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みならい天使リル
昔々、
雲の上に広がる天界には、
たくさんの天使たちが住んでいました。
その中に、一人の小さな見習い天使がいました。
名前はリル。
リルはまだ翼が小さく、
飛ぶのがあまり得意ではありませんでした。
ある日、
リルは師匠の天使から「人々を見守る仕事」を
任されました。大きな雲の端に立ち、
地上を見下ろしていると、
ふと、青く輝く湖が目に入りました。
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「どんなところなんだろう?」
好奇心に駆られたリルは、雲の端に近づきすぎてしまい、
バランスを崩してしまいました。
「わぁぁぁぁ!」
リルはくるくると回りながら、空から落ちていきました。
ふわふわの雲を突き抜け、冷たい風を感じながら、
やがて湖のそばの草むらに落ちました。
「いたた……。」
目を開けると、そこには優しそうな少女が立っていました。
「大丈夫?」
少女の名前はマリア。
彼女は森のそばにある村に住んでいました。
リルは羽をばたばたさせて起き上がり、
「天使であることを知られてはいけない!」と焦りました。
でも、マリアはリルの背中の小さな羽を見て、
にっこり笑いました。
「もしかして、天使?」
リルは驚きましたが、嘘をつくことができず、
小さく頷きました。
「すごい!初めて会ったよ!」
マリアは目を輝かせました。
リルは飛ぶ力を失ってしまったので、
しばらくマリアと一緒に村で過ごすことになりました。
マリアはリルに人間の世界のことを
たくさん教えてくれました。
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ある日、
村に大きな嵐がやってきました。
強い風が家々を揺らし、
湖の水があふれそうになっていました。
リルは「このままでは村が危ない!」と思い、
力を振り絞りました。
「お願い、もう一度飛ばせて!」
リルの背中の羽が光り輝き、
ふわりと体が浮かび上がりました。
天に向かって舞い上がると、雲を操って風を鎮め、
湖の水を静かにしました。
嵐が去ると、村人たちは歓声を上げました。
マリアも嬉しそうに手を振りました。
そのとき、リルの前に師匠の天使が現れました。
「よく頑張ったね、リル。お前は立派な天使になったよ。」
リルはにっこり笑いました。
でも、マリアとの別れが寂しくて、
少しだけ涙をこぼしました。
「また会える?」
「うん。いつでも空から見守っているよ!」
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リルは大きく羽ばたき、天へと帰っていきました。
それからもリルは、見習い天使ではなく、
一人前の天使として、地上の人々を見守り続けたのでした。
おしまい。
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