無力
※あくまでも俺の主観
行き過ぎた行動もあり、冷静さを欠いていた
弱いとダメだな
簡単に付け込まれる
夕方、嫌な予感がしてオジさん達の寝床を見張っていたら、知らない男2人が1人のオジさんの両脇に座って話し始めた
最初はたまにいるイイ人だと思ってたけど
1人はガラケーで電話を掛け始めて
どうも様子がオカシイから近づいてみた
近くにいる別のオジさんと話をしながらその男達の会話に聞き耳を立てると
どうやら施設に勧誘している様だ
誘われてるオジさんは鶴見で嫌がらせを受けて逃げてきたばっかりで、体はヨボヨボ。喋りもしっかりしてない。少しボケているかも?だから、もし怪しい奴らに連れてかれちゃ危ないと思って俺は男達に話しかけた
そしたらその男達は、オジさんと元々職場で知り合って、久しぶりに会ったらご飯を5日も食べてないって言うからご飯を食べさせてやるとか。俺の事も毎週おにぎり配ってる兄ちゃんだろと知っていたからちょっと油断した。
前回の夜回りでオジさんにおにぎりをしっかり渡したから5日も食べてないことは無いだろうが、知り合いに美味しいものをご馳走して貰えるなら良いかなって。
ただそれならもっと早くご馳走してやれるはずだ、近くにはリンガーハットやファミレスだってある。でも俺が目を付けてから10分、近づいて声を掛けてから更に15分くらい経っても動かない。
すると更に2人の男達がやって来て、やっと動き出した。
服装も年齢もまばら、
1人はスーツの中年
1人は少し知的障がいを抱えた若い男性
1人は自称元ホームレスの中年
1人はポロシャツの30代
使う携帯はガラケー。
本当にオジさんはこの4人と同僚、仲良しなのか、いまいち確証を掴めなかったから、俺は最後にオジさんに聞いた
「この4人組はどうも怪しい、危ないとこに連れて行かれるかもしれないよ。ホントに知り合いなの?」
するとオジさんは無言で首を横に振った
だから「俺が今1000円オジさんに渡すから、これで好きなもの自分で食べな。その代わりあの4人には上手いこと言って誘いを断りな」
そう伝えてオジさんが彼らの誘いを断り戻ってくるのを待った、俺はそれでオジさんに伝わったと満足していた
けどホントは甘かったのかもしれない
結局オジさんは4人に付いていった
てっきり戻ってくると思ってた俺はビックリ
ホントに知り合いなのかもしれない、そう思いながらも後をつけた
4人は常に前を歩き、オジさんは独り後を必死に付いて行く。こんなのがホントに元同僚なのか、こんな奴らと飯食って楽しいのかよ、俺の中で疑いが益々強くなった。
結局500mぐらい歩いて辿り着いたのは飲食店じゃなくて駐車場。
なるほどね、なかなか動かなかったのは車を呼んでたのか、納得したよ
一気に距離を詰めて、ホントに知り合いなのか、どこに行くのか、貧困ビジネスじゃないのか、全部聞いた。
でもあっちは4人で薄ら笑い浮かべて
「ホントに知り合いで5日もご飯食べてないって言うから皆で食べに行くだけだよ」
「お兄さん、ボランティアやってるの?ならご飯食べさせてあげてよ?」とか何とか。
「夜回りでおにぎりは配ってる、他の団体さん達も炊き出しや夜回りをやってくれてる。
俺がオジさんに奢るから任せてくれませんか?」
俺がそう言ったら、ストーカーだ、いきなり貧困ビジネスだなんて酷い、
警察を呼ぶ、電話番号を教えてくれと言われた
俺はその方が安心だから全部了承したけど、結局あっちから取り下げやがった
にっちもさっちも行かず
オジさんはもう車に乗せられて話させて貰えなかったから
もう一度、「飯を食った後はさっきの場所に返してくれるんですよね」と念を押した
「勿論そうだ」、と答えたから俺は一旦その場を去った。
飯を食べに行ってから4時間、夜の11時過ぎになってもオジさんは戻ってこない。
そもそも連れていこうとした施設の名前、会社の名前も教えない、なんなら途中から施設には連れてかずにご飯を食べるだけに話を変えてきたのも可笑しかった。
俺はオジさんを名前で呼んでたけど、あいつらは一度も名前で呼ばずにずっと「おじいちゃん」とか呼んでた
知り合いなら名前で呼ぶだろ、一番にそこに気づくべきだった。
でも俺は初めての経験で、どう対応すればいいか分からなかったし、正直怖くて足が震えた。
あのオジさんは今どこにいるのか、無事なのか
心配だ。そして結局また何もできなかった自分が情けなくて眠れない。あれが最後のチャンスだったかもしれないのに。
改めて自分の無力さを実感した
もっと力を付けないといけない
貧困ビジネスの危険にもオジさん達は晒されている。それから守るのも大事だ。
あいつらは俺の事を知ってやがった
おにぎりを毎週木曜に配る大学生って
もしかしたら俺の名前、CoEの名前を使って勧誘するなんてこともあるかもしれない
折角俺らが築いた信頼関係を悪用されるのは許されない。7/1タウンニュースに載せて貰った、SNSでも発信してる、そこにはメリットもあるけどリスクもあることを改めて肝に銘じた。
もし、あの男達が貧困ビジネスや臓器売買をやっていて、オジさんを酷い処遇に合わせていたなら、許せない。顔も、ナンバープレートも全部押さえてるからな。
何が正しいか分からないけど、俺はこいつらを潰したい。善人面してオジさん達の弱みに付け込むのは外道だろ。
その後、仲間のNPOの理事や、実際に勧誘されたことのあるオジさんに早速話を聞いた
次出くわした時はオジさんの為になることが出来る様に
何がなんでも連れて行かせない
それが法律で駄目だろうと
損得勘定抜きで助け合う、支え合う
どんなに微力でも
そういう人間でありたい
そんな人達が集まって
ホームレス問題だけでなく、お祭りとか楽しいことまで一緒にやれるコミュニティ『CoE』にしていきたい