「ゆるコンピュータ科学ラジオ」さんとのコラボにプログラミング教育の理想像を見た!
こんにちは。みんなのコード永野です。
私は高等学校「情報」の授業を担当する教員方への研修の実施など、主に高等学校における情報教育の充実と発展に向けて活動をしています。
今年の1月に、「ゆるコンピュータ科学ラジオ」というYoutubeチャンネルとみんなのコードがコラボした動画がアップされました。
このチャンネルの動画はどれも面白いのですが、今回の動画も公開後数日で再生回数はどんどん伸び、コメント欄やSNS等でもかなり好評です。ぜひご覧いただければと思います。
大変面白い動画で爆笑必至ですが、プログラミング教育の側面から見て、大変素晴らしい場面がありましたので、今日はMagazineに綴りたいと思います。
※この記事はみんなのコードコーポレートサイトからの転載です。
ゆるコンピュータ科学ラジオとは
「ゆるコンピュータ科学ラジオ」は、「ゆる言語学ラジオ」というYoutubeチャンネルから派生しました。「ゆる言語学ラジオ」ではパーソナリティの水野さんによる言語学にまつわる興味深く、かつおもしろいエピソードが紹介されます。堀元さんとの軽妙な掛け合いもあいまって、素晴らしい知的エンターテインメント番組となっています。
「ゆるコンピュータ科学ラジオ」は、水野さんと堀元さんの立場が逆転しており、水野さんを「ド級の機械音痴」と揶揄しながら、堀元さんがコンピュータサイエンスの「面白み」を紹介していきます。
両チャンネルともお二人の「知的にふざける」精神を見事に体現している大変おすすめのチャンネルです!
収録当日
収録当日、池袋にある「ゆる学徒カフェ」に併設されたスタジオでお二人の収録に立ち会わせていただくことができました。
「あー、いつも動画で見ている光景だー!」と思いながら、お二人のやりとりを目の前で拝見することができ、感激しました。笑うと動画に音声が入ってしまうので、収録の2時間近い間、声を出さないよう笑いを堪えるのが大変苦しかったです。
現在YouTubeで「プログル情報」関連の動画が3本配信されています。
【プログラミング体験1】#106
機械オンチ28歳、初めてのプログラミングに挑戦。右クリックができなくて詰む。
※この動画でみんなのコードについて詳しくご紹介いただいています。
【プログラミング体験2】#107
「x=x+1」の見え方は、プログラミング経験で180度変わる
【プログラミング体験3】#108
プログラミングの基礎を習得したので、相方botを制作してみる
多くの方に視聴いただき、視聴者の方々のコメントも盛んでとても好評のようです。
動画から感じた「プログラミング教育」の真髄
動画を見直して、再度腹を抱えて笑うのと同時に「プログラミング教育」の視点から見て、改めて良い示唆がありましたので以下に記してみようと思います。
・学習者の疑問を大切にすること
この3本の動画に共通している最も素晴らしかったことは、経験者(指導者)が「教えすぎない」ことです。堀元さんは水野さんの「これはどうしてこうなるんだ?」「じゃあこうしたらどうなる?」という疑問を大切にしているように感じました。
このような疑問は人それぞれに異なるはずであり、またどのタイミングで発生するかもわかりません。指導者のペースで細かく教えながら学習を進めると、このような素朴な「疑問」は発生しなかったり、あるいは埋もれてしまったりします。
学びながら自然に感じた疑問を、学習者自身がその場ですぐに確かめてみる、という経験が学習のうえでとても大事です。
水野さんの疑問に対し、堀元さんの応答は一貫して
でした。
などと止めたりはしません。
とにかく本人にやってみてもらう。それでダメならまた本人が「どうしてなんだろう・・じゃあこれならどうか」と次のチャレンジするのを見守りながら、最低限のアドバイスに徹します。
これは、私を含めプログラミングを教える学校の先生たちにとっても大変参考になるやりとりです。単にレッスンを進めるのではなく「本当に理解する」には学習者の主体性を重視することが大切です。
一方、この方法は時間がかかるのは確かで、学校での限られた授業時間では足りないかもしれません。しかし、時間短縮のために「ポイントだけ絞って全て説明してしまおう」というのは、学びの本質とは明らかに異なります。
学びは先生から与えられ流し込まれるものではなく、学習者が自ら「獲得」するものです。試行錯誤や回り道をしながら、学習者本人が疑問と納得の繰り返しの中で学び続ける必要があるでしょう。
(「そんなこと言っても授業時間が足りないのだから仕方がない」という点についてはまた別の機会に記したいと思います。)
もちろん学習者も教わるのを待つだけではなく、自分で考えようとする姿勢が必要です。水野さんは「こうしたらどうなるかな」などと、自分で考えながらプログラミングに取り組んでいました。収録が始まってすぐに、「水野さんのように学べばメキメキとプログラミングができるようになっていくだろうな」と感じていました。
これを体現するように、水野さんの成長は目を見張るものがありました。第1回ではキーボードの入力自体でつまづくような場面も見られたのが、第3回では意味をしっかり理解して、自分で考えながらプログラムを書けるようになっていたのが印象的です。
・プログラミングは創造的な「表現」の手法であること
もう一つ、動画で大変素晴らしかったのが、「自分のアイデアをプログラムで実現させる」ことを重視していたことです。
学校の授業では、一通りプログラミングの学習項目が終わると理解度テストなどを行って学習を評価し、どんどん次の学習項目に移っていきます。しかし、プログラミングは本来「プログラムの文法を学ぶこと」ではなく、自分のアイデアをプログラムという形に「表現」するためのものであるはずです。
プログラムで、「こんなものを作りたい」「こんなことができたら面白そう!」という気持ちが最も大切です。動画内では、「相方botを作ろう」と、問いかけに対して相手が言うであろう返答を、それぞれお互いにプログラムでつくってみよう、ということになりました。
このテーマも、収録中の二人の会話から決まっていったもので、決して一方的な指示ではありません。
さらに、「わからないことがあったら、Google検索して調べながら作りましょう」というのも素晴らしかったです。
教育現場では「教えたこと」の範囲内で課題や作品をつくらせようとしがちです。しかし、「これをやりたい!」という「知的欲求」が学ぶ意欲そのものなのであり、やりたいことに向かって自分で調べながら実現していこうとするのは自然な行為です。
そもそもプログラマーだって、全て暗記しているわけではないはずです。プロでも調べながら、試しながらプログラムを書いているわけで、決して否定されることではありません。むしろ、プロであろうとなかろうと、またどんな分野であろうとも、自分で調べながら何かをつくってみよう、やってみようというのは、生涯にわたって学び続ける上でとても重要な姿勢ではないでしょうか。
試聴者の感想
番組では、視聴者へのアンケートを実施させていただきました。回答いただいた方は330名を超え、どなたも真摯に感想を寄せてくださいました。一部ご紹介します。
一番大事なことは「学ぶ人が興味を持ち、楽しい」と感じられること
2022年度から、高等学校では「情報I」という授業の中で、すべての高校生がプログラミングを学んでいます。また、2025年1月の大学入学共通テストからこの「情報I」が原則必須科目となり、先生方もどう教えたらよいのかと悩んでいます。
一番大事なことは「学ぶ人が興味を持ち、楽しい」と感じられることだと思います。
子どもたちがプログラミングが楽しいと思うことが、自ら学び続ける姿勢が生まれ、確かな理解へとつながっていくのではないでしょうか。
ゆるコンピュータ科学ラジオの堀元さんと水野さんを見て改めてこのことを実感できました。
子どもたちが楽しみながら自ら意欲的に学んでいくことを実現するために、みんなのコードはこれからも学校と先生方への支援を続けてまいります。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
みんなのコードは、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動し、多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでまいりました。
私たちの活動に共感いただき、何かの形で応援したい、と思ってくださった方は、みんなのコードへの寄付をご検討いただけると嬉しいです。
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引き続き、21世紀の価値創造の源泉である「情報技術」に関する教育の充実に向けて、これからも取り組んでいきます。
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