詩「寂寥の人」

僕が発言する一言ひとことを
君はどんな風に捉えるのだろうか

嬉しい、好き、嫌、辛い、痛いとか
きっと沢山あるのだろう
でも、どれかは分からないし
僕が想像するどれにも当てはまらないかもしれない
読み取ろうにも完璧にはできない

今日の君は
少し嬉しそうだった
ただ、徐々に薄れていく表情と共に
言葉数少なくなっていった

いつの間にか
みんなより先に帰ってしまった君
いつも泣きそうな顔をしているね
どんな想いでこの殺風景な帰り道を歩いたのか
僕には分からない

知りたいよりも先に
君の心の動向に気付きたい
君のためというより
僕の偽善に満ちた善良人の呼び声を
ざっくばらんに粉々したい

想像って難しいんだ
これといった正解はなくて
これと思ったもので相手と向き合う
案外適当なものが良かったり
偶に変な異物にぶつかって
僕が僕自身を傷つけることもある
結構痛くて大人になっても泣いちゃう人もいる

君も傷だらけのように見えて
強かったりするのかな
君は強いですか
それとも弱いですかって聞いたら
微笑んで誤魔化されそうな気がしている

誤魔化しは怖い
本当の本当が
自身の在り処が分からなくなって
帰り道を忘れて
しまいには自分の存在を忘れてしまう
そんな錯覚に陥るから

笑わないでと言うと
きみの表情は一変して
静かに泣き出してしまった
演技なのかリアルなのか
僕も君の本当の本当がわからない迷路に
いざなわれたかのような

君は言葉をたくさん書いて
いっぱい薬を飲んで
足元おぼつかず
僕のほっぺを引っ張って
これが今よと
清々しい微笑みで
消えていった

夢から覚めた僕は
どうしよもなく虚しくなって
心から君の笑顔が見たいと
涙が止まらなかった