ぼくはきのこ。
ぼくはきのこ。
身長5センチ。
はるの太陽の香りと
あきのふかふかな落ち葉のベッドがだいすき。
おともだちは、
かたつむりさんと、
妖精のおんなのこ。
かたつむりさんは
ぼくのあたまの上に登ってよく遊ぶんだ。
たまに、ツルってすべって落っこちそうになると、
ぼくはあたまをぐいって広げて静かに助けてあげる。
妖精のおんなのこは
ぼくがこころをもってることを知らないみたい。
いつもひとりで、ぶつぶつしゃべって、
笑ったり泣いたりいそがしいかんじ。
そんなかたつむりさんと妖精ちゃんが
ぼくはけっこう好きなんだ。
おぼえているときからずっとぼくは
この森で、
てっぺんが見えないくらいおおきな
木のおじいさんに守られて
生きている。
ぼくはあったかい地面の中で足をぬくぬくさせて
この場所から動いたことはいっかいもないよ。
妖精ちゃんが大好きな
たくさんお水があって、広くて青い、海っていうところには、
行ったことがないし、
かたつむりさんが大好きな
みわたすかぎり雲と空が広がっているっていう
お山のてっぺんにも、行ったことはない。
どんなところなんだろうって
たまに想像することはあるけれど、
ぼくは、
ぼくが生きてるこの場所が
けっこう気に入っている。
高さ5センチから見えるこの景色が
けっこう気に入っている。
雨がふる日にはね、
地面に落ちて、ぴちゃんとはねかえる雫が見えるよ。
ぷるぷるで、きらきらしてて
すっごく綺麗なんだ。
晴れの日にはね、
おじいさんの木と、おにいさんの木のあいだから
太陽さんのやさしい光がさして、
森ぜんたいがすっごくいいにおいに包まれるんだ。
風が吹いたら、
あたまのうえに葉っぱさんがおちてきて
ぼくの目をかくしたりしていたずらするけど、
葉っぱさんがにこにこしているからぼくも楽しくなるんだ。
雪のときは
すっごく寒くて、ぼくは凍っちゃうんじゃないかとおもうけど
きらきらした雪の結晶さんがとてもきれいで
これもまたいいって、おもえるんだ。
ちなみにいまのぼくはね、
あと2センチくらい背が伸びたら、うれしいな。
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