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【シワ改善有効成分5種を徹底解説】あなたにぴったりのシワ改善成分はどれ?
こんにちは!元化粧品開発者のななです。
年齢を重ねるごとに気になってくる目元や口もとのシワ…。
私も最近、目元のシワが気になりはじめ、本格的にシワケアを始めようと思っているところです。
過去にCOCO.libraryでは以下の記事で、シワができるメカニズムとその対策方法について解説しました。
今回はその続編として、医薬部外品の「シワ改善」有効成分のメカニズムとそれぞれの特徴について詳しく解説します。
シワ改善有効成分のおすすめの選び方も紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね!
シワ改善有効成分のアプローチポイント
それぞれの有効成分について詳しく解説する前に、まずはシワ改善有効成分の主なアプローチポイントについてご説明します。
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① 角層水分量の低下
加齢や紫外線などの影響で肌が乾燥し、角層の水分量が低下すると、肌の柔軟性が低下し、ゴワついて硬くなります。
肌が硬い状態で表情をつくると、一時的にシワができます。さらにそのままケアせずに放置すると、表情ジワが定着して、乾燥小ジワの原因になります。
② セラミドの減少
セラミドは主に角層の細胞間脂質に存在し、肌のバリア機能維持や水分保持に関わる重要な成分です。加齢や紫外線などの影響でセラミドが減少すると、バリア機能や角層水分量が低下し、肌荒れや乾燥小ジワの原因になります。
③ 表皮ヒアルロン酸の減少
ヒアルロン酸は肌の表皮や真皮に存在し、水分保持や弾力性の維持などに関わる天然の保湿成分です。
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加齢などにより表皮のヒアルロン酸が減少すると、肌のうるおいや柔軟性が低下し、乾燥小ジワや表皮性のシワの原因になります。
④ 基底膜の分解
基底膜は、表皮と真皮の間に存在し、健やかな肌を保つための土台となる組織です。
基底膜には「表皮と真皮をつなぎとめる」「表皮と真皮の間のコミュニケーション(栄養物や老廃物の移動、情報の伝達など)に関与する」「表皮幹細胞を安定化する」といった役割があり、これらが正常に維持されることで健康な肌が保たれています。
基底膜へのダメージは年齢とともに進行し、紫外線により急激に上昇します。
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加齢や紫外線によって基底膜がダメージを受けると、真皮のコラーゲンが減少して、シミやシワなどの肌老化につながります。また、表皮幹細胞(表皮細胞を生み出す細胞)の働きが阻害されて、健やかな表皮が作られなくなり、肌のうるおいやバリア機能も低下します。
⑤ 真皮コラーゲンの減少
年齢を重ねると肌のターンオーバーが遅くなり、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など、真皮の構成成分が減少します。
これにより肌のハリや弾力が低下し、真皮性の深いシワにつながります。
また、紫外線による「光老化」も深いシワができる原因の一つです。紫外線によってコラーゲンやエラスチンの分解・変性が起こると、肌のハリや弾力が低下して、深いシワができやすくなります。
シワ改善有効成分5種の作用メカニズム
現在、医薬部外品の「シワ改善」有効成分として認められている成分は、ニールワン、純粋レチノール、ナイアシンアミド、VEP-M、ライスパワーNo.11+の5種類です。
ここからは、上記①~⑤のアプローチポイントをもとに、5種の有効成分の作用メカニズムについて解説します。
ニールワン
ニールワンは、2016年に史上初めて「シワを改善する」医薬部外品として承認された、ポーラ・オルビスグループ独自のシワ改善有効成分です。
表示名称は「三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸Na」
長すぎて覚えられませんね(笑)
ニールワンは、主に「⑤ 真皮コラーゲンの減少」にアプローチします。
ポーラは、好中球と呼ばれる白血球の一種が、紫外線などの小さな炎症をキズと勘違いして「好中球エラスターゼ」と呼ばれる酵素を過剰放出し、コラーゲンなどの真皮成分を分解することが、シワの原因のひとつであることを発見しました。
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https://www.works-i.com/works/series/seikou/detail017.htmlより引用
ニールワンは、コラーゲンを分解する好中球エラスターゼの働きを抑えることで、シワの原因となるコラーゲン線維の分解を防ぎ、肌のハリ・弾力を高めてシワを改善します。
純粋レチノール
資生堂の「純粋レチノール(表示名称:レチノール)」は、レチノール類で唯一、シワ改善有効成分として承認されています。
レチノールは主に「① 角層水分量の低下」「③ 表皮ヒアルロン酸の減少」「⑤ 真皮コラーゲンの減少」にアプローチします。
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レチノールには肌のターンオーバーを促進する作用があり、肌自身が、年齢とともに減少するヒアルロン酸やコラーゲンを積極的に生み出すようになります。
表皮のヒアルロン酸産生を促進することによって、肌の水分量が増えて、柔軟性がアップするだけでなく、真皮のコラーゲン産生を促進することによって、肌にハリや弾力を与えてシワを改善します。
レチノールやレチノール誘導体の肌への効果については、こちらの記事も参考にしてください。
ナイアシンアミド
ナイアシンアミドはビタミンB3とも呼ばれる水溶性ビタミンの一種です。「シワ改善」だけでなく、「美白(シミ予防)」の有効成分としても知られています。
ナイアシンアミドは主に「① 角層水分量の低下」「② セラミドの減少」「⑤ 真皮コラーゲンの減少」にアプローチします。
ナイアシンアミドは真皮のコラーゲン合成を促進することによってシワを改善します。
さらに表皮におけるセラミド合成を促進することによって、角層水分量が上昇し、肌のバリア機能も改善します。
また、メラニン移送阻害による美白(シミ予防)作用や、抗酸化作用、抗炎症作用も知られており、マルチな効果が期待できる成分です。
VEP-M
VEP-M(医薬部外品表示名称:dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM)は「安定化ビタミンE誘導体」とも呼ばれ、高い抗酸化作用を持つことで知られるビタミンEの、安定性と水溶性を高めた成分です。2021年に日本メナード化粧品がシワ改善有効成分として承認を取得しました。
VEP-Mは肌の中でビタミンEに変換され、「① 角層水分量の低下」「② セラミドの減少」「③ 表皮ヒアルロン酸の減少」と「⑤ 真皮コラーゲンの減少」にアプローチします。
VEP-Mは表皮においてセラミドやヒアルロン酸の産生を促進し、肌の水分量を上げて、柔軟性を高めることによって、表皮性のシワを改善します。
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さらに最近の研究で、紫外線や活性酸素により表皮で発生するGM-CSFという物質の発生を抑制することによって、真皮におけるコラーゲンの分解を抑えてシワを改善する、真皮へのアプローチも確認されています。
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日本メナード化粧品、安定化ビタミンE誘導体『VEP-M』がコラーゲンの減少を防ぐことを発見 ⁶⁾より引用
ライスパワーNO.11+
ライスパワーエキスは創業170年を超える老舗酒造である「勇心酒造」が独自の発酵技術により開発した米由来の機能性成分です。
中でも「ライスパワーNo.11+」は医薬部外品の有効成分として「シワ改善」と「⽪膚⽔分保持能の改善」の2つの改善効果が認められています。
ライスパワーNo.11+は「① 角層水分量の低下」「② セラミドの減少」「③ 表皮ヒアルロン酸の減少」「④ 基底膜の分解」「⑤ 真皮コラーゲンの減少」のすべてにアプローチします。
・表皮へのアプローチ
表皮⾓化細胞を活性化し、NMF・細胞間脂質(セラミド)・表⽪ヒアルロン酸を増加させて、肌の水分量と柔軟性を高めることにより、表⽪性のシワを改善します。
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ライスパワーNo.11+【シワ改善、⽪膚⽔分保持能改善剤】⁸⁾より引用
・基底膜へのアプローチ
基底膜成分の破壊や減少は加齢によっても進⾏しますが、主な原因は紫外線や乾燥などの外部刺激です。
紫外線などの外部刺激によって基底膜が分解される要因の1つが、MMP-2と呼ばれるタンパク質分解酵素です。
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ライスパワーNo.11+【シワ改善、⽪膚⽔分保持能改善剤】⁸⁾より引用
ライスパワーNo.11+は、紫外線などの刺激により肌内部で発生するMMP-2の活性を抑制することによって、基底膜を構成する主成分であるコラーゲンの量を増やしてシワを改善します。
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ライスパワーNo.11+【シワ改善、⽪膚⽔分保持能改善剤】⁸⁾より引用
・真皮へのアプローチ
ライスパワーNo.11+は、真⽪線維芽細胞に働きかけてコラーゲンの合成を促進し、真皮コラーゲンを増加させることによって、真⽪性のシワを改善します。
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ライスパワーNo.11+【シワ改善、⽪膚⽔分保持能改善剤】⁸⁾より引用
さらに、健やかな表皮を保ち、シワにつながる刺激に対する防御⼒を⾼めることによって、紫外線や乾燥などの刺激によって発⽣する炎症性サイトカイン等による真⽪の破壊を抑えることが⽰唆されています。
シワ改善有効成分 おすすめの選び方
ここからは、シワ改善有効成分のおすすめの選び方をご紹介します。
まず、ナイアシンアミド以外の成分については、メーカーの独自成分なので、配合できるブランドに限りがあります。
それに対して、ナイアシンアミドは水に溶けやすいため扱いやすく、原料自体も比較的安価なので、ドラッグストアで買えるリーズナブルな製品を含め、たくさんの製品に配合されています。
さらに、シミ予防(美白)有効成分としても承認されており、マルチな効果を持つ成分なので、「まずは気軽にリーズナブルな製品でシワケアをスタートしてみたい」「シミもシワも同時にケアしたい」という方にはナイアシンアミドがおすすめです。
<ナイアシンアミド>
おすすめの方
気軽に買えるリーズナブルな製品でシワをケアしたい方、シミもシワも同時にケアしたい方
レチノールは最近のトレンド成分であり、たくさんのメーカーから発売されていますが、レチノール類で医薬部外品のシワ改善有効成分として承認されているのは資生堂の「純粋レチノール」だけ。薬機法上、レチノールのシワ改善効果を製品説明や広告などに記載できるのは、資生堂製品だけです。
医薬部外品でないと効果がないというわけではありませんが、医薬部外品には厚生労働省の承認が必要なので、製品の品質・有効性・安全性について一定の基準をクリアしています。
また、レチノールは光や酸素などによって分解されやすい不安定な成分なので、処方や容器などに安定性を保つための工夫が必要です。その点、医薬部外品は長期保存試験(長期保存しても既定の有効成分濃度を下回らないことなどを確認する試験)もクリアしているため安心です。
効果があるレチノール製品を選ぶには見極めが必要なので、レチノール製品を使ってみたいけど何を選べばいいのかわからないという方は医薬部外品の純粋レチノール製品を選ぶのがおすすめです。
化粧品と医薬部外品の違いについては、こちらの記事も参照してください。
レチノールは美容効果が高い反面、A反応と呼ばれる副反応(赤み・かゆみ・皮むけなど)が起こる場合があるため、敏感肌の方や過去にレチノールで肌荒れしたことがある方は注意が必要です。
<純粋レチノール>
おすすめの方
レチノール製品を使ってみたいけど何を選べばいいのかわからない方
注意が必要な方
敏感肌の方、過去にレチノールで肌荒れしたことがある方
ニールワンは2025年2月現在、ポーラの「リンクルショット」か、ポーラグループのメディカルコスメブランド「Dive(ダイヴ)」にしか配合されていません。
ポーラ製品が好きで、高価でもしっかり研究されたエビデンスのある製品を選びたいという方にはおすすめです。
また、顔のたるみを対象としたHIFU施術に対して、ニールワン配合製剤を併用すると、HIFU施術単独よりも皮膚のたるみ改善効果が高まり、たるみの早期戻りも抑制できるという報告もあるので、美容医療と組み合わせて使いたいという方にもおすすめです。⁹⁾
<ニールワン>
おすすめの方
ポーラ製品が好きで、しっかり研究されたエビデンスのある製品を選びたい、美容医療と併用して効果を高めたい方
おすすめしない方
リーズナブルにシワケアしたい方
VEP-Mは2025年2月現在、おそらく日本メナードのシワ改善美容液「薬用ラインズリセット」にしか配合されていません。
製品の選択肢は少ないですが、医薬部外品の効能効果として「シワ改善」だけでなく「メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ」「肌荒れ、荒れ性」の効果も認められているので、日本メナードの製品が好きで、ビタミンEの抗酸化作用によるマルチな効果を試してみたい方にはおすすめです。⁷⁾
<VEP-M>
おすすめの方
日本メナードの製品が好きで、ビタミンEの抗酸化作用によるマルチな効果を試してみたい方
おすすめしない方
リーズナブルにシワケアしたい方
ライスパワーNO.11+は勇心酒造が開発した成分で、「ライース」などの勇心酒造のオリジナルブランドに配合されていますが、KOSEの「セラムシールド」など、一部の他社ブランドにも配合されています。
ドラッグストアで購入できる製品もあるので、ナイアシンアミドの次に選択肢が多く、気軽に試しやすい成分だと思います。
ライスパワーNO.11+には、肌本来が持つ水分を保つ力(水分保持能)を改善する効果も認められているので、一時的な保湿力だけでなく、肌自体がうるおいを作り出す力を改善したい乾燥肌の方には特におすすめです。
似た名前の「ライスパワーNO.11」にはシワ改善効果は認められておらず、水分保持能改善効果のみなので、「+」の有無をよく確認して、間違えないように注意してください。
<ライスパワーNO.11+>
おすすめの方
シワ改善だけでなく、水分保持能も改善したい乾燥肌の方
まとめ
シワ改善有効成分のメカニズムとおすすめの選び方を表にまとめました。
こちらを参考に、あなたにぴったりのシワケア製品を探してみてください!
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【参考文献】
1)ヒアルロン酸と資生堂独自の「浸透技術」, 2025年1月31日アクセス
2)「シワを改善する」と明言できるまで15年挫折と苦闘の開発の軌跡
,リクルートワークス研究所,2018年02月10日,2025年1月31日アクセス
3)資生堂 スキンエイジングラボ 「純粋レチノール」の働き, 2025年1月31日アクセス
4)ナイアシンアミドの基本情報・配合目的・安全性,化粧品成分オンライン,2025年1月31日アクセス
5)日本メナード化粧品、“シワを改善する”安定化ビタミンE誘導体で医薬部外品の新規有効成分としての承認を取得!, 日本メナード化粧品ニュースリリース,2025年1月31日アクセス
6)日本メナード化粧品、安定化ビタミンE誘導体『VEP-M』がコラーゲンの減少を防ぐことを発見,PR TIMES,2023年5月16日,2025年1月31日アクセス
7)日本メナード 日本初! 有効成分VEP ーMを配合したシワ改善美容液「薬用ラインズリセット〈医薬部外品〉」を発売,PR TIMES,2023年8月21日,2025年1月31日アクセス
8)ライスパワーNo.11+【シワ改善、⽪膚⽔分保持能改善剤】,ライスパワー研究所,2025年1月31日アクセス
9)美容医療施術とニールワン®配合製剤の複合ケアで安全性と有効性を実証,PR TIMES,2024年5月15日,2025年1月31日アクセス