1on1で信頼関係を構築する3ステップ
1on1において最初に求められるのはメンバーとの信頼関係です。
信頼関係があってこそ、メンバーは話をする姿勢になります。いきなり成長について問われても困惑しますし、そもそも1対1で話をするという場自体が特にビジネスシーンでは緊張感を生むため、「これから何を言われるのか?」と最初は警戒体制で構えたメンバーも多いかと思います。
何よりも、マネジャーであるあなた自身がメンバーよりも緊張している可能性もあります。マネジャーの緊張感は、メンバーへの無言のプレッシャーのように感じさせてしまう場合があり、メンバーは不安でますます口を閉ざしてしまいます。そうならないためにも、相互が気持ちを緩めリラックスした状態を生む必要があります。信頼関係を構築するための対話は、自分自身もリラックスできるかどうかが重要になります。
更に、信頼関係というのは、一方向の信頼だけを言うのではなく相互に信頼をしていることを指します。この1on1の時間では、相互に信頼を寄せてリラックスして話ができる。そのためにある程度の対等感が必要となります。相互が上下ではなく対等の関係であり、相手を理解し、自分自身を理解してもらうための相互理解の場を作ることが信頼関係を構築する上では何よりも重要となります。
ステップ1.気軽な雑談から
最初は気軽な雑談から入り、少しずつ相手の「感情」や「価値観」に触れる話に話題を移していきます。
レベル1(雑談):「週末は何をしていたんですか?」
レベル2(感情の共有):「週末、楽しかったことは何ですか?」
レベル3(価値観の共有):「週末、楽しかったことは何で、どうしてそう思ったのですか?」
基本は相手に話しをしてもらうことが重要ですが、相互理解の場でもあり、相手が警戒している可能性もありますので先に自分自身の感情や価値観レベルの話しをし、「ここまで話しても大丈夫」という安心材料を提供するのがポイントになります。
心理学の考え方で「返報性の原理」という考えがあります。簡単に言うと「相手は自分が受けたことと同等のお返しをしたくなる」という心理です。自己開示を先にすることで、相手が自己開示しやすくなる。相手に心を開いてもうためにまずは皆さんが先に心を開く必要があります。
ステップ2.動機の源泉を理解する
雑談をベースに相手に自己開示をしてもらえたら、次のフェーズとしては、もう少し相手に踏み込んで、相手の働く上での価値観を聞き出し、「理解」をしましょう。働く上で、メンバーは何を大事にしているのか、相手の本音につながるベースの部分を早い段階で「理解」しておくことが、仕事を進める上でも非常に大事になってきます。
働く上で大事にしていること、動機の源泉になりえること、パフォーマンスが向上するヒントとなること、それらを「内発的動機づけ」と呼びます。「内発的動機づけ」とは内面から湧き起こる興味・関心や意欲のことをいうため、報酬や地位、名誉など、外から与えられる「外発的動機づけ」とは異なります。社会心理学者のエドワード・デシによれば、内発的動機づけには「自律性の欲求」「有能感の欲求」「関係性の欲求」が強く影響するといい、これらが満たされることで、やる気を高め、主体性を生み出すと言われています。「自律性の欲求」「有能感の欲求」「関係性の欲求」をもう少し説明すると
「自律性の欲求」・・・自己の行動を自分自身で決めたいという欲求
「有能感の欲求」・・・能力を発揮し、証明したいという欲求
「関係性の欲求」・・・周囲や社会と友好な関係を持ちたいという欲求
となります。これらは、基本的にはどれも内発的動機を高める上で重要ですが、人によって重要度の優先順位が異なり、強弱があります。なので一概に全部を満たそうとしても、人によっては重要視していないこともあるので、それでやる気や主体性が生まれるわけではありません。個々の優先順位や強弱をきちんと見極め、個々によって対応を変えていくことが大事になっていきます。
※個々の優先順位や強弱を見極めるための「自律性の欲求」「有能感の欲求」「関係性の欲求」を更に細分化した9つの意向はこちらから
このように何が動機の源泉になりえるのか、まずは「理解」し、一人ひとり異なることを前提に接することが信頼関係を構築する上で非常に重要なアプローチと言えます。特に動機の源泉がまだそこまで固まっていない1-2年目の若手社員に対しては、「相手を理解する」ために質問をするだけでも「自分自身を知ろうとしてくれている」と、信頼を寄せるポイントになります。まずは一人ひとりが異なっていること、自分自身とも考え方も思考も違うことを前提として、相手を「理解」しようとする気持ちが大切になります。
ステップ3.環境を整えるために最大限のサポートをする
その上で、今の環境でマネジャーができる最大限のサポートはどのようなものか、率直に意見交換する必要があります。もちろん、全てメンバーの意向に沿えればよいのですが、環境やメンバーの能力値によっては全てを聞き入れるのが難しいこともあるでしょう。そのことを、きちんと丁寧に誠実に伝え、できることとできないことをチューニングすることが何よりも重要だと言えます。
例えば、新入社員で「能力発揮をしたい、自分の強みを活かしたい」という意向の方がいたとして、新人のうちから強みを発揮する仕事をするのはなかなか現実的ではありません。また新人のうちから自分の強みが何かをわかっている方もそれほど多くはありません。そのために、まずは強みを作ることをまずはサポートすることが必要となり、上司としては、仕事を通じてメンバーが何を伸ばせるかを見極め、それを伝えることと、支援することを行う必要があります。
このように、メンバーの意向にそって、今の環境下でできることとできないことを切り分け、できることを支援することでより一層メンバーの意欲もあがっていくでしょう。その上で、メンバーは自分の大事な価値観を共有したことになるのですから、上司自身が自分の価値観を伝えることも必要となります。
相手の自己開示に対して自分も自己開示で答えること。更には自分自身の価値観も理解してもらうことで、ある程度メンバー自身が上司の行動に予測が立てやすくなり、相互理解の欠如によるコミュニケーションエラーを極力減らすことにもつながります。
1on1で組織と個人を仕事と個人をつなぐための1on1ツール:ココラボ(Cocolabo)カルテ・・・本音が見えづらい、主体性が低いメンバーの働く意向を明確化させる診断結果を使った1on1ツールです。診断結果を使ってリーダーとメンバーが共通認識を持ち、理解を深めることでメンバーの主体性を引き出すことにつながります。9つの働く意向というメンバーにとって一番大事な軸を抑えることができれば効率的に育成を行うことにつながります。
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