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「立憲主義」という法思想

伊藤真によれば、立憲主義とは、すべての人々を個人として尊重するために憲法を定め、それを最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかる思想である。憲法は、国民が国に守らせるためのものである。民主主義国家では、国民の多数意思に従って、国の政策の基本が決定される。しかし、多数意思は常に正しいとは限らない。国民の多数が戦争を支持した戦前の日本も同様である。

多数決でも変えてはならない価値を前もって憲法の中に書き込み(日本においては、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義)、民主的正当性をもった国家権力をも制限するのが立憲主義という法思想である。そして、その中心に「個人の尊重」があるという。それは、人権の特性の一つとして理解されてきたものである。

すなわち、伊藤真によれば、憲法は、社会のために一人を犠牲にしてはいけないと考えるのである。国内において、国家は、人権保障の第一次的な責任を果たし、国外においては、国際社会の構成員として、第二次的な責任を、果たしていかなければならない。無実の罪の上に成立する安全な社会を、拒否する姿勢が基底になければならないだろう。多数決に基づく専制を許さない、ということでもある。

すなわち、日本は民主主義国家であると同時に、立憲主義国家でもある、立憲民主主義国家である。国の政策の基本は、多数意思に従うが、その条件として、人権保障をはかる憲法が、最高法規として権力を制限するのである。国家はまず、自国民に対して責任を負い、他国の主権を尊重しなければならない。その上で、人権保障は、国内で完結するものではなく、国際社会に広く開かれていなければならない。

<参考文献>伊藤真『憲法は誰のもの?』

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