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化粧品は医薬部外品と違って効果がないって本当?【化粧品開発者だから語れる裏側、こっそり教えます】

みなさんは化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)の違いを正しく理解できていますか?
なんとなくのイメージで「化粧品より医薬部外品のほうが効果が高い」と思っている方も多いのではないでしょうか?

今回は法律上の化粧品と医薬部外品の違いから、化粧品と医薬部外品にまつわるウワサの真相、化粧品開発者だから語れる裏側まで、詳しくお話しします。

化粧品と医薬部外品、それぞれの特徴や良さを知って、製品選びに役立てていただけたら嬉しいです。


化粧品と医薬部外品(薬用化粧品):薬機法による分類

薬機法*上、化粧品は「化粧品」と「薬用化粧品」に分類されます。
「化粧品」は製品全体として、肌の保湿や清浄などの緩やかな効果が期待されています。
一方、「薬用化粧品」は化粧品としての緩やかな効果に加えて、「肌あれ・にきびを防ぐ」「紫外線によるシミ・そばかすを防ぐ」「シワ改善」などの効果を持つ「有効成分」が配合され、厚生労働大臣の承認が必要な「医薬部外品」に分類されます。

「化粧品」「医薬部外品」「医薬品」は薬機法*で以下のように定義されています。

薬機法による化粧品・医薬部外品・医薬品の定義

*「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称・薬機法)

「化粧品」と「薬用化粧品」の大きな違いは有効成分が配合されているかどうか。有効成分が配合されているものが「薬用化粧品」です。薬用化粧品の容器や外箱には「医薬部外品」と表示されています。

化粧品は医薬部外品と違って効果がないって本当?

「化粧品には有効成分が入っていないから、医薬部外品と違って効果がない」と思っている方も多いかもしれませんが、そうとは言い切れません。

医薬部外品には、厚生労働省が承認した有効成分が決められた濃度で配合されているため、一定の効果が保証されています
「にきびを防ぎたい」「紫外線によるシミ・そばかすを防ぎたい」「シワを改善したい」などの目的があって、「何を試せばいいのかわからない」「化粧品選びに失敗したくない」という方にはおすすめです。

医薬部外品には厚生労働省の承認が必要なので、製品の品質・有効性・安全性について一定の基準をクリアしています。使用する原料もたくさんの基準や規格をクリアしたものでなければならず、成分によっては配合量にも制限があります³⁾⁴⁾⁵⁾。

例えば美白有効成分として知られているアスコルビン酸(ビタミンC)の配合量は、厚生労働省作成の「いわゆる薬用化粧品の有効成分リスト」に「3~5%」と記載されています。
このリストは過去の承認前例に基づいて作成されており、3~5%の範囲であれば有効性・安全性については過去の実績に基づいて問題ないと判断されます。
5%を超える場合は承認申請の際に新たに安全性を証明できるデータを添付しなければならず、時間と労力・費用もかなりかかり、労力をかけたとしても承認されるのは極めて難しいため、医薬部外品として配合できるアスコルビン酸の上限は実質5%ということになります。(今まで、安全性データを新たに取得し、承認を得たという話は聞いたことがありません。)

一方、化粧品ではアスコルビン酸(ビタミンC)が5%以上配合された製品がたくさん販売されており、中には10%や20%以上高配合された製品もあります。
化粧品は厚生労働省が定めた「化粧品基準」に基づく配合禁止成分を配合しておらず、上限が定められている防腐剤や紫外線吸収剤、タール色素などの配合量を守ってさえいれば、メーカーが安全性や安定性を保障できる範囲で、配合する成分や配合量を自由に決めることができます。
そのため、医薬部外品では配合量の上限が決まっているアスコルビン酸も、化粧品では高配合することができるのです。

有効成分は高配合すればするほど効果が高くなるというわけではありませんが、配合量という側面から見ても、必ずしも「化粧品は医薬部外品に比べて効果がない」とは限らないということはご理解いただけたのではないでしょうか?

化粧品・医薬部外品の広告における薬機法

それでは、医薬部外品ではなく有効成分を高配合した化粧品をどんどん作ればいいじゃないか!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこには薬機法等で定められた広告にまつわる基準が関わっています。

化粧品には、事実であれば広告で訴求できる効能の範囲が56個、定められており、その56個の効果以外の表現は使用することができません。⁷⁾

化粧品の効能の範囲

たとえ、シミ予防に効果があるビタミンCが高配合されていたとしても、化粧品では「毛穴ケア」や「透明感アップ(うるおいによる)」などと表現することしかできず、「美白」や「シミ予防」の効果を伝えることはできません。

薬機法上、あくまでも化粧品は「効果が緩和なもの」であって「身体の構造や機能に影響を及ぼすもの」であってはならないので、その他にも、成分の浸透は(たとえ本来は真皮層まで浸透するとしても)「角層まで」という注釈を入れなければならないなど、広告に関して細かな規制がたくさんあります。

それに対して医薬部外品では「肌あれ・にきびを防ぐ」「紫外線によるシミ・そばかすを防ぐ」「シワ改善」など、承認された効能効果を広告でも使用することができます。
有効成分が真皮や基底層に作用すると認められているものであれば、「真皮まで浸透」「基底層まで浸透」と表現することも可能です。

このような理由で、医薬部外品を販売するメーカーは、効果を正しく消費者に伝えるために、時間や費用をかけてでも医薬部外品の承認を取得します。
一方で、医薬部外品の承認を取得せず、「効果実感があれば使い続けてもらえる」と信じて、あえて化粧品で新成分や高配合にこだわるメーカーもあるのです。

【まとめ】化粧品開発者だから語れる裏側

化粧品と医薬部外品の違いをご紹介しましたが、必ずしも「化粧品は医薬部外品と違って効果がない」というわけではないということはご理解いただけたでしょうか?

化粧品を開発するときも、発売前に試験で効能効果を確認しているメーカーはたくさんありますが、その結果を消費者に直接伝えることは法律で規制されています。実際に使っていただいて、製品で伝えることしかできないのです。

処方開発者の中にも、配合成分の規制が少ない分、新しい成分を配合したり処方のチャレンジをしやすい化粧品の開発を突き詰める人もいれば、医薬部外品のように制限された中で効果を高める技術の開発を突き詰める人もいます。

「化粧品は効果がないから意味ない」と切り捨てず、見えない影の努力も想像しながら、化粧品選びを楽しんでいただけたら嬉しいです!

化粧品と医薬部外品の成分表示の違いや背景について興味がある方は、こちらの記事も読んでみてください。

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(執筆:なな)

【参考文献】
1)化粧品と薬用化粧品,日本化粧品工業会,2024年7月4日アクセス
2)昭和三十五年法律第百四十五号 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律,厚生労働省
3)医薬部外品原料規格2021,厚生労働省
4)いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて,厚生労働省
5)医薬部外品の添加物リストについて,厚生労働省
6)化粧品基準,厚生労働省
7)化粧品の効能の範囲の改正について,厚生労働省医薬食品局長


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