その化石って本物?恐竜時代の化石収集の世界と偽物の見分け方
こんにちはK研究員です。
今回はプログラミングと全く関係ないですがアドベントカレンダー企画で化石について話そうと思います。
私は教育については現地現物が一番と思っています。私は中学校で都道府県の名前や戦国武将などを中間テストのために頑張って暗記しました。が、全く覚えることができませんでした。しかし、大人になって自分で旅行するようになると、「ここが宮城県か。仙台には伊達政宗像があるね」みたいに暗記しなくても自然に覚えられました。実体験に勝る教育はないなと感じたエピソードです。
そんなわけで、プログラミング教育はプログラミングをやった方がいいし、古生物学/鉱石学は実際に化石を所有してみるのが一番の教育かなと思っています。
化石って高いの?
化石というと博物館にしかないというイメージがありますが実は安いものは1000円ぐらいで買うことができます。
例えばメルカリで恐竜スピノサウルスの化石を検索すると1000円台からあることがわかるかと思います。化石の代表アンモナイトも300円ぐらいからあります。
子供に化石図鑑、恐竜図鑑を2000円で買う時にもう1000円出して本物の化石も買ってあげるといいのではないでしょうか。
その化石本物?
さて、1000円で買えるとなると、それって本物なのと疑いたくもなりますよね。もちろん安いものは1000円ですが高いものは数万、数十万、100万円以上のものも売っています。
私の見立てによると先ほどのメルカリの画像2つに出てくるもののうちレプリカと書いてあるもの以外はすべて本物の写真でした。メルカリで買うと、実は折れてたみたいな保存状態が良くないものもあるのですが、全くの偽物というのは今まで買ったことはありません(明らかな偽物も売っていますが慣れればわかるので買ったことはないということです)。
なぜ本物と言えるのか
私も買った化石を見てこの化石って本当に本物かなとずっと考えてきました。やっぱり心配になりますし、何なら今も心配ですw
その中で考えてきた本物と偽物を見分ける方法を伝えたいと思います。その視点は「今の技術でこの化石の偽物は作れるのか?」ということと「作ったら儲かるのか?」ということです。順を追って説明していきます。
完全にゼロから人工物で偽物を作るのは意外とお金がかかる
人工物で偽物を作ろうと思ったら、プラスチック、石膏、陶器などを型に流し込んで作る方法と、石などを削って作る方法があるかと思います。実際に強化プラスチック(レジン)などで作られたレプリカはよく販売されていて、レプリカと断って販売することは何も問題ありません。
ただ、偽物として売って儲けようと思うとプラスチックなどだと、表面のテカリや辺部の柔らかさ等が写真からもわかってしまい、難しいでしょう。また、プラスチックでもリアルに作ろうと思うと数千円から数万円という価格になってしまい、1000円などで販売しては全くリスクに見合いません。
14900円で販売されているティラノサウルスの歯のレプリカ
高額なだけあってかなりリアルだが照りがプラスチックぽい
では陶器はどうでしょう。陶器は質感はより化石に近いですが、すごく細かい造形を作ろうと思うと難しいです。例えば肉食恐竜やサメの歯にはセレーションというギザギザがあります。これはかなり近寄ってみると丸い粒が並んだ形をしています。これを陶器で壊れないように作るのは陶芸をやったことがある人なら難しさがわかるかと思います(釉薬をつけるとぼってりしちゃいますしね)。
また、歯にはエナメル質があり、化石になるうちに独特のひびのような模様が刻まれます。
これを手でペイントするのはかなり割に合いませんし、陶芸で使う釉薬(ゆうやく)で貫入というひびの入るような表現もできますが、化石とはだいぶ趣が異なります。化石に入るような貫入を持つ釉薬があったら陶芸家もこぞって使っていると思います。
模様が手で表現できないなら、インクジェットプリンタでプリントしたらと思うかもしれませんが、プリントは拡大するとインクの粒が見えてしまい、虫眼鏡などで見るとすぐばれてしまいます。何より立体物にインクジェットプリンターでプリントする技術はまだまだ確立されていません。それなら、ビニールなどにプリントして貼り付けたらと思うかもしれませんが、落として折ってしまったらビニールだけ取れてしまい、ばれてしまいます。(ちなみに私は上のスピノサウルスの歯の化石を落として折ってしまい、瞬間接着剤でつけましたw)
では石を削った彫刻はどうでしょうか。石を削って彫刻を作る技術はかなり発達していますのでかなり自由度高くいろいろなものが作れます。
しかし、石を削る場合も、細かいパーツを再現できません。生物は成長するので小さい時には小さい時の構造を持っていてそれが大きくなっても一部残り、フラクタル的な繰り返し構造を持っていることが多いです。これにより極小の独特のもようが出てきます。これを彫刻で再現すると職人芸が必要になり、やはり数千円から1万円程度で販売しては割が合わないです。
このように細かな模様や構造を持つ化石はよっぽど高い値段で売らなければゼロから作っても元が取れません。細かな模様(恐竜の歯のセレーションやエナメル質の模様、アンモナイトの菊の葉のような模様、三葉虫の複眼等)があるかを手掛かりに判断することと、慣れるまで高いものを買わないことで偽物をつかまされてしまうリスクは減ると思います。
合成化石の世界
ゼロから作るは大変ですが、合成品は実は多く売られています。合成品とは割れて発掘された同じ種類の生き物の複数個体の化石を接着剤で貼り合わせて大きいものに仕立てたり、良く出土する他の動物の骨や現代の動物の骨を化石と張り合わせて作られた偽物です。
こちらは偽物とはいえ一部本物なので、数千円ぐらいでつかまされてしまったら、まあ勉強になったなという感じかもしれません。実は私もヤフオクでつかまされたので何本か持っていますw。
継ぎ目のようなものがあるか、模様が連続しているか等に注意する他、よくありがちな合成品のパターンをいろいろ見ているうちに覚えていけばそうそう偽物を掴むことはなくなります。
偽物を売って儲けようと思ったら似たようなものを大量に売らなければ儲からないので自然とパターンのようなものができてきて、見慣れてくるとわかるものも多いです。
構造色も再現できない
アンモナイトの殻は見る方向によって色が変わって見えたりしますが、これは構造色と言って、単純な表面反射による色ではなく、何層もの透明な層で光が分光して反射することによって再現されています。
構造色の研究はいろいろされていますが、まだまだ実用化はこれからといったところです。人工真珠のような一様なものは作れますが、アンモナイトの殻のような複雑な模様を作り出すことは現在の技術では難しいです。
明らかな偽物
写真を見れば、まあ偽物だよねとわかるものも売っています。下記はその例です。20万円ぐらいするケイチョウサウルスが2万円で安いとか思うと買ってしまうのかもしれません。化石部分が高低差がなくのっぺりしているのでわかります。
XXサウルスを真似したというのはまだいいですが、何を真似したのかよくわからないものも売っています。騙されないようにと考えていくと自然と生物の生態について、化石化のプロセスについて勉強になります。
まとめると
化石は結構安く(数百円から)買えて、ゼロから偽物を作るのは難しいので、数千円ぐらいで買えるものは(レプリカと言って売っているもの以外)は大体本物と思います。
偽物をつかまされても一部は本物という場合が多いものです。慣れるとある程度合成品も見分けられるようになります。そんなわけで臆せず安いもの(5000円以下ぐらい)から買ってみるといいと思います。
そして、これの偽物を作るとしたらどうしたらいいだろうという視点で考えてみるのも化石の一つの楽しみ方と思います。
おすすめは?
まずはスピノサウルスの歯の5cm程度のものが良いと思います。5000円以下であることがほとんどですし、まず偽物もありません。どうせ合成して売るなら大きくして売るので5cmの偽物は作る意味があまりないのです(私が買ってしまったのも9cmで2500円というものでした)。
スピノサウルスは安くてたくさん売っているといっても恐竜ですし、ジュラシックパーク3にも出てきます。見どころも多いです。スピノサウルスの歯の化石は多くの場合、エッジを持っていて、食料の魚を取ったときに魚が暴れても歯が折れないように抜けやすくする仕組みのようです。エナメル質の模様も見れます。
見どころという話で言うと、「恐竜の骨」などと言って売っている何の恐竜のどの部分なのかよくわからない骨は安くてもお勧めしません。なんの生き物のどの部分かもわからないと見どころがわからないですよね。想像も働きません。
あとは5cm程度の青く光るアンモナイトもよいと思います。見た目がきれいですし、構造色を持つものはほぼ偽物はないです。アンモナイトはタコやイカと同じ仲間ですが、どんな体をしていたのかは化石に残っておらず想像で描かれています。どんな生き物だったのか想像してみるのも面白いと思います。
ちなみにアンモナイトは割れたものを買うと本物かわかりますw。安く偽物を売って儲けるのに割れた中まで再現する必要はないですからね。絶対本物と言えるものが一つでもあればそれと比較して本物かどうか判断できますね。
家で発掘体験
ヤフオクやメルカリでは化石が入っている石を売っていたりもします。そのようなものを買って子供と一緒に石を割り、化石を取り出してみるのも面白いです。
ちなみに、北海道のアンモナイトの入った石をよく売っていますが、これはかなり硬いので小学生には割ることは難しいです。那須塩原の40万年前の葉っぱなどの化石の入った石も売っていることがあり、こちらは割りやすかったです。
注意点としては割った石はどこかに捨てる必要があるので、石の捨て方を地方公共団体のページなどから調べておくといいでしょう。
そんなわけで、皆様も化石の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。