『哲学』の散歩道 Vol.8「システム」論Ⅱ
「コントラスト」
毎回、散歩道の道すがら通る小道を定点観測している。
トップを飾る「写真」は、その風景だ。
これから変化する「木々」の姿を楽しむことができるだろう。
さて、今日の天気は、空の青に木々の緑が鮮やかに映えたコントラストが印象的だった。何気なく見ている景色も季節とともにその様相を変える。
人の心模様に写し込まれるそれらの印象は間違いなく「気分」に影響する。
背景と実体を浮き立たせるコントラストが「境界」を生みだす。
ひとつの例として、下の図をご覧いただこう。
実際に円は同じ色だが、左は明るく見え右は暗く見える。
背景により、映し出される「実態」がどのように変化するのか。それらのヒントとなるこころ模様を見ていく。
「場所」とは「主観」の「認識」
前回から「居心地の良い場所」を提案しているが「場所」とは「認識」のことに他ならないことは既に触れた。
そして、この「居心地の良い場所」が「こころの構造」の理解にも役立つ。
まず、私たちは、周囲との境界を設定する。それは、あくまでも主観的に、である。
例えば、周囲や相手を客体として、相手の立場でものを見ることを客観とすると、正確には客体はあるが客観は存在しない。
もし、客観があるとすれば、それは自分自身が半ば勝手に想像したイメージに過ぎない。
例を挙げれば、味覚がある。「いちご」を食べてその味を正確に表現し相手に伝えることは難しい。
香についても同じだ。
たとえば「お互いに」同じものを食べたり嗅いだりすれば、ある程度は感覚の傾向を把握することは可能だろう。
しかし、自分が食べたものを他人が食べて共感できたとしても、その感想は大雑把にならざるを得ない。
せいぜい「酸っぱい」とか「甘い」、あるいは「旨い」など、まったく正確に同じ「味」を表現することは困難だ。
周囲に現れる環境を体現するのは常に「主観」でしかない。
そして、はじめに説明した通り、その「主観」とは本来「居心地の良い場所」そのもののはずだ。
しかしこれは、「コントラスト」によって変化する。
味にまつわる例でいえば、甘いものを食べても、その前に味覚が麻痺するような味の濃いもの、刺激物など摂れば、本来の味わいが分からなくなる。
このような「主観の在り方」を検証していくことで「こころの構造」が見えてくる。
「居心地の良い場所」とは
「良心」に元づく
いわば、この「システム論」は、「なりたい自分になる」という「主観」が目覚めた状態を「見える化」し、なるべくニュートラルな状態で、相手の立場や周囲の見通しを良くする試みである。
周囲の環境と自分の心によって世界の見え方が変わる。これはよく言われることだ。
今日の写真のコントラストと同様である。
深く落ち込んだとき、憂うつで抑うつ的な気分、あるいは単純に不快な感情、そして押しつぶされそうで、張り裂けそうな気持ち、それらは心情的な背景が暗くなることを意味する。
このような陰性感情から、「こころを整理する方法」について学ぶことができる。
賢者になるプロセスには、必ず「暗い夜」があるという。この時期を越え、自分自身の世界がより鮮明に見えてくる。
これが「コントラスト」の妙技なのだろう。ここには、必ず境界がある。
先の図でいえば、背景が暗い時、円がより明るく見える。この円は人間に平等に与えられている「良心」と考えても良い。
デカルトも「方法序説」の初めに「この世で平等に与えられているものがあるとすれば、それは「良心」に他ならない」と述べている。
「暗い夜」から抜け出すために「平等」に与えられている「良心」の存在は極めて意義深い。
その「良心」の場所が、それぞれの人の「居心地の良い場所」を探す手がかりになる。
この「システム論」では、それを「見える化」し「立体モデル」に当てはめていく。
「こころ」の「システム」を紐解く
最近では様々な心のカウンセリングやメンテナンスの方法があるが、先日「億万長者がたどりつく「心」の授業」という本を読んだ。
ここには4つのステップが書かれている。
まず
(1) 自分が苦悩の状態であると気づき、
(2) 深層意識にある心の声にしっかりと耳を傾け、
(3) 悩みの本当の正体を特定し、
(4) 美しい心の状態で、正しい行動を選択していく
これを仏教の「八正道」に当てはめて考えてみることができる。
その感情に気付くこと。=正見
それを思いながら=正思惟
感情の「心の声」を聴くこと=正語
自分中心になっている悩みの事柄について問う=正業
改めて美しい心の状態で本当に自分の使命を問う=正命
そして行動を選択してみる=正精進
さらに、実践の心構えとして、
自分本来の理念を見出し=正念
清らかな心を創る=正定
では、次回このそれぞれを「こころの立体モデル」に映し込んでいく。
システム論Ⅲへつづく
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