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バンクミーティングをしよう


今日は、事業者向けの記事です。

皆さんのところの資金繰りは順調でしょうか。

今はコロナ渦なので、地域と業種によっては厳しい状況が続いています。
地域と業種によっては、なんて書きましたが、飲食や観光業をダイレクトに直撃した経済の歪みは、徐々に様々なところに影響が出てきています。
製造業にも生産調整が入り、体力がない会社は追い込まれています。

コロナ融資を受けたところは、損益はマイナスだけれど、手許資金は何とかあるという状況かもしれません。
返済猶予を受けていれば、返済資金も必要ないので、赤字であっても、資金の減少は緩やかなのかもしれません。

それでも厳しい、毎月キャッシュがなくなっていく! という方や、コロナ融資を受けずに、普通にこれまで通り返済をしていたが厳しくなってきたという方がいたら、バンクミーティングを1つの方法としてお勧めします。

バンクミーティングとは

バンクミーティングというのは、文字通り、銀行(金融機関)と話し合いをする場です。
通常、A銀行とB銀行というように、複数の銀行から融資を受けていた場合には、個別に話をしていくと思います。
順調な会社はそれでいいのですが、資金繰りが厳しくなってくると、企業と金融機関との1対1だけの話では、上手く事が進まなくなってくることもあります。
事業者が要望をしても、金融機関の担当者の段階で話が止まっていたり、銀行の中で止まっていたりするケースもあります。
金融機関がやりたくない案件については、なかなか前に進みません。
理由をつけて断られたりもします。

そんなとき、バンクミーティングを開いて、すべての関係金融機関を集めて話を進めると、非常にスムーズに事が進みます。
1~2時間程度の時間で、すべての金融機関との歩調が合い、円滑に進んでいくのです。

バンクミーティングをして得られる効果

バンクミーティングを行うことで、次の3つの効果が得られると思います。

① 経営者の考えが事業計画にまとめられる。
② 事業計画が、関係金融機関に認知される。
③ 追加融資や、条件変更等の金融施策に応じてもらえる。

まず第1に、経営者は、今後どうしていくのかを事業計画に描かなければいけません。
通常は、5年間の計画を作ると思います。
売上や経費がどのように推移していくのか。
そのためには何をするのか。
財務バランスはどうなっていくのか。
数値を文章等で描いていきます。
事業計画を策定することによって、経営者の頭の中のモヤモヤが少し取れてきます。
先の見えない状態から、取り組むべき課題と、取り組んだ後の未来像を描くことができます。

2つ目は、バンクミーティングで事業計画を発表することで、各金融機関にその計画を認知してもらえることです。
各金融機関から様々な質問が飛び交います。
厳しい意見もあるかと思いますが、それだけシビアに金融機関は見ているということです。
経営者の想いを知ってもらい、一同が同じ空間で同じ時間を過ごすことで、そこに何か連帯感というと言いすぎですが、同じ時間を共有した者同士の小さな絆が生まれます。
これがとても大きな効果だと思います。

3つ目は、実際の金融支援が得られることです。
経営計画を策定した結果、生み出されるキャッシュがどのくらいなのかが見えてきます。
利益から、税金を払い、その残りが返済原資となりますが、実際のお金の流れは違います。
利益から、返済をし、最後に税金を払います。
どこかの段階でお金が無くなって、追加で融資を受けるという負のスパイラルに陥ります。
この負のスパイラルをどう改善していくのかが、バンクミーティングの最大の課題になるわけです。
その課題を乗り越えるために、おおむね次のケース別に次のような手順で進むと思います。

1.利益が出ず、キャッシュがマイナスの状況の場合
何をしたら、その状況から脱却できるかを計画で描きます。
その計画が現実的であるかどうかが問われるます。
そして、この状況から脱却できるまでどのくらいの期間がかかるのかを描きます。
その状況から脱するまでは、資金が減少し続けるわけですから、金融機関には追加融資を求めます。
追加融資に応じてもらえるかは、その会社の現在の状況と、計画の実現性によるのですが、結構ここのハードルは高いです。
追加融資に応じてもらえないにしても、1年間すべての融資の返済を猶予することで資金が回るのであれば、返済猶予を求めることになります。
返済猶予は、割と応じてもらいやすくなります。

2.キャッシュを生み出しているが、返済資金が足りない場合
1の状況を脱却し、もしくは、1の状況にまでは至っていない場合は、返済資金以上のキャッシュを生み出せているのかどうかがポイントになります。
そのキャッシュが生み出せていない段階では、そのキャッシュの範囲内で返済できるように条件緩和を求めます。
通常は、キャッシュの8割を返済に充て、残りの2割は手許に残るようにしてくれます。
8割の返済をどのように各金融機関に割り当てるのかが、各金融機関の間で話し合われますが、通常は、借入金残高に応じて配分する(残高プロラタ)か、借入金残高から担保分を差し引いた残りで配分するか(信用プロラタ)になると思います。

3.最後にどのようにして完済するか
2の結果、会社の資金繰りは楽になります。
今まで、手許に残らなかったキャッシュが、残るようになるからです。
ですが、返済期間を延ばすことはできません。
返済猶予や、返済額の一定期間の緩和を受けることによって、返済期日の後半には、条件がきつくなります。
これをテールヘビーと言います。
手許に残る資金は、将来の返済のために貯めるなり、さらなる業績拡大のために投資をしたりしていくことになります。
まだ、ここに行きつくまでの経験はしたことがないのですが、ある程度返済が進んでいくと、借り換えをすることにより、実質的に返済期間が延びることもあり得るのだと思います。

民間金融機関と信用保証協会と、日本政策金融公庫の足並みがそろう

バンクミーティングで得られる最も大きな効果がこれです。
通常は、民間の金融機関で融資を受けると思いますが、たいていは、信用保証協会の保証付き融資になると思います。
そうなると、銀行の独断では話は進みません。
保証協会がOKを出すか出さないかで、融資条件に応じられるかどうかが変わってきますので、民間の金融機関は保証協会を忖度していきます。
その結果、保証協会には、この話は通らないだろう、という要らない憶測で話を止められてしまうこともあります。

これが、一同に介すことで、話は一気に進みます。
一つの銀行が難色を示しても、他の金融機関が、それはうちはできますよ、とか、保証協会はこれで問題ないですよ、とか言ってくれます。
そうすると、1行だけが、渋るわけにもいかなくなるわけです。
これが一番大きな効果です。

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関ですが、民間の金融事業を侵食せず、補完的な融資を行うという立ち位置にあります。
なので、日本政策金融公庫は、他の銀行と足並みをそろえるというスタンスでいてくれます。
公庫の立場としても、意見を述べてくれるので、議論が深まります。

バンクミーティングするには誰に相談すればいい?

バンクミーティングを開く場合は、通常は、税理士にお願いすることになると思いますが、応じてくれる先生と、応じてくれない先生がいます。
そもそも税理士は税の専門家であって、経営や金融の専門家ではありません。
なので、積極的に税以外の分野にも携わっていこうとする先生は、こういうこともやってくれますし、そうでない先生は、やり方がわからないので断ってきます。

僕も、最初は、全くわからないところから始めました。
やっていくうちに、金融機関はこういうものなんだとか、いろいろなことを体験として学んできました。
やったことがなくても、やってくれる先生がいたら、何とか事は運ぶと思います。

外部からの見分け方としたら、認定支援機関に登録している税理士なのかどうかが一つの判断の仕方になりますが、登録していてもやってくれない先生もいると思います。
各都道府県には、経営改善支援センターや、再生支援協議会のような公的な機関もありますので、そちらに相談に行かれるのも手かもしれません。

はい。以上、長くなりましたが、今日はバンクミーティングについて書いてみました。
先日、うちのお客さんのバンクミーティングをしたので、書いてみましたが、3年目にもなると、各銀行も異動などで担当者が入れ替わってきて、急に厳しいことを言われたりします。
難しいものですが、それでもこういう場を何年もやってきているんですよというのが、経営者を守ることになってるんだろうな、と感じます。

お金が回らなくても、それなりに手立てはいろいろとあるのだと思います。
早めに、手を打つことがポイントです。

では、また。


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