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伝聞法則6(精神状態に関する発言)

(はじめに)  前回は、米子事件をとりあげ、「あの人はすかんわ」という証言が伝聞か非伝聞かについて検討しました。  今回は、それを踏まえて、精神状態についての発言が伝聞証拠であるかどうかを判断するための考え方を示してみたいと思います。 (よくある説明) 「精神状態を述べる供述は、知覚・記憶という過程を経ずにされるものであるから、反対尋問での吟味の必要がないので、伝聞法則が適用されない(非伝聞証拠である)」  ・・・知覚・記憶という過程を経ないということがそのとおりだとしても

    • 伝聞法則5(あの人はすかんわ)

      (はじめに)  刑事訴訟法を勉強したことがあるなら一度は見たことがあるフレーズ。第1位「風船をやってからでよいではないか」に次ぐ、第2位「あの人はすかんわ。いやらしいことばかりするんだ」についてです。 (米子事件)  問題となる「あの人はすかんわ。いやらしいことばかりするんだ」という証言を取り扱ったのは、昭和30年12月9日の最高裁判決です。 該当すると思われる箇所を引用します。 -----  さらに、第一審判決は、被告人(甲)は「かねてAと情を通じたいとの野心を持つていた

      • 伝聞法則4-2(白鳥事件補足)

        (事例)  私(丙)は、甲さんの家で幹部教育を受けていました。幹部教育には、Aさんもいました。Aさんは、幹部教育の中で、「乙はもう殺してもいい奴だな」と言っていました。 (白鳥事件)  前回のノートで書いたとおり、上記(事例)について、最高裁は、伝聞証拠ではないと判断しました。 このことについて、前回全く検討をしていなかったので補足します。 (発言の意味の検討) 「乙はもう殺してもいい奴だな」という発言(以下「殺してもいい奴発言」と言います。)を証拠として用いる場合、何を

        • 伝聞法則4(内容の真実性2)

          (事例)  甲さんが、乙さんに対して言いました「いま、テレビで報道されている事件の真犯人は、、、私だ!」。この場合、乙さんの「甲さんは自分のことを真犯人だと言っていました」という証言は伝聞証拠か? (要証事実をどうするか?)  すでに何度か言及しました。要証事実によって伝聞証拠かどうか決まるということ。 では、前記(事例)で、要証事実をどのように考えるのがよいでしょうか。 (甲さんが真犯人であること(=「発言内容」))  要証事実を「甲さんが真犯人であること」とすると、乙

          伝聞法則3(内容の真実性1)

          (火星人発言)  Aさんは言いました「私は火星人である。」(以下「火星人発言」といいます。)。その発言をBさんが聞いていました。この場合に、Bさんの「Aさんが『私は火星人である』と言っていました。」という証言は伝聞証拠ではないと説明されます。伝聞証拠ではないとされることについて、要証事実を意識して確認してみます。 前回のノートでは、「要証事実とは、証拠によって証明される事実をいう」と整理しました。火星人発言によって何が証明されうるのでしょうか。 (地球外生命体が存在する?)

          伝聞法則3(内容の真実性1)

          伝聞法則2(要証事実)

          (要証事実の意味・コトバンク)  「要証事実」を検索してみました。  コトバンクというところでは、  「〘名〙 裁判で、当事者の立証を必要とする事実。民事訴訟では、当事者に争いのない事実、公知の事実、法律上推定される事実以外の事実。刑事訴訟では、犯罪構成要件に該当する事実、責任能力、故意・過失、刑の軽重加減の原因となる事実など。」 と書いていました。長いですね。まず、民事訴訟の話は関係ないので、スルーします。  刑事訴訟についての記述は、つまるところ、刑罰権の発動のために証明

          伝聞法則2(要証事実)

          伝聞法則1

          (事例)  Aさんは、公園で休憩していました。甲さんと乙さんが口論しながら、公園にやってきました。Aさんは、甲さんと乙さんのやり取りを眺めていました。そうすると、甲さんが近くにあった棒を使って、乙さんを殴りました。  いろいろあって、甲さんが傷害罪で起訴されました。 (基本的な例)  法廷では、Aさんが証人として、「甲さんが乙さんを殴ったのを見ました」と証言します。  これに対して、甲さんの弁護人は、「本当に甲さんを見たのですか?」「甲さんの服装はどのようなものでしたか?」

          伝聞法則1