2023年に取り残された男(1月18日)
ここ1週間一旦投稿を止めたことで時間と心に少し余裕が生まれ、ずっと滞っていた部屋の大掃除をすることができた。探し物をするために押し入れから引っ張り出した衣類、2023年後半に大量に買い込んだ本、後でまとめようとしてそのままになった領収書の山などその全てが6畳の和室を埋め尽くすように床に散乱しており、掃除機をかけることさえできない状態のまま2〜3ヶ月放置されていた。その真ん中にとりあえず布団のスペースだけ確保し、その布団の上にあぐらをかきながら、側に付けるように小さな折りたたみ式の机を広げ約1ヶ月もの間毎日エッセイを書き上げていた。
掃除とはなぜこうも後手後手に回ってしまうのだろうか。やらなければいけない時に手につかないのに、他にやらなければいけないことがある時に限って、優先順位が急激に上昇し今までが嘘のように作業が捗る。年末の大掃除も仕事やら帰省やらで全力スルーをかまし、ただひとり2023年に取り残された男になってしまっていた。
さぁ、何から始めようか。手始めに衣類から。収納しようと床に置きっぱなしになっていたダウンを拾い上げてバサっと埃を払った。するとその瞬間「カコンッ。」とダウンに遮られた視界の奥で嫌な音がした。何か置きっぱなしにしてしまったのか、昨日の俺よ。問いかけるように自分の記憶を辿り、この奥に何があったのかを1秒にも満たない僅かな時間の中で考えた。目線を落とすとそこには見事に逆さまの状態で立った500ml缶のコーラ。しまった。普段ならその場で完璧に飲み切ってしまうのにこういう時に限って、机の上に飲みかけのまま置きっぱなしにしていた。どぷどぷと生々しい音を立てながら、畳にどんどん染み込んでいく。その光景が今でも鮮明に脳裏に焼きついている。どんどん広がるコーラは床に散らばっていたレシートを黒く染め上げながら、押し寄せる波打ち際のように範囲を拡大していく。コーラを拾い上げた時はもう時すでに遅し。コーラの甘い匂いが充満した部屋、砂糖漬けになっていくタオルで床を無言で掃除しながら惨めな自分の姿に嫌気がさした。独り言を普段言わない僕は、もはやリアクションに声すら出ない。強いて言うならいつもより少し瞳孔が開くくらいだろう。一人暮らしのリアルというのはこんなことの繰り返しだ。人に喋るほどのことでもない、明日には忘れてしまうような小さな出来事の連続。だからこそ書き留めておきたいと思えるのかもしれない。
それから時間をかけて丁寧に部屋を綺麗にした。予定にはなかったシンクやガスコンロ、その勢いのまま靴まで洗う。少しずつ部屋が綺麗になるにつれて、心の詰まりも次第に取れていき、頭の中まで洗練されていくのを感じた。これでやっと2023年に区切りをつけることができる。二度と散らかすもんかと毎度のことながら誓いを立てる。でもその一方で、生きているからこそゴミが出る。生きているからこそ部屋が散らかる。なんて人間らしいことだろうか。散らかし、掃除をして、物を捨て、また迎え入れる。この一連の流れこそが僕に生きる実感を与えてくれているのかもしれない。そう思えばこんなことでさえ自分を愛する材料になる気がした。