日めくり5分哲学『自由の哲学』を読む 第十三章2
その観点から出発する人は、世界のために最も役立つようになるには、どうすればよいかを示すことができよう。人間は神意を受け、それに従って行動しようとだけしなければならない。神が世界と人類とから何を期待しているのかを知るとき、人は正しい行いができるであろう。そして他人の行った善に自分の善を付け加えることを幸せと感じるであろう。したがって楽観主義の立場からいえば、人生は生きるに値する。人生は共に働く喜びを教えてくれるに違いない。
ショーペンハウアーは問題の本質を別な眼で見ている。彼は宇宙に根拠を与える存在(神)を全能で最高善の存在ではなく、盲目的な意志と衝動である、と考えている。決して充たされることのない満足を求めて永遠に努力することが、すべての意志の基本である。なぜならある努力目標が達成されると、新しい要求がすぐにまた現れてくるからである。満足はいつでも僅かな間しか続かない。私たちの人生のほとんどすべての内容は充たされぬ思いであり、不満足であり、苦悩である。盲目的な衝動が最終的に消えるとき、一切の生活内容も失われ、人生は無限の退屈さに落ち込む。それゆえ比較的な意味で最善なのは,自分の中の願望や要求を押し殺し、意志を殺害することである。ショーペンハウアーの悲観主義の帰結は何もしないことであり、その道徳目標は普遍的怠惰である。
<命題13-2>
第十三章3へつづく
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