見出し画像

恋のかけひき?

「わたし、あのお店、まだ行ったことないのよ」

ふーん、そうなんだ。と思う。
その一方で疑問が湧き出てくる。

目の前の女性はなるほどキレイで利発的だ。
会話の雰囲気が素晴らしい。好みですらある。
でもなんだって、そんな言い方をするのだろう?

「わたし、あのお店に行きたい。連れてって」
これなら分かる。喜んで共に行こうじゃないか。

「あのお店、いまいちだから行ってないのよ」
これも、分かる。いまいちな店ってあるからね。

繰り返しになるけど…
どうしてそんな言い方をするんだ?
「わたし、あのお店、まだ行ったことないのよ」

これだと迷う。すごく迷う。
選択肢が4つ以上あると感じてしまう。

①「あの店いいよね。一緒に行こうか」と返す
②「あの店?ぼくは好きじゃないけど」と返す
③「へーそうなんだ」と軽く返す
④「ハッキリ言え。わかんねーよ」と返す

正解はどれだ?

さて、正解はどれだろう。
それともこの中に正解がないのかもしれない。

目の前の女性が完全に恋愛対象外なら話は早い。
③か④を自分の気分に合わせて選ぶだけでいい。

でも、わりかし好みの女性だとそうはいかない。
嫌われたくないし、できれば好かれたいと思う。
我ながらなんとあさましい。しかしこれが私だ。
①か②を運任せでえいやっと選ぶことであろう。
そしてたいてい微妙な空気になり失敗するのだ。
これぞ私。よくがんばった。骨は拾ってやろう。

・・・

若かりしころの私は女性との会話が苦手だった。
いや、ちがうな…

「好みの女性」との会話が苦手だった。
これだな、うん。

頭に浮かぶのは「嫌われたくない」
必要以上に緊張してしまうし
自分にできることなら安請け合いもする。
どれだけスベッても、空回りしてもいい。
沈黙には耐えられない。常に何かを話す。

うーむ、こりゃ嫌われるな。
常にテンパっていて余裕がない上に
話もつまらない男なんて願い下げだ。

今となったらこう思えるけど
当時の私は「なんで上手くいかないんだ」と
おんおん男泣きをしていたものだ。

だが、面白いことに
「好みの女性」とは上手くいかないけど
「そうでもない女性」とは仲が進展するのだ。
なんだこれは、神様の嫌がらせなのか?
おお神よ、そうまでして私を困らせたいか?

勿論神は悪くない。悪いのは私のおつむだ。
実は、冷静に考えてみると
③「へーそうなんだ」と軽く返す
④「ハッキリ言え。わかんねーよ」と返す
これらの返し方はけっこう良い返し方だった。

余計な気を遣わずに、さらっと返す。
これでいいのだ。
まだ相手が喋っているのに
自分の意見をベラベラと話し出すにはまだ早い。

そうなのだ。
私は早すぎた。先回りしようとしすぎていた。
それは相手のことを一つも見ていないと同義。
自分のことばっかり。利己主義。うぬぼれ屋。

ほら会話はキャッチボールと言うではないか。
初手から剛速球を放っては相手はドン引きよ。
せっかく相手が話題を出してくれたのだから
私は優しく受け止めてそっと返せば良かった。

ベストアンサーを最速で叩き込んで
「キャー素敵!抱いて!」などとはならんのだ。

・・・

男性が「恋のかけひき」で悩んでいるのであれば
それは若さゆえの特典だと思う。
悩んで、迷って、発狂して(?)
特攻して、撃沈して、盛大にへこむ。
これはたぶん、経験しておいたほうがいいもの。

だってこれ、「失敗」なんかじゃない。
その人の人生を豊かにする「貴重な体験」だ。

絵に書いたような失敗皆無のエリート人生より
何もないところでもつまづいて、派手に転んで
でも笑って起き上がって前に進む人生のほうが
私は何倍も魅力的だと思うし、わくわくするね。

いいなと思ったら応援しよう!