亀って尊い
飼い主は、亀が好きだ。愛亀と出会うまで、亀という生き物をペットにする発想がなかったくらいの人間が、魑魅魍魎の亀グッズを集めることに情熱を傾けている。木彫りの亀を2,500円で買ってしまうほど、亀を愛している。
そんな亀の魅力を知ってほしい。
愛亀は、カブトニオイガメという種類で、ニオイガメの中では最大種。ニオイガメというネーミングの通り、危険を察知すると、くさ~い臭いを出して敵を追い払うのだが、飼育下では、ほとんど臭わない。
カブトニオイガメは、最大甲長15センチほどで、90センチ水槽で生涯飼育が出来る。大きくなり過ぎないので、ペットに向いている一方で、他の種類に比べると警戒心が強くて、狂暴な亀って言われている。
ちなみに、ミシシッピアカミミガメ(通称ミドリガメ)は、とても頭が良くて、飼い主を見分けて後追いしたり、頭を撫でられに来る子もいるらしい。愛は地球を救う。
愛亀は、怒って威嚇することもないし、水温計を噛むこともない。嫌だと言えば、違うご飯が降り注ぐ環境で、甘やかされながら生きている。カブトニオイガメは、黒目がちな瞳に、豚みたいな鼻で、亀の中でも特に可愛い顔をしている。愛亀は、その中でも群を抜いて可愛い。言うなれば、カブトニオイガメ界の鈴木えみ。
ただ最近、下顎の成長が止まらず、もはや口が閉まっていない。その隙間に爪を引っ掻けてどうぞ口を開けて下さいと言わんばかりなので、遠慮なく下顎をパカっと開けてみる。愛亀、無関心。
ここまでのシャクレニオイガメは見たことがない。動物病院に連れて行こうか悩ましい。
シャクレていようがいまいが、愛亀は、結構頭が良い。水替えのときに使う水色のゴム手袋を見ると、すかさず、左手でシッシッと振り払う。決して威嚇はしない、シッシッだ。これで安全を確保したつもりなら、愛おしさ極まりない。本家ミシシッピ川だったら、君はもうワニの腹の中だよ。
台風一過のあと、急に気温が下がり、水温も低下している。水槽の中でしかう〇ちをしなかった愛亀が、タオルに包まれながら、う〇ちまみれになったいる姿を見ると、どうやら下痢らしい。ついに、水槽用ヒーターを買う時期が来たようです。
成長に伴って、だんだん、愛亀は親離れをしている。ブランケットの中で寝ることはなくなって、ごちそうスティックが欲しいときしか、飼い主を見つめてはくれない。
仕方ないので、飼い主への愛を、愛亀が言ってる風に、飼い主が呟いて満足することにした。完全セルフサービスで。
愛亀「ママダイスキ」
飼い主「ママも大好きよ」
愛亀「アイラブユー」
飼い主「アイラブユートゥー」
愛亀「ママイッテラッシャイ」
飼い主「稼いできます」
愛亀への愛情は、やがて飼い主を公園の池へと導いた。公園の池に住んでいる亀のほとんどが、ミシシッピアカミミガメで、みんな、元々は飼育下にいたはずなのに。
公園を訪れるファミリーがパンやビスケットを投げてくれるから、人間が飼い続けるよりも幸せだと、今も自分に言い聞かせているだろう。
「飼えない」にも色んな種類がある。残された寿命が短いのと、水替えが面倒くさいのとでは、全然違う。自然界に放流されなくて良かったと思うべきかもしれない。
公園の亀たちには、贅沢な愛亀があまり好まないご飯を食べてもらっている。喜んで食べる姿にいつも元気をもらう。今日も、生きててくれてありがとう。
今週も、公園のお友達がみんな元気だったよって、愛亀に報告できるといい。