NICO Touches the Walls TOUR 2017 ”Fighting NICO” LIVE REPORT (4/30 ロームシアター京都)
平安神宮の大きな赤い鳥居を潜り抜け、てくてくと歩いていると見えてきた、旧京都会館ことロームシアター京都。個人的に京都は何度も遊びに来ている場所だが、ライヴと言う目的では初めての来都となる。本来ならば、4月2日の東京NHKホール公演で、私自身のNICO Touches the Walls TOUR 2017 “Fighting NICO”のツアーファイナルを迎えるはずだった。しかし、3月11日に長野公演を観終えた時点で京都行きを考え始め、結局、チケットを取ってしまった。
座席を確認すると「3階バルコニー席」とある。このバルコニー席というのは、場合によっては封鎖してしまうこともある場所。実際に私の座った席からの視界は、左手にメンバーの立つステージ、反対側には2,3階席が見え、眼下には1階席が広がっている。立ってライヴを観れないこともないが、高所恐怖症の私は座ったまま、基本的にステージの方向に体をねじりながらライヴを観ていたのだが、出来心でライヴ中何度か反対側を振り返ってみた。すると「そうか。ステージにいるメンバーは常にこういった景色を眺めているのか…」と、メンバーが日々目にしている光景がダイレクトに理解できたと同時に、今までつい癖で腕組みしながらライヴを観ていたことを、猛反省した(笑)。
また、オープニングのプロジェクションマッピングとレーザー演出を始め、かなり凝った演出が楽曲ごとに施されていたFighting NICO 。これは1階席よりも確実に、ホールの上階席から観た方が立体感ある光と映像の世界を、思う存分堪能できるものだと感じた。波打つようにグラデーションする照明が、幻想的な世界へ客席丸ごと導いた”夢1号”や、”TOKYO Dreamer”の曲中で、左右対称に放射される無数のレーザー光線が交差し合うシーンが特に印象的だったが、この日の優勝はやはり、曲の前半と後半でピンクからグリーンの照明に変わる様が、春から初夏へと移り変わりを描いた4月最後の”April”。
MCが一度入っただけのほぼぶっ通し状態の本編から、アンコールまで駆け抜けたニコ。光村龍哉(Vo&G)の歌といい演奏といい、4月の東京・NHKホール公演から見違えるほど良くなってる。噂には聞いていたが、新たに”B.C.G”がセトリに組み込まれていた。フロアを威嚇するかのようなエレキの音色で古村大介(G)がイントロを鳴らせば、対馬祥太郎(Dr)の野性的なドラミングと、絡みつく坂倉心悟(B)のベースラインがフロアに熱風を吹かし、こちらも圧倒されてしまう。ツアーも残すところ今公演と追加の千葉・浦安公演のみ。脂の乗り切った状態で迎えたセミファイナルのステージは、サポートメンバーに加わった浅野尚志(Key.Vn.G)も、前のめりなヴァイオリンを”GUERNICA”では奏でており、対馬が全力振り絞る”MOROHA IROHA”のドラムソロも、過去4箇所観てきた中でもベストアクトにふさわしい出来だ。どの曲の、どこの場面を切り取っても、常にライヴのピークを迎えているようで、少しおとなしめに見えた京都のお客さん達は、勢いのままに突っ走ったニコに着いてくることができたのかと、少し心配にもなった。
京都公演の2週間前(4月16日)に、ニコは佐賀GEILS公演で全国47都道府県ライヴ制覇を達成。バンド結成13年目、メジャーデビュー10年目にしてようやく迎えられたこの日を区切りに、再び走り出した直後の凄まじいライヴを目の前にした私は、本来ならファイナルである場所京都で、一旦、ツアーにピリオドを打とうとしているのだと思った(また、そうでもしないと浦安のステージには立てなかったのだろうということも、後日しみじみ納得するのだが)。そして、アンコールでのMCで、光村が言い放った「好きな音楽をやっているミュージシャンはかっこいい」という言葉は、好き放題やってきた自分達への自負と、これからの決意の表れに聞こえた。光村曰く「好き放題やっている」Fighting NICO で「自分達はこれでいいんだ」と受け入れ肯定できた瞬間が、メンバーそれぞれにあったはず。そしてまさに京都公演が「そんな瞬間だらけ」だったと強く思った私自身も、その場に立ち会えたことが、ファンとしてこの上ない喜びだった。
☆☆☆☆☆
setlist
1 新曲
2 B.C.G
3 そのTAXI,160Km/h
4 バイシクル
5 手をたたけ
6 夢1号
7 Diver
8 GUERNICA
9 Aurora(Prelude)
10 TOKYO Dreamer
11 エイプリル
12 天地ガエシ
13 MOROHA IROHA
14 妄想隊員A
15 渦と渦
16 新曲
encore
1 THE BUNGY
2 ストラト
3 マシ・マシ
☆☆☆☆☆
(2017年 7月19日)