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ゆるくて強い絆、猫文化の日

わたしにとっては猫は「ハローキティ」である。それは保護した白いねこがハローキティそっくりに見えたから。一緒に暮らすうちに、名前はキティから「きっちゃん」になった。このことを「きっちゃん、新米ママの奮闘記」に書いて、記事を通じて猫ファンとの温かな猫交流がはじまった。

古来、猫は多様に描かれてきた。彫刻絵画浮世絵小説映画…その理由は、小さな体で大きな存在感を発揮しているところにあるのだろうか。抜群の運動能力、そこにいたかと思うと、瞬時に遠方を走っている。独自の世界観があり、ふっと数日いなくなったりと、ミステリアスなところも魅力である。不可思議な属性は、さまざまな作家を魅了し、猫を描いて世界観を発表してきた。猫と人との関係は、ゆるくて強い信頼関係がある。切っても切れない強い絆がアーティストには最高の題材だったのだ。
そうそう、2月22日は日本の「猫の日」。この日を記念して、多様なコンテンツから、猫と人の甘い関係を味わってみようと思う。

作家と猫のすてきな生活、文学に描かれた猫

夏目漱石:吾輩は猫である
日本における猫が活躍する小説は、だれが選んでも「吾輩は猫である」に軍配が上がるだろう。主人公である猫が人間社会を観察し、飼い主や周囲の人々との関わりを描いている。社会の滑稽さを特有の覚めた視点で語る。人間の愚かさや滑稽さを鋭く批評しながら、猫自身の生きかたも表現され、愛猫家のバイブル的作品だろう。西洋文化に追いつこうとする日本人のズレた姿を面白おかしく描けたのは、自由人的生き方の猫であればこそと評される。ご存じ、文豪、夏目漱石の代表作である。

「吾輩は猫デアル」:夏目漱石
出典:Wikipedia

失踪した猫を探しまわり、めそめそとして何も手につかない

内田百聞:「ノラや」

内田百閒は晩年、家に住み着いた野良猫ノラを溺愛していた。食事や寝転ぶ姿、あくびをする姿に愛おしさを感じ、その思いは猫好きには共感できるだろう。この作品にはノラが突然いなくなった喪失感が描かれている。ノラが昼から帰らず、翌日も帰らないので心配で涙が止まらなかった。ノラのことを考え、何度も戸を開けるが、夜風が吹き込むばかりだった。ノラがいなくなった後、百閒は毎日泣き、食事も仕事もできない。捜索願いを出し、似た猫を見かけると確認に出かけるなど、ノラを大切に思っていた。「ノラや」と呼ぶ彼の声が聞こえてきそうだ。いなくなった猫への深い愛情が伝わる。

「ノラや」:内田百聞
中央公論新書
出典:版元ドットコム

1969年3月18日 『長靴をはいた猫 (劇場版1)』 予告篇
Youtube登録:Kami KezaKo

「不思議の国のアリス」に登場するニヤニヤ笑いのチェシャ猫

ルイス・キャロルの児童小説『不思議の国のアリス』(1865年)に登場するチェシャ猫。歯を見せたニヤニヤ笑いを常に浮かべ、人の言葉を話し、自分の身体を自由に消したり出現させたりできる不思議な性質を具えた、劇中で最も異能の存在として描かれている。

ルイス・キャロル作:「不思議の国のアリス」に登場する〈チェシャ猫〉
ジョン・テニエルの挿絵
出典:Wikipedia

赤川次郎作「三毛猫ホームズの宝さがし」

あやしげな宝の地図に夢中になり、家族も仕事も放り出して穴掘りを続ける男。名探偵・三毛猫ホームズがさぐりあてた「本当の宝もの」のありかとは? 大ベストセラーのミステリー、三毛猫ホームズシリーズである。

赤川次郎 「三毛猫ホームズの宝さがし」
三毛猫ホームズの事件ノート
出典:楽天ブックス

デズモンド・モリス「キャット・ウォッチング2 猫に超能力はあるか」

デズモンド・モリス(著)、岩合光昭(著)羽田節子(翻訳)
「音楽にどう反応するのか?」「同性愛のネコはいるのか?」。ネコに関する疑問・難問・珍問にドクター・D・モリスが次々に回答する。「キャット・ウォッチング2」は、パート1同様、「岩合光昭の世界のネコ歩き」でおなじみ、動物写真家の岩合光昭の選りすぐりの写真を加えた新装版。
・エッセイ=岩合光昭

著名な動物学者による猫に関する本では、キリスト教の魔女狩りによる猫への迫害が、ヨーロッパでのペスト流行を助長したことが明らかにされている。また、アジア由来の猫の品種が多くなった背景には、人間による極端な淘汰圧があったことがわかる。現在、欧米が猫や犬の保護活動に先進的であるのは、その反動ともいえる。

今や「ネコの時代」であり、私たちのライフスタイルや個人主義が、犬よりも猫との関係を心地よく感じさせている。この本は、猫が思ったよりも付き合いやすい動物であることを教えてくれている。



水木しげる「猫楠 南方熊楠の生涯」

日本が誇る大博物学者民俗学者である。あらゆる点で規格外れの豪傑だった。熊楠が発見した新種の粘菌は数知れない。驚異的記憶力の持ち主で、語学の達人。そして猫を愛した。熊野の森を守るために全力を尽くし、天皇が和歌山に来訪されたときは望まれて拝謁した。

水木しげるが描く「猫楠、南方熊楠」。18ヶ国語を操り、本作の設定は、猫語と幽霊語も修得している熊楠。奇想天外な水木しげるが描く熊楠は、世界最高レベルの猫世界であることは自信をもって言わせていただく。

水木しげる作:「猫楠、南方熊楠」
角川ソフィア文庫
出典:ねこほん「猫マンガ」

猫の目、神秘的なひみつ、心理的なストレスでも瞳孔が変化するのは美しい猫の目は、最大の魅力の1つである。

猫の魅力に「美しい目」がある。しかも、大きさが瞬時に代わる不思議な特性が愛猫家を魅了する理由の1つであることは間違いない。猫の目のメカニズムをごらんいただきたい。

2月22日の猫の日は、三連休の初日にあたる。せっかくの休日には、摩訶不思議な猫の魅力に存分にひたっていただこうと、この記事を猫好きの方々や、これから猫を愛するようになるだろうみなさんに贈りたい。

これほど長く人と一緒にいる猫は、逆にわたしたちを知り尽くしているのかもしれない。魅力あふれる猫に自然を学び、猫と人の関係を理解して、ゆるくて強い絆で平和に生きていきたいと願っている。


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kyotoK
noteの2年目はチャンレンジングな創作にもアプローチしたいです。応援いただいたチップで取材をしたり、作品づくりに活用させていただきます!