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嫁に届け

今日は嫁ちゃんに伝えたいことがある。

「一体どうしたの、夫くん」

これはAさんの話なんだけど。
あ、Aさんは知ってるよね?

「うん。桑田佳祐が大好きなAさんでしょ」

そうそう、そのAさん。
Aさんはナスを使って料理を作ったんだって。

「ふむ」

メインはそうめんで、薬味とかラー油とかで
タレを作っておかずに焼きナスを添えて完成。
美味しそうだよね。

「うん?そうだね。美味しそうだね」

ぼくが何を言いたいか分かる?

「へ?」

だから、今の話を聞いて
ぼくが君に何を言いたいか、分かる?

「んん・・・夏野菜はナスで決まり?」

ちがう、そうじゃない。

「いや分かんないよ。何なの?何の話?」

じゃあね、君がナスで料理するとしたら
どんなの作る?

「え、こないだ作った南蛮漬けとか?
チーズと味噌載せてオーブンで焼くとか?」

それだよ!

「どれだよ?」

君の料理が美味すぎるって話だよ。

「そんな話の流れだった!?」

あのねえ、嫁ちゃん。

「はい」

なんでまた、ナスで料理を作るときに
手間のかかる調理を選ぶわけ?
南蛮漬けとか半日くらいかかるでしょ?

「え?だって美味しいじゃん。南蛮漬け。
朝に仕込んでおけば夜食べれるから楽だし
夫くんだって好きでしょ?オーブン焼きも」

んん・・・ちょっと待ってよ。

「待ちましょう」

楽なの?料理?嫁ちゃんが作る料理、楽なの?

「いや、すんごい楽ってわけではないけど」

だよね。ひと手間もふた手間もかかってるよね。

「そのほうが美味しくなるでしょ」

たしかに、滅茶苦茶美味いけど…

「それに、そんなに手間じゃないよ」

たしかに、パッパッて作っちゃうもんね…

「じゃあ、いいじゃん」

うん…

「あれ、この話解決?おしまい?」

いやいやいや!待て待て待て!

「待ちましょう」

だからね、ぼくが言いたいのは…
普通、Aさんくらいの料理を作ってくれたら
家族はニッコリ、感謝感激いただきます!なの。
分かる?

「あー、わかるわかる」

絶対分かってない返事Σ(・ω・ノ)ノ!

「やだなあ夫くん、分かってるよ。うひひ」

もっかい言うけどね。
Aさんはすごいのよ。料理上手。素晴らしい人。
ここまでは分かるよね?

「わかるわかる」

じゃあ、君の料理レベルがおかしいってのも
分かるよね?

「うぬ?」

急にラオウみたいな一人称やめろ。

「わたしの料理レベルがおかしい?
それって低すぎるって…コト!?」

いや高すぎるってコトだよ。

「そうかなぁ。普通だよ」

美味すぎるんだよ!どの料理も!
昨日なんか、自分で食べられない梅肉入りの
鶏むねサラダとか作って超絶品だったよね?
しかも新作、初めての料理で!

「大丈夫、私用に梅抜きのも作ったから」

作り分けお上手ね!

「ねえ夫くん」

はい。

「つまり、どういうことなの?」

そうだな。
ぼくの料理レベルが3とするでしょ。

「10段階評価で?」

そうそう。10段階評価で。
で、Aさんの料理レベルは8くらいなのよ。

「ふむふむ」

で、嫁ちゃんの料理レベルは30くらいなのよ。

「10段階超えとるがな」

たぶんね、君はちょっと人と感性が違うんだ。
料理のセンスがズバ抜けてるんじゃないかな。

「ぐへへ」

だからね、君に分かってほしいのはね
普通の人は君みたいに美味しい料理を
バンバン連発して作れないのが当たり前!
ってことなんだよ。

「・・・」

分かる?伝わった?

「うん、わかるわかる。さ、ごはんにしよ」

お、おう…。


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