ChatGPTの衝撃
執筆者:藤原喜仁(東洋大学)
2023年の最大の驚きは、言うまでもなくChatGPTだろう。年が明ける前の12月、OpenAIがChatGPTを発表すると、SNSやニュース記事が一斉にこのサービスの驚異的な能力を取り上げた。このサービスを実際に試用した者なら理解していただけるかもしれないが、これまでのAIサービスと比べ、より人間らしい表現で、しかも流暢な日本語で回答してくるというのが特筆すべき点だ。
通常の一問一答形式といった質問に対する返答だけでなく、テーマや問題についての継続的な対話が可能だ。そのうえ、「整理して表にして」「評価のためのルーブリックを作って」「英語にして、日本語にして」といった指示に対しても、数秒で要求に応じた作業をこなしてくれる。また、文章の添削や改善も得意とし、読み手や書き手の特定の要望や属性(年齢、性別、職業など)にも柔軟に対応してくれる。
最近の私の使用例は、学生・保護者・教職員向けのアンケートをGoogle Formで3つ作成したものだ。スプレッドシートから設問項目を抽出し、自動的にフォームを生成するようにChatGPTに指示をした。プログラミングが必要な場面であったが、ChatGPTに指示すると瞬時にその解答(コード)が生成された。私は得られたコードをGoogleのスクリプト編集画面に貼り付けて実行ボタンを押すだけで、自分でプログラムを書く手間を省き、即座に利用可能なプログラムを得ることができた。これにより、まるで専属のプログラマーがいるような感覚を味わえた。
しかし、このような素晴らしいAIツールには、人類を脅かす可能性についての懸念が存在している。つい先日、開発元である「OpenAI」のトップであるサム・アルトマン氏が、この懸念を受けて取締役会で解任されるという出来事(クーデター)があった。これに対してはMicrosoft社のスンダー・ピチャイの働きかけや、従業員のほぼ全員による反対意見の表明により、一週間足らずで撤回された。この出来事は非常に迅速なものであったが、AIの進展に対する懸念が浮上している。
過去には映画「ターミネーター」が進化したAIが人間を支配し、人類がこれに対抗するという未来を描いたが、今回の解任劇にはそのような未来への危機感が浮上した。現実の生活でもAIによる判断により、不利な条件での決定が下される可能性が出てきており、2023年は非常に興奮する一方で、将来の社会についての懸念も呼び起こしている。AIの進展には今後も注視が必要である。