日には何かしらをするようになった。

「凝ってますねぇお客さん、横になりなさい」

ウチの嫁様は脚がむくみやすいので夕食後に
マッサージを行う頻度もそこそこ増えた。
お尻と頭のマッサージが気持ちいいらしく
よくリクエストを受ける。
私は幼少期から他人にマッサージするのが
大好きという変わった子どもだったので
特に苦ではない。二つ返事で引き受ける。
お返しとばかりに嫁様もセルライ子(※1)
使ってゴリゴリとマッサージ返しをしてくれる。
これがめっちゃ気持ち良い。

(※1)セルライ子とはマッサージ器具。
ドンキとかに売っています。おすすめ。

・・・

私は気付いてしまった。
「いい夫キャンペーン」は
仲が良い状態のときにこそやるべきなのだと。

嫁様の顔を見よ。
ゆるキャラのようにニコニコしてるではないか。
バリスタばりの美味しい珈琲も淹れてくれるぞ。
ウザがらみもあるけど基本そこまでウザくない。

これはきっと「いい夫キャンペーン」のおかげ。
もう「早期いい夫キャンペーン」と命名しよう。
鉄は熱いうちに打て。
夫婦も熱いうちに(キャンペーンを)打て、だ。


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