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『ひとり暮らし』

『ひとり暮らし』
谷川俊太郎/著 新潮文庫 2001

今月谷川俊太郎さんがお亡くなりになられましたね。中川李枝子さん、せなけいこさん、西田敏行さん、火野正平さんと寂しいニュースが続きました。絵本好き、「人生の楽園」、「こころ旅」好きとしてはかなりショックでした。

買ったまま読めずにいた谷川俊太郎さんの『ひとり暮らし』を読みました。1980年代から書かれた谷川さんのエッセイが収録されています。個人的な印象ですが、谷川さんってずっと仙人のようなイメージなのです。当たり前のことだけど、そんな谷川さんにも60代の頃があったんだなあと。

もたれ合う、依存し合う家族よりも、ゆるやかな絆でむすばれた個人の集まりとして家族をとらえるほうがいいのではないかと、その是非はともかくとして私は考えるようになっています。たとえ血がつながっていようと、結婚の誓いをともにしていようと、自分ではない人間を一個の他者と考えることが必要な時代になってきていると思うのです。

『ひとり暮らし』p106(「ひとり暮らしの弁」から)

こちらは2000年に書かれた文章。今でこそ、こうした考えが多数派となってきているように感じますが、こう文章に表されるとまだ「家族」にしばられていることも多いのではないかと思います。いい時もつらい時もこうした姿勢を崩さずにいたいものです。

思えば谷川俊太郎さんの作品って、意図せずとも手に取っているんですよね。例えば絵本の『もこもこもこ』なんて谷川さんの作品だから読もう!とはならないというか。自然と手に取った作品が谷川さんだったということが多々あります。それだけ私たち、子どもたちの生活に浸み込んでいるんですよね。

図書館で追悼コーナーを作るにも、一般コーナーにも児童コーナーにも谷川さんの作品が色んなジャンルでたくさんあるのです。そんな作家さんってなかなかいないのでは。だから、訃報を聞いたとき、「ああ、一つの時代が終わったな」という感じがしました。「戦争」や「人権」などについても、真っ直ぐにメッセージを伝える作品をたくさん作られました。

これからも自然と手に取ってしまうんだろうなと思います。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。


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