マガジンのカバー画像

GRAPEVINE

67
GRAPEVINEにまつわるエッセイやライヴレポートをまとめています。
運営しているクリエイター

記事一覧

「天使が歌う欲望の詩」を聴け

哀愁帯びたブルースハープの音色が胸に突き刺さる。バンドサウンドとストリングスが複雑に絡み合う大胆なアレンジこそが、GRAPEVINEというロックバンドに備わった批評性の高さ。「天使ちゃん」はその真骨頂になるのだろう。しかし、今回ばかりは「ちょっとやり過ぎなんじゃ…?」と引いた。いや、聴いたら皆ギョッとするはず。だって第一声が<あざっす>だよ?!?! そもそも田中和将と言う人は、誰が聴いても理解できるような、あからさまな表現を避けるタイプのミュージシャンだったが、2021年リ

2024年ライブまとめ②(GRAPEVINE/syrup16g/GOTOWN FREAK )

2024/07/13 GRAPEVINE「 The Decade Show Summer Live 2024」日比谷野外大音楽堂 「ビクターに移籍してからの10年はちょうど自分の40歳から50にかけてなんですよ(ニュアンス)」と「音楽と人」に掲載されていた田中さんの言葉を思い出しながら観た。そんな10年縛りライブは、大人っぽいGRAPEVINEのライブという印象。「馬から犬に乗り換えました~!」って、ライブ中に言い放った移籍報告つい最近のように思っていたけど、久しぶりに聴く

2024年ライブまとめ①(ストレイテナー/ウエノコウジ56歳誕生祭/羊文学/GRAPEVINE×Hedigan’s )

2024/01/27 ストレイテナー 「Silver Lining Tour」KT Zepp Yokohama 4年ぶりに観るストレイテナーのライブ。めちゃくちゃかっこよかった!そうだ!私は美メロ輝くソフトなテナーよりも、お客さんに噛み付く攻撃的なテナーが大好きだったんだわと思いだして、やはり私が好きなのはロックバンドなんだよぉ!!!と、初心にかえることができた。「年末に声がでなくなって、お客さんが歌ってくれたから助けられた(だったかな?)」とお話しされていたホリエさんには

なかなか終わらない夏の日記(8月・9月・10月)

8月某日 英国のロックバンドoasisが15年ぶりに再結成するらしい。ガセネタだと思っていたら本当だった。正式に発表された当日はニヤニヤが止まらず全く仕事にならなかった。 oasisの残像を追いかけ、弟(リアム・ギャラガー)の単独公演には何度か足を運び、彼がoasisの曲を歌い始めればフロアから自然発生するシンガロングの一部に私もなった。ライブ後は「いつかバンドで観ることもできるんだろうか?」と胸を膨らませながら帰ったけれど(アドレナリン出まくっているため)、実際はさほど期待

GRAPEVINE 「NINJA POP CITY」を聴いたら泣いてしまった話。

7月8日、FM802で初解禁されたGRAPEVINEの「NINJA POP CITY」を聴いたら、泣いてしまった。 都会の夜の街をスリリングに駆け抜けるような疾走感が心地いい、2020年代を象徴するようなオシャレバンドサウンド。例えばこの曲が羊文学やKroiといった時代の寵児達に挟まれたとしても、引けを取ることはないだろう。そして、GRAPEVINEを知らない人が聴いたら信じない。間もなくメジャーデビュー30周年を迎えるアラフィフバンドが作った楽曲であることを。 ただ、不

2023年のマイベストソング

2023年のマイベストソングは、昨年リリースされた曲だけではなく「昨年の印象的だった音楽トピックス」を軸に選曲した個人的なものです。 流行りの曲を追っかけることに一生懸命だった10代と比べ、音楽の聴き方はかなり変わりました。 ・Ub(You bet on it) / GRAPEVINE ・more than words / 羊文学 ・紫陽花 / 椿屋四重奏 ・LOVE ROCKETS / The Birthday ・世界の終わり / THEE MICHELLE GUN EL

【10月の日記】《GRAPEVINE TOUR 2023》10/26 東京 LINE CUBE SHIBUYA公演を観て

「今こそ俺に賭けてみないか!「You bet on me!」」という威勢のいい田中和将の掛け声と共にライブは幕開け。そして本編・アンコールを終えると、感謝の言葉とともに「今日も幸せでした」と言い放ち、ステージを去った。彼が、9月のZepp Shinjukuで観たときよりも(精神的に)パワーアップしているように見えたのは、久しぶりの全国ツアーが充実している証拠だろう。 9月に発売されたアルバム『Almost there』の世界をディープに掘り下げるのではなく、そこに既存曲をプ

【エッセイ】2023/2/23 [grapevine in a lifetime presents another sky]東京・中野サンプラザ公演 ~another story~

時は、1990年代後半。インターネットが身近なものではなく、スマートフォンもなかった頃、地方に住む高校生だった私にとって、好きなバンドの新曲やライブの情報をいち早く知る手段はラジオ。彼らを知ったきっかけも、ラジオだった。 高校卒業後、進学した大学の軽音楽部に入部した私は、ある日、彼らの「コピーバンドをやらないか?」と、先輩と同期に誘われた。嬉しさのあまり二つ返事で承諾。担当する楽器はキーボードになった。バンドスコアを買い、たくさんの曲を練習し、ライブ出演が決まると、精一杯、

【10月の日記】GRAPEVINE『Almost there』を聴く。

9月27日に発売され、GRAPEVINEにとって18枚目のオリジナルアルバム『Almost there 』。今回バンドが招いたプロデューサーは、サポートメンバーとして20年以上の付き合いのある高野勲氏。 高野さんは、実際にプロデューサーとしての実績もあり、何よりGRAPEVINEというバンドを良く理解している方。だからなのか、まず、一周目を聴き終えて感じたことが「よりGRAPEVINE を、メンバーの存在を、個を感じられるアルバムになってるよなぁ」でした。 例えば、とある

【9月の日記】9/14 GRAPEVINE 「SUMMER SHOW」@ZeppShinjuku(TOKYO)

ここ数ヵ月、実はバインの曲やゲスト出演したラジオを聴くことができなかった。 でも、だからこそライブで顔を付き合わせないとわからないことがある。伝わらないことがある。ライブ中、すっかり通常運転の田中さんを目の前に、私はそんなことをずっと思っていた。 セットリストは、今月末に発売されるニューアルバム『Almost there』 より数曲披露。配信リリース済みの「雀の子」や「Ub(You  bet on it )」はもちろん、このツアーで初解禁された曲も。また既存曲では「ここが居

【7月のひと言:GRAPEVINE「雀の子」を聴いた】

聴いた瞬間「この路線(「ねずみ浄土」系)で来たのかー!」と、予想はおおいに外れました。もっと暗くて、どんよりしてるヤツが来るんじゃないかと思っていたから。 しっかし、なんなんだこのバンドは。そして、この攻めためちゃめちゃかっこいいサウンドは。しかも「ねずみ」の次は「雀」で「お餅」の次は「饂飩(うどん)」ですか。スタッフ、ツアーグッズでうどん(乾麺タイプ)作りそう。 GRAPEVINE の素晴らしいところは「そこそこのキャリアを積んでいるのに、時代の最新音楽に対する関心と解

【6月のひと言:ルーツ(初めて買ったGRAPEVINEのCDについて)】

相変わらず何を書けば良いのかわからないまま、noteを放置している状態ですが、ちょこちょこ過去記事を読んで下さる方がいらして「いいね」がついていると嬉しい。書いた甲斐あったなと思います。ありがとうございます。 なので、今日は小ネタを。 最近のロックバンド界隈では何が流行っていて、何か良いのか?が現在全くわからない人になってしまっているので、しつこいようですがGRAPEVINEについて今回も書くんですけど、そうですね…私が初めて買ったGRAPEVINEのCDは「スロウ」です

【4月の日記】Re:START

2023/04/06 今だから言えること。 突然解散したり、突然復活したりもする。バンドに何が起こるかなんて、ファンには全然わからないものだよなぁと、過去の経験からそう理解してきたけど、まぁこの人達は大丈夫だろうと呑気に平和に構えてたところが私にはあった。が、何も起こらない方が、珍しいのかもしれない。 普通に失望していましたし、なんだか音楽自体を聴く気分にもなれないほど落ちてしまった時期もある。それでも手放せない葛藤がずっとあって、ライブのチケットは取ったけど行く行かな

【3月の日記】ぼくらのうた

2023/02/23  私が彼らに期待していることは、継続。本当にこれに尽きるのですよ。それに、何かを続けることの「尊さ」を私に教えてくれたのは、田中さん、あなたなんだ。あなたの声を20年以上聴いてるということは、下手したら身内の次にたくさん耳にしている声になるんだから。マジで26年生のファンをなめんなよ。 音楽を聴くことよりも、ライブに行くことよりも、人生に於いて大事なことは、間違いなくたくさんある。けれど、私の今までがそうであったように、どちらも確実にないよりあったほう