ヨーガの教え #5 - 人間の苦しみの原因 Kleshas -
パタンジャリの『ヨーガスートラ』は、ヨーガの哲学と実践についての重要な古典書です。
そこで述べられている「クレシャス(Kleshas)」は、人間の苦しみの根本原因とされています。
これらのクレシャスは心の障害や煩悩として説明され、自己実現や悟りの道を妨げるものとされています。
具体的には以下の5つがあります。
クレシャス(Kleshas)について
1. アヴィディヤ(Avidya)- 無知・無明 -
アヴィディヤは他のすべてのクレシャの根本原因とされます。
実在の本質を誤解し、真理を見誤ることです。
例えば、一時的な快楽を永遠の幸福と錯覚することなどがこれに該当します。
説明
他のすべてのクレシャスの根本原因であり、現実の真の本質についての無知を指します。
この無知は、自己(アートマン)と非自己(アナートマン)を区別することができない状態を生み出します。例
自分を一時的な肉体や感情と同一視し、永遠の魂としての自己を理解しないこと。
2. アスミタ(Asmita- 自我意識)- エゴ -
アスミタは「私はこうである」という強い自己同一化からくるもので、自我の執着を意味します。
このエゴが強いと、他者との比較や競争が生まれ、苦しみの原因となります。
説明
自己同一性の誤った感覚、すなわちエゴ意識を指します。
自分を特定の役割や属性(例えば「私は賢い」「私は美しい」など)に同一視することです例
自分の職業や社会的地位に過剰に依存し、それが失われたときに深い苦しみを感じること。
3. ラガ(Raga)- 執着、欲望 -
ラガは快楽や快適さへの執着を指します。
これにより、人は常に望むものを追い求め、不満が募ります。
得られない欲望が苦しみを生みます。
説明
快楽や心地よい経験に対する執着を指します。
この執着は、一度得た快楽を繰り返し求める欲望を生み出します例
快楽をもたらす物質的なものや経験に依存し、それが手に入らないときに苦しむこと。
4. ドヴェーシャ(Dvesha) - 嫌悪、憎しみ -
ドヴェーシャは嫌悪感や憎しみといった感情を指します。
これにより、人は嫌いなものや状況から逃れようとし、さらなる苦しみを生みます。
説明
不快な経験や苦痛に対する嫌悪を指します。
この嫌悪は、それらの経験を避けるために過剰な努力をすることを引き起こします。例
嫌いな人や状況を避けるために誇張された行動を取ること。
5. アビニヴェーシャ(Abhinivesha)- 生存本能、死の恐怖 -
アビニヴェーシャは死への恐怖や生存への執着を指します。
これは生き物としての本能的な恐怖であり、しばしば無意識に存在します。
この恐怖が人を不安定にし、苦しみを生じさせます。
説明
死や存在の終わりに対する根深い恐れを指します。
この恐れは自己保存本能に基づいており、非常に強力です。例
老化や病気に対する過度な不安、死に対する恐怖から生じる苦しみ。
これらのクレシャスは互いに関連し合い、心の平穏と悟りを妨げる要因となります。
ヨーガの実践を通じてこれらのクレシャスは徐々に克服することができるとされています。
そして、無知(アヴィディヤ)を克服し、真の自己認識を得ることが、他のクレシャスをも解消する鍵となります。
ヨーガの道は、これらの障害を一つ一つ取り除き、最終的には心の平安と解放(モクシャ)を達成するためのものです。
ここで、人生の最終目的であるモクシャについてもお話ししたいと思います。
プルシャールタ(Purushartha)について
ヴェーダ聖典において説かれている Purushartha(プルシャールタ)は、人生の4つの目的を表しています。
これらの目的は、人間がバランスの取れた充実した人生を送るための指針として、古代インドの哲学と宗教において非常に重要な位置を占めています。
以下にそれぞれの目的について詳しく説明します。
1. Dharma(ダルマ)
家族や社会、さらには宇宙全体に対して調和を保つための行動規範を意味します。
意味
正義、道徳、義務詳細
Dharmaは、個人の義務や道徳的な行動を指します。
社会的な役割や責任を果たすこと、そして倫理的・道徳的な生活を送ることが強調されます。
Dharmaを実践することによって、個人とコミュニティが共に繁栄し、調和を保つことができます。
2. Artha(アルタ)
生活の基盤を支えるための財産や資源、そして繁栄を追求することが含まれます。
意味
富、繁栄、物質的な成功詳細
Arthaは、個人の物質的な幸福や経済的な安定を指します。
ヴェーダの教えでは、物質的な成功や富を追求することは、自己と家族の安定と幸福を確保するために重要とされています。
ただし、これらはDharmaに基づいた正当な手段で追求されるべきです。
3. Kama(カーマ)
美食、芸術、音楽、愛、友情など、人生の楽しみや快楽を追求することが含まれます。
意味
欲望、愛、感情的な満足詳細
Kamaは、感覚的な喜びや愛情、感情の満足を指します。
Kamaは、適切に管理され、他の目的とバランスを取ることで、人生に豊かさと喜びをもたらすものとされています。
4. Moksha(モクシャ)
輪廻(生まれ変わり)のサイクルから解放され、真の自己認識や悟りを得ることを意味します。
意味
解脱、解放、精神的自由詳細
Moksha は、最終的な解放や精神的自由を指します。
Mokshaは精神的な追求の最終目標であり、永遠の幸福と平和を見つけることが目的です。
この解放は、自己の本質を理解し、物質的な執着を超越することで達成されます。
全体のバランス
これら4つの目的は相互に関連し、バランスを取ることが重要です。
Dharmaに基づいてArthaを追求し、Kamaを楽しみつつも、最終的にはMokshaを目指すという全体的なバランスが理想とされます。
このバランスが取れた人生を送ることで、個人は真の幸福と調和を達成することができるとされています。
これらのPurusharthaの教えは、ヴェーダ聖典だけでなく、後のインド哲学や宗教においても重要な概念として受け継がれています。
いかがでしたか?
人生の苦しみを乗り越えながら、人生の目的をあゆんでいきたいたいですね!
最終的な目的であるモクシャに今世たどり着けるように精進していきます。
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