夜に嫌なことを思い出すのはなぜ?
A. 寝る準備をする脳のエラー
一日頑張った自分をいたわるために、夜はゆっくりぐっすり眠りたいですよね。でも、なぜか夜になると嫌なことを思い出してしまう…。そうするとなかなか寝付けずに次の日まで疲れが持ち越される。一日の最後が嫌なことを思い出して終わるのはとても嫌。…なのにどうしてこんな風になるのでしょうか?
夜に嫌なことを思い出す理由はいくつか言われていますが、その一つに「脳のエラー」があります。
そのエラーとは「寝る準備をするにはセロトニンを減らす必要があるが、セロトニンが減ると気分が落ち込む。その気分に引きずられて嫌なことを思い出してしまう」というエラーです。少し詳しく解説しますね。
あたりが暗くなってくると、私たちの脳の松果体と呼ばれる部位から「メラトニン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。メラトニンは体内時計に働きかけることで、睡眠をもたらす働きをします。
このメラトニンは「セロトニン」と呼ばれる伝達物質を原料にして作られます。そのため、メラトニンとセロトニンはトレードオフの関係(一方が増えればもう一方は減る)にあるのです。
ここで問題が起きます。「寝るためにメラトニンを増やす必要があるのだが、セロトニンが減ってしまうと憂うつな気持ちになる」という問題です。
実際、うつ病の方の脳を調べてみると、健康的な人に比べてセロトニンの量が少ないことがわかっています。
もちろん、セロトニンが減ってもメラトニンの効果で眠りにつければいいのですが、メラトニンがうまく作用しないとセロトニン減少によるこのマイナスの効果が際立ってしまい、気持ちが沈んでしまうのです。人は気持ちが落ち込むと同じような気持ちになったときの思い出を思い出しやすくなりますから(気分状態依存効果)、嫌なことを思い出してしまうようになります。
これが「夜になると嫌なことを思い出す」メカニズムです。脳は夜になると嫌なことを思い出しやすい状態になっていたのですね。
気になるのは「どうしたら嫌なことを思い出さずに済むのか?」だと思います。
嫌なことを思い出さないようにするための工夫は主に二つです。①日光を浴びる、②寝る前にスマホやPCを使わない、です。よく言われることですが、ここではその理由も併せてお伝えします。
①日光を浴びるのは、日光が目に入ることでセロトニンが作られるからです。たくさんセロトニンが作られていれば、メラトニン生成のために使われたとしてもまだ十分に残量があるかもしれません。
②夜寝る前にスマホやPCを使うと、ブルーライトを浴びることになり、せっかく作ったメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。そうすると「メラトニンも少ないしセロトニンも少ない」といった睡眠には最悪の状態となってしまいます。寝る前のネットサーフィンは楽しいですが、できるだけ控えるのが良さそうです。
以上2つのことを意識して、嫌なことを思い出す前にゆっくりぐっすり眠れるといいですね。