2022年6月28日②
今日のココ日(ココルーム日記)
閉店間際、ホットケーキとホットカルピスを頼んで静かにたべていたおじいさん。食べ終わった頃すっと立ち上がって
「最後に5分だけピアノを弾いてもいいですか?」
おじいさんはピアノの前に座って
おもむろにバックの中から封筒を取り出した。さらにその封筒の中から細長い紙が出てきたので、わたしはついつい見入ってしまった。
「これを鍵盤の上においてね、弾いてるんです。5年前から、この方法を使ってピアノを習い始めたんですよ。」
細長い紙には、ド とか レ とかの音階が書いてあって、その紙を鍵盤の上に置くとどこが何の音かわかるようになっていた。
「はじめてのところでピアノを弾く時はこうして弾くんです。」
おじいさんは、封筒から取り出した楽譜を見ながらベートーヴェンの第九をドイツ語で歌ってみせてくれた。一通り歌ったら続いて、ピアノを一音一音、踏みしめるように弾いた。
楽譜にむける真剣な眼差し、鍵盤の押す力、腹からでる声やピンとした背筋に思わず
「おいくつですか?」
と聞いてみると93歳だという。70年前は九州で貨物船の乗組員をしていた とちょこっと話してくれた。
ココルームには、いろんな人がピアノを弾きに来てくれる。料理をしながら、ご飯を食べながら、弾く人の隣で、やっぱり生で聴く音にこころが弾んでたのしい。
書いた人 ふうゆ
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現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています