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地域限定保育士の全国拡大は保育士不足を解消できるか?

地域限定保育士」全国に拡大へ 法改正で人手不足緩和

政府は特定の地域に限って勤務を認める「地域限定保育士」を全国に拡大する。現在の対象は国家戦略特区の指定を受ける自治体に限定している。2024年にも児童福祉法を改正し、全国で生じる保育士不足の緩和につなげる。

日本経済新聞 (2023/9/19)

9月19日の日本経済新聞の一面に、地域限定保育士の全国拡大の記事が掲載されました。全国的な保育士不足を解消するために、現在の「保育士試験」の課題と「地域限定保育士」を有効的に活用する方法を考えていきます。


地域限定保育士とは?

保育士試験に合格をして登録後、3年間は、試験を受験した地域でのみ働くことができる保育士。4年目以降は全国での勤務が可能。 国家戦略特区の指定を受ける自治体に限定しており、現在、神奈川県、大阪府、沖縄県が実施している。
受験内容は、通常試験が「筆記試験+実技2科目」のところ、地域限定保育士の試験は「筆記試験+実技講習」になる。

「神奈川方式」と「大阪・沖縄方式」の違い

地域限定保育士の試験を行っている3つ自治体のうち、神奈川県だけは、通常試験とは、別の日程で試験を行っています。ですから、通常試験と合わせて年に3回試験を受けることができます。
大阪府と沖縄県では、「通常試験」と「地域限定試験」を選んで受験するため、その他の地域と同様に年に2回の試験になります。

保育士試験の課題①合格率

全国統一の保育士試験であろうと、地域限定の保育士試験であろうと、一次試験は9科目の、幅の広い試験であることには違いありません。

新聞の記事には、二次試験が「講習のみ」になるため、合格率が上がるとありましたが、そもそも二次試験の合格率は高く、しっかり準備をしておけば、それほど難しい試験と言えるものでありません。

課題は、一次試験の合格率の低さです。保育士試験の合格率は20%台と低く、試験が年2回になる前は、10%台とさらに低かったのです。 

保育士試験の課題②試験会場

卒業と同時に保育士資格を取得することができる保育指定養成校は、全国に650校ほどあります。しかし、保育士試験の試験会場は、70か所程度しかありません。

東京都、神奈川県、北海道は、5か所以上で試験を行いますが、多くの都道府県は、1か所のみでの開催になります。遠方から受験になると、場合によっては宿泊しての受験になります。

地域限定保育士が保育士不足を解消するための条件

地域限定保育士の試験を行うだけでは、受験者は増えません。

①受験者を増やすこと

まだまだ、保育士試験の存在を知らない人は多くいます(養成校に行かないと保育士になれないと思っている)。また、保育士の給与は全国一律に低いと誤解をされています。一般職より待遇の地域や待遇の良い保育施設も多くあります。

まずは、保育士試験の認知を高めること。そして、待遇の良い地域は、保育士が大切にされていることを伝え、保育士の社会的地位を回復する広報活動に力を入れることが必要です。

また、試験会場が遠いことが理由で受験をあきらめる方もいます。受験料だけでなく、その他、多くのコストが負担を増やしています。

  1. 広報活動を行う

  2. 試験会場を増やす

②合格者数を増やすこと

試験の難易度を下げるわけにはいきませんので、合格者を増やすには、しっかり勉強するしかありません(笑)。合格率が変わらないのであれば、受験者を増やすことで合格者の総数を増やすことができます。

  1. しっかり勉強して合格率を上げる 

  2. 受験者を増やす(①と同様)

③合格後の就業者数を増やすこと

受験者を増やしても、合格者を増やしても最終的に、就業者を増やさなければ意味がありません。できれば、合格後すぐに保育士として働いてもらいたいというのが本音だと思います。

そのためには、就労を前提とした受験者を優遇することが必要です。そのような支援を行っている自治体も多くあります。

  1. 就労前提の受験者への補助

  2. 資格取得を支援する保育施設への補助

まとめ

通常試験を3回に増やすという手段もありますが、地域により人材の需要は異なるため、試験回数や会場を調整できる「地域限定保育士」の全国拡大は、保育士になる機会を増やすことに直結する期待できる取り組みです。

しかし、やり方次第では、あまり効果が出かなったり、さらに効果を上げることができます。

AIやITの技術は、業務を軽減させることはできるかもしれませんが、配置基準を緩和することはできません。地域での保育の担い手を増やすことを重点的に行わなければなりません。

地域の保育の担い手を増やしていくことは、長期的には、地域存続のカギにもなっていく、それくらい重要な課題であると考えています。


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