点から線へ
授業時間、課題が終わった後のご褒美タイム、校庭で6人くらいの子どもたちが楽しそうにドッジボールをしています。
授業時間に10分程度とはいえど校庭に出てくることに賛否両論はあるかもしれませんが、
私は監督兼球拾いをしながら、その姿を(やっとここまできたなー。)と、微笑ましく見ています。
1年前
私が支援級担任となった1年前は違いました。
中心人物のうちの1人は、その前年、いなくなることや危険な行動があったため、常に介助員さんがついていました。
1人は、授業時間に1人で勝手にビオトープや校外に出て虫採りをしていました。
1人は、学校のあちこちに武器を隠しもち、トラブルが絶えず、一方で保健室によく行っていました。
1人は都合よく理由をつけては支援級と交流級を行ったり来たりし、1人は友達の言いなりになって言いたいことを言えず、時々拗ねていました。
一人ひとりがバラバラだったり、歪んだ関係だったりするのを感じました。
支援級にいる仲間だからこそ、対等な、良い関係を築いてほしいなと思いました。
つながるために
そんな支援級の担任になって、私は、「ちゃんと交渉し合うこと」を心がけました。
子どもたちの希望に可能な限り寄り添い、その代わり、ちゃんと私の了解を得ることを徹底しました。
職員にも説明をし、子どもたちの自分勝手な行動を防ぐために、「合法的に」やりたいことをやらせる許可を得ました。
学習に向かう姿勢をつくるために学習課題を明確にし、終わったらご褒美タイムという流れを作りました。何も言わなくてもサッと学習に向かえるようになりました。
ご褒美タイムの進化
ご褒美タイムは、職員とのオセロや個人のブロック遊びから始まり、チェス、卓球と移り変わりました。
その過程で、だんだん子ども同士の関わりが増えました。
3人での秘密基地作りに熱中した時もありました。
その後、ウノ、ドッヂビー、段ボールハウス、LaQと移り変わり、昨年度末からはドッジボールに熱中しています。
今年度に入ってクラス替えをした後は更に輪が広がり、下級生にも声をかけ、「特訓」と銘打って、投げ方や取り方を教える姿が見られるようになりました。
やりたいことのために
安全面への配慮と他の職員の理解を得るために、「外に出る時は必ず先生か介助員さんがつく」という約束になっています。
そのため、自分の学習課題が終わっても、大人がつける状況になっていないとドッジボールはできないので、そこも工夫が必要になります。
ドッジボールが楽しい、友だちともっとやりたい、という思いが強くなったので、それを実現するために、一緒に行ける先生を求めて私以外の先生にも交渉に行くようになりました。
誰もいないと、
「先生はどうしたら行ける?」
と私に聞きます。
「みんなの勉強が終わったらね。」
というと、
「○○さんに勉強教えようか?」
と下級生の学習を助けるようになりました。
一人ぼっちで虫を追いかけていた、大人に言っても無駄だとどこかで諦めていたようなあの姿から、大きく成長しました。
そうしてつながった
ドッジボール自体も、最初の頃はケンカも多々ありました。
負けたのが悔しくて友だちを罵ったり、友だちを煽ってケンカになったり、自分ルールを押し付けたりしていました。
でも、だんだん楽しく遊べるようになりました。
今までやりたいって言えなかった子も「やりたい!」と外に飛び出すようになり、
みんなでやりたい気持ちがいっぱいで、失敗した子を励ましたり、苦手なところをフォローしたり、ボールを譲ったりする姿も多々見られるようになりました。
教えてあげた下級生が上達したことを嬉しそうに報告にくるようになりました。
上級生に教えてもらってできた!と嬉しそうに報告してくるようになりました。
退屈すると取っ組み合いのケンカをして、私も常に気が抜けず、傷だらけになりながら止めていた去年とは違います。
今は、ほとんど、球拾いをしながらニコニコ子どもたちを眺めています。
個々の点だった子どもたちが線につながったな、と私は嬉しく感じています。