主催者に必要なのは「愛情」
eスポーツの大会やイベント(以下、「eスポーツ大会」といいます)を開きたいという方の動機は人それぞれだと思います。ですが、まず大きな前提として、「特定のゲームが好きであり、自身も1人のユーザーである」ということがコミュニティ大会を主催する上での必要条件です。
コミュニティ大会の対の言葉は、ゲームメーカー等が主催あるいはオフィシャルスポンサーとして開催する「公式大会」です。コミュニティ大会とは、一般のゲームユーザーが主催する大会を指します。
そのゲームを始めたばかりという方、あるいはそのゲームのプレイ頻度があまり多くないという方は、まずはそのゲームをある程度やり込み、既に開催されている公式大会やコミュニティ大会を観戦したり実際に参加したりしてみることをオススメします。ゲームタイトルは決まっていないけどとりあえず何かしらのeスポーツ大会を開きたいと思っている方は、自分がのめり込めるゲームを探すところからスタートした方がいいでしょう。コミュニティ大会の運営において最も重要な要素は「熱量」だからです。
「自分が好きなゲームをもっと盛り上げたい」「同じゲームが好きな人が集まるコミュニティ(ユーザー集団)をもっと大きくし、活性化させたい」といった、そのゲームに対する「熱量」もとい「愛情」がないと、それなりの準備時間が必要となるeスポーツ大会運営は決して長続きしません。ゲームの理解度は、そのゲームに対する愛情の前提に立っています。
ちなみに、私は実はゲーマーではありません。最後に家庭用ゲームをプレイしたのは中学生の時、PlayStation2やNintendo 64で止まっていました(スマブラとゴールデンアイが大好きな中学生でした)。地方転勤になってあまりに暇になり、約10年ぶりに購入したのがPlayStation4でした。友人に誘ってもらい、Dead by Daylight(以下、DBD)というサバイバルホラー対戦ゲームを始めたのが2018年のことです。自宅で東京に住む友人とLINE電話をしながらオンラインゲームで遊べるという技術革新が自分の知らないうちに起きていたことに驚嘆し、気づいたらほぼ毎日プレイにのめり込んでいました(当時は音声会話やチャットができるDiscordというアプリすら知りませんでした)。
大会運営を思い立つ契機となったのは、2021年1月、突如DBDの公式運営(Behaviour Interactive Inc.;カナダ)が、「世界で初めてとなる公式オンライン大会を日本で開催する」と発表したことです。その頃にはかなりDBDをやり込んでいた私は、当時のTwitterで出場メンバーを募集し、人生で初めて「ゲームの大会」というものに出場しました。
名前も顔も年齢も職業も何も知らない、SNSで知り合った5人でしたが、チームを組んで日々練習していくうちに、中学や高校時代の部活動に打ち込んでいた頃を思い出すようになりました。俗に言う、「第二の青春」というヤツです。
あと1勝できれば本戦進出、というところで敗れましたが、通常のプレイでは味わえない緊張感と、勝利した時の高揚感、負けた時の悔しさは、日常では得難いエネルギッシュな体験でした。
“自分が知らなかった、大会で得られた感動や興奮といった大会の醍醐味を、まだ知らない多くの人に届けたい――。” これが私の大会運営のスタートでした。
そうして一緒に出場したメンバーを誘い、5人で初めての大会運営の準備にとりかかったのです。愛情の次に必要なものは、「運営仲間」。この集め方は、次稿で詳しく紹介します。