
2022年5月26日
今日のココ日(ココルーム日記)
よく釜ヶ崎芸術大学に顔を出すオッチャン、安藤さんは、時々釜芸のまかないご飯を買ってくれる。
今日もお腹を空かせた安藤さんがやって来た。
前傾姿勢で入口からまかないご飯の場となっているテラスに向かってくる安藤さんは、なんだか小さなティラノサウルスのよう。
テーブルに並んだおかずを覗き込む姿も、まるでジュラシックパーク。
「これ辛いか?甘いか?」
買うかどうか、決め手となるおかずの味は二択。
「ワシ辛いのあかんねん!」
そこへ登場したかなよさん。
「あー、安藤さんおるやんー」
笑顔であいさつ。
かなよさんの顔をまじまじと見た安藤さんは、なぜか3秒たってから「わー!ビックリしたー!」と驚く。
(その時差はなんだ?!)
安藤さんはまだまだ若いもんには負けんとばかりに、挨拶がわりの握手の時ぎゅーっと力いっぱい相手の手を握りしめるのが日課。
でもかなよさんには気を使うのか、本気を出さない。
やおら胸のポケットから千円札を数枚取り出してテーブルの上に置く安藤さん。
「おかず買ってくれるの?」
ボクたちの声には耳をかさずにじっとお札を見ている。
(まさか、見せてるだけ…?)
若干の沈黙の後に一枚をボクたちに渡して「これくれ」とおかずを一種類買ってくれた。
(でもそれ、さっき「ちょっと辛い」って言うてたやつやけど、大丈夫?)
帰り際にふうゆちゃんと握手した安藤さんは、「あんた圧力強いなぁ」と感心していた。
(安藤さん、それ圧力ちゃう、握力や!)
今日は日中に釜芸の講座「釜ヶ崎の表現と世間をめぐる研究会」が開催されて、スーツケースに釜ヶ崎の情報や魅力や知恵、その他いろいろを落とし込むというワークショップが行われたばかり。
釜ヶ崎の魅力は、安藤さんのように空気をあまり読まず、自分の欲求に正直で、自分の弱さに赤裸々で、わがままなのに憎めない素直さを持って、しんどい人生をどっこい生きている人たちなんだろうな、と思った夕飯時だった。
(書いた人:テンギョー)
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