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お酒に興味を持つ人に読んでほしい

私はお酒に弱い。

一口飲んだだけで顔が火照り
コップ一杯も飲めば酔いが回る。

ある意味、速攻で良い気分になれるので
恵まれた体質といえばそうなのかもしれない。

たしかに、お酒が回った状態で誰かと話すと
なんでもかんでも楽しくて爆笑してしまうし
食べる料理は全部「ンまーい!」となる。

世界は薄い膜がかかったふわふわへと変貌。
究極のリラックス状態を堪能したかと思えば
部屋の隅で不意に目覚めることもしばしば。
気絶するように眠るのはなるほど至福かな。

それでも私はお酒が好きではない。
一年のうちに5~6回くらいしか飲まない。
それも嫁様の付き合いで飲むことがほとんど。

自分一人だけで飲んだことは記憶にない。
なぜならお酒が好きではないからである。

今日はお酒が好きではない私の独白を
記してみたいと思う。

・・・

子どものころの私は
お酒に強いあこがれを持っていた。

父がお酒大好きマンだったからである。

基本的に両親が大好きだった子ども時代の私は
お酒を飲んで上機嫌になる父を見て喜んでいた。

酔った勢いで私の頬にヒゲをじょりじょりと
擦りつけてくるのだけはイヤだったけれども
父を必ず笑顔にするお酒には興味津々だった。

自宅で酔いつぶれるまで飲む父。
会社の飲み会で酔いつぶれては
母に迎えに来てもらう(私もついていく)父。

あの父をこんなにだらしない姿形に変える
「お酒」とは、さぞかしすごいものだろう。
なんせ20歳を越えないと飲めない特別製だ。
きっと魔法のような効果があるに違いない。

やがて二十歳ハタチを迎えた私は
過去の溜まりにたまった期待を消化する如く
お酒を全力で解禁したのだった!

・・・

ぐべべべべべべべ

二十歳の私はよく吐いていた。
どうにもお酒の適量が分からない。

友達と飲むと調子に乗ってしまって
意識が途切れるまで飲んでしまう。

しかし、それで問題ないと思っていた。
「吐いた分だけお酒に強くなる」
どこで聞いたか知らないけれど
私はそう信じ切っていたからである。

飲み屋で飲んでは潰れて、吐く。
宅飲みで飲んでは潰れて、吐く。

そんなことを連日繰り返すうちに
とうとう救急搬送されてしまった。
いわゆる急性アルコール中毒である。

病院のベッドで点滴を打たれているのに
酔いが覚めず看護師さんに絡んでいたのは
おぞましい思い出である。早く忘れたい。

救急搬送されても私は懲りなかった。

相変わらず飲み会が大好きで
生ビールの一気飲みが最高に好きだった。
周りの皆が喜んでくれるとすごく嬉しい。

そんなことを連日繰り返すうちに
とうとう血を吐くようになってしまった。
(ええ…マジかよ。マンガの悪役みたい)
さすがにこれには自分でもドン引きした。

みなさんは血を吐いたことがあるだろうか。
おそらくないであろう。

正確に言うと私は血を吐いたのではなく
“食道”と呼ばれる身体の部位に傷が付き
嘔吐物にそこの血が混ざった結果である。

こうして淡々と書いているけど
このようにして血を吐くと
「いっそ殺してくれ!!!」と叫ぶほど
めちゃくちゃに痛いのだ。痛すぎる。

二十歳に味わったあの地獄のような痛みを
越える痛みには、未だに出会っていない。
虫歯を放置した結果訪れる神経の痛みよりも
痛いと感じるくらいだから、相当だと思う。

当時のお医者様いわく
「あのねえ、きみ、吐きすぎだよ。
吐きすぎて傷が付いちゃったんだ」

どうやら私の「飲み方」は間違っていた!

救急搬送され、血を吐いてからようやく
私は自分の過ちに気が付いたのだ(遅)。

・・・

その後、私の「飲み方」はすっかり変わった。

相変わらず友達との飲み会は好きだけど
お酒の量がガクンと減ったのである。

以前はビール大ジョッキ5~6杯+αのところ
ビール1杯くらいで抑えるように変えたのだ。

これがとてつもなく良かった。
酔いつぶれなければ、飲み会を最後まで
記憶を保って居られることが分かったのだから!

(いや、何をそんな当たり前のことを…)
と思うかもしれない。

しかし私は毎回酔いつぶれていた。
酔いつぶれてこその飲み会であり、お酒。
そう心の底から信じていたのだから。

以前の私は道を少し間違っていたら
別の世界に行っていたのかもしれない。
くわばらくわばら。

幸運なことに私はアル中にならなかった。
「お酒が飲みたい!」なんて衝動にも駆られず
「一人で飲みたい!」という気も起きなかった。

それに、お酒の量をセーブして気付いたのだが
どうやら私は
お酒をそこまで美味しいと思えないみたいだ。

私は飲み会の雰囲気が大好きだっただけらしい。

・・・

私はお酒が弱い。
そして、いくら飲んでも強くならない。
でも、強くなる必要なんてどこにもない。
自分が楽しめる分量を飲めばいいのだ。

いま、私がお酒を飲むのは
もっぱら嫁様と一緒のときだけ。

ハッキリ言ってしまうと、嫁様と飲むと
過去に出会った誰よりも楽しく飲める
やっぱりウチの嫁様は最高なのだ。

「そんなに最高なら、毎晩一緒に
嫁様と晩酌すればいいじゃないか」

そんな声が聞こえてきそうだが、ちがう。
それはぜんぜんちがうのだ。

まず、嫁様と私は
お酒がなくても充分楽しく会話が弾む。
そして充分に美味しい食事も味わえる。
別にお酒の力がなくても問題ないのだ。

たまに、雰囲気を変えて、お酒が入る。
このくらいのアクセントがちょうどいい。

それに、お酒が入ると頭がぽやぽやして
noteを書くときに思考がまとまらない。
かといって早く寝ても深い眠りにならない。

私のグッドな生活に、あんまりお酒は必要ない。
むしろお酒を遠ざけた方が上手く行く。
そのことに気付いてから、お酒のことが
あんまり好きではなくなったのだ。

私はお酒に弱い。
弱くて良かったと思えるようになった。


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