AIPE認定「シニア知的財産アナリスト(コンテンツ)」取得の奮闘記
先日、AIPE認定 シニア知的財産アナリスト(コンテンツ)の有資格者として認定されました。
今まで僕は、「シニア」が付かないアナリストでした。ただ自分自身の業務として、コンテンツ企業を支援することが度々あります。上位資格である「シニア」に認定されれば、対外的に信頼性が増すでしょう。取得するメリットは多々あります。
とはいえ、認定まで本当に大変でした。
業種を問わずコンテンツビジネスは、どこまで行っても正解がありません。
100%ヒットする、ないし成功すると考えられている事業でも、失敗してしまうことも多いです。
今回の認定審査も、果たしてこれで良いのだろうか……という不安との戦いでした。
知的財産アナリストとは
そもそも「知的財産アナリスト」とはなんぞや?
という疑問もあるでしょう。
定義については、知的財産教育協会に記載してあります。
「アナリスト」の前に「知的財産」と付くので、「知財」のみ扱うような印象を受けますが、マーケティングの能力などが同レベルで求められます。そこが知財管理技能士とは異なるところかもしれません。
定義にある「企業の戦略的経営に資する情報を提供」の「提供」のところも大きいです。
「知財の面から、◯◯というリスクがある」と指摘するだけではありません。
知財アナリストの場合は、「◯◯というリスクがあるけど、●●をおこなってリスクをヘッジして成功へ導く」……という提案になります。
よりアグレッシブに事業へ関わりを持つのが、知的財産アナリストの仕事だと思います。
シニア知的財産アナリストの難易度
シニアの認定審査の前提として、「知的財産アナリスト」にならなければいけません。アナリストの資格認定については、以下の資格を予め取得しておく必要があります。
資格を持っていなくても講座の聴講は可能ですが、資格認定の試験を受けることはできません。
講座を受講し、学科・実技の試験に合格したら、ようやく知的財産アナリストして認定される仕組みです。
なお認定者数は、特許に比べると、コンテンツの方が少ないです。
2024年8月現在、コンテンツのアナリストの認定者は301名です。
また、シニアになるには「知的財産アナリスト認定講座の認定試験(実技試験)の課題レポートにおいて、特に優れたレポートを作成した者(S評価者)」だけが対象です。
コンテンツのジャンルだと、S評価を取得したアナリストは38名です。(2024年8月現在)
幸い僕は、S評価のレポートだったので対象者でした。
更にここから、シニア知的財産アナリストが絞られていくわけです。
現時点でのシニア知的財産アナリストの認定者は何人でしょうか?
結論から申し上げると、コンテンツにおいては、現時点で僕も含めてたった3名しかおりません。
301人(知的財産アナリスト)→38人(S評価者)→3人(シニア知的財産アナリスト)
今後認定者も増えていくと思いますが、現在はたった1%しか認定者がいないのです。
この倍率だけでも、かなり難しい資格だと伺えると思います。
(そして実際、難しかった!)
一回落ちた……
実は僕は、シニアの試験に一回落ちています。
シニアの認定制度については、特許が先行しておりましたが、コンテンツの方でも始まったときに、チャレンジしたのです。
一番最初に認定されたら、とてつもなく嬉しいだろうなぁ~と思い、テンション高く認定審査に立ち向かいました。
手応えもそこそこ。
意外とイケるかも? と楽観的だったのです。結果が出るまでは。
結果見事に、落ちました。
ちょっとショックでしたね。このやるせない気持ちをどこにぶつければ……?
悶々としていましたが、行動しないと何事も始まりません。
そこで思い出したのです。
最初に知的財産アナリスト講座を受講したときのことを。
2016年でした。その頃は、前職のアニメ製作会社に勤めておりまして、今後起業か転職かで悩んでおりました。ただ、いずれにせよ自分の実力はアニメ製作会社で培われたものなので、外でどれだけ通用するか不安も抱えておりました。
そこで、客観的に自分の実力を評価するためにも、アナリスト講座を受講したのです。
今回の失敗は、客観的に自分の実力が劣っていた、あるいはアップデートできていなかったからでは? と思いました。
知的財産アナリスト講座を再受講
独立してからは、自分に厳しいことを言ってくれる人が周りになかなかおりません。
いつの間にか「ぬるま湯」に浸かっていたのでしょう。
そこで、アナリスト講座を再受講することに決めたのです。
最初に受講したときは、8期目でした。再受講時には、21期目となります。当時はリアル参加のみでしたが、形式もオンラインに変わっています。
新鮮!
以前よりもマーケティングに比重が置かれた講座は、最新のコンテンツ業界のトレンドも組み入れながら展開されていきます。
自分の知らなかった知識も多く、得るものも多かったです。
知的財産アナリストになられた方も、時をおいて、ぜひ再受講をオススメします。
なお、この辺りの経緯は以前、noteで書いたこともあります。
再度のチャレンジ
アナリスト講座の再受講も終え、自分自身もアップデート……できた気がします。とはいえ、今の自分に足りないところも見つかりましたので、勉強は続きます。
そうこうしているうちに、またシニア知的財産アナリスト認定審査のお知らせが届きました。
ただ一方で、弱気の虫が出てきます。再び落ちたらどうしよう……更にダメージを食らうぞと思ってしまい、試験の申込に少し躊躇してしまいました。
しかしながら、今度の審査日程はちょうど業務的にも忙しくない時期だったので、思い切って申し込みました。
行動しないと、結果は出ません。たとえ今度も落ちたとしても、経験にはなるはずです。
気力も復活してきました。
ただし、認定審査の課題が届くまでは……。
課題をざっと読んだときに、これは難しいと感じました。
どこからどう考えていくべきかも、慎重に判断しないといけません。
初手を間違えると、壊滅的になりそうな雰囲気が漂ってきます。
正直、この時点で辞退しようかなと、弱気の虫が再び出てきたのは事実です。
けれども、既に審査料も支払ってしまったので、進めるしかありません。
お金の力はすごいです。(自分がセコいだけかもしれませんが)
粛々と課題を進めていきます。
ところで、トヨマネさんというパワポ職人の頂点みたいな人がいるのですが、先日以下のようなポストをしていました。
・資料作成が「スキルの総合格闘技」な理由
資料を作成するにしても、水面下では多大な労力がかかっています。水面下の積み重ねをおろそかにすると、非常に薄っぺらいものになってしまい、何の説得力も持ちません。
ですのでシニアの審査課題も、表に出ないところまで全力で取り組む必要があります。
また課題を提出したところで肩の荷が下りるわけでもなく、後日プレゼンテーションもおこなわれます。
当日まで、毎日のように練習しました。
絶対緊張するのは目に見えているので、僕のような不器用な人間は、プレゼンを身体で覚え込ませるしかありません。
そして、プレゼンです。
案の定、緊張しました。
やはり身体で覚えておいてよかったです。
自然と口が動いていきます。
プレゼン後は、「果報は寝て待て」ですね。
自分的には、もうちょっと手応えがほしかったところです。
今回もダメか……と内心思っていたので、認定されたとの連絡には驚きました。
嬉しさよりも、サプライズの方が大きかったですね。
・2024年度認定審査でシニア知的財産アナリストを2名認定
~特許分野1名、コンテンツ分野1名を認定~
https://ip-edu.org/news240821
とはいえ、これで晴れて僕も「シニア知的財産アナリスト(コンテンツ)」の仲間入りができました。
需要に応える
知的財産アナリストは士業とは違います。資格を保有しているからといって、それだけで「稼げる」わけではありません。
しかし需要はあります。
2017年に独立し、「人と人の懸け橋となり、アニメ/コンテンツの未来を作るプロデュース会社」である法人を立ち上げました。
以来、継続的にアニメやコンテンツ関連のご相談を頂いております。
そうした中で、知的財産アナリストのスキルは確実に活かされています。独りよがりにならず、ファクトに基づいた分析を踏まえつつ、未来を見据えた提案が常に求められています。
この度僕は、シニア知的財産アナリストの認定を受けましたが、クライアントへの提案も、さらに高度で洗練されたものが必要とされるでしょう。
これからも一層の努力を重ねていく所存です。