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ゲー選かけ流しvol.22 『ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。今回は『ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン』(以下、ロマサガ2R)。

『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』に続いて名作のリメイクとしてリリースされた本作の魅力をしっかりと整理しておく。

<筆者の『サガ』シリーズプレイ歴>
・家庭用のシリーズ作品はオリジナル版を全作プレイ、クリア済み(アンリミテッド:サガも!)
・ロマサガ2はオリジナル(SFC)版を2周クリア
・リマスター版はPSVitaで3周クリア、プラチナトロフィー取得済み
・ロマサガ2Rは難易度ノーマルでクリア(クリア後要素含む)
・ロマサガ2Rのプレイ時間:40時間強


名作の名リメイクを彩る各種要素

本作はサガシリーズの長い歴史の中でも評価の高い『ロマンシング サ・ガ2』(以下、ロマサガ2)のフルリメイク作である。ロマサガ2は携帯アプリ版をベースにリファインされたリマスター版が発売されている事もあり、フルリメイクの初報は筆者にとっても衝撃だった。

Nintendo Directでロマサガ2の音楽が流れた時の
驚きと言ったら…!

ここではロマサガ2Rの特長にについて整理していきたい。

2D ⇒ 3Dフルモデルへの新生

本作はリマスター版のような2Dドットではなく、3Dフルモデルのグラフィックに進化している。

近年、モデリングの労力節約の為に建物内部の描写についてはオミットされ、建物に入れない3Dゲームも少なくない。
そんな中でも本作は原作のクオリティを尊重し、建物の内装・家具・小物に至るまでしっかりとモデリングされていて、好感が持てる丁寧な作りとなっている。

ヌオノへと向かう船内での会話も
ばっちり3Dグラフィックで。

今年発売された同社の3DモデルRPG『FINAL FANTASY VII REBIRTH』『聖剣伝説 VISIONS of MANA』と比較するとやや見劣りするものの、非常に多くのクラスとバリエーションがあるキャラクター達やモブキャラに至るまでしっかりと描写できている。筆者はPS5で遊んだが、及第点は超えているという感想だ。

原作の個性を活かしつつ大胆にアレンジされた戦闘

サガシリーズの魅力と言えば何はなくとも戦闘の面白さ。システム面の工夫もさることながら、緊張感のあるシビアなバランスもファンに支持されるポイントである。

ロマサガ2Rはターン制バトルの中でもタイムラインバトルを採用。行動順が可視化された状態で一人ずつ行動するシステムに変更となった。

現行ターンと次のターンのタイムラインを踏まえ、
最適なタイミングで攻撃・回復・補助を行うべし。

ロマサガ2から実装された「閃き」システムは本作でも踏襲。今回は基本属性の術についても「閃き」で新しい術法を習得する形式となった。

また、『サガフロンティア』以降に実装された「連携」も採用。連携ゲージを満タンにする事で発動できる連携は、繰り出す技にダメージ倍率がかかり、通常/ボスバトルを問わず非常に強力な戦術として機能してくれる。

連携ゲージを溜めるには敵の弱点属性で攻撃する
必要があるため、連携周りの戦略性は
『オクトパストラベラー』に近い。

技術点をベースとしたバトルごとの成長要素については、グラフによって可視化される事により、あとどれくらいで武器・術レベルが上昇するか一目で分かるようになった。原作でマスクデータとなっていた理力や、戦闘中に閃く可能性がある技も開示され、遊びやすさが格段に増している。

閃く可能性のある技が可視化され、より効率的に
技の使いどころを見極められるようになった。

このように、原作をベースに新要素がアドオンされているにも関わらず、遊んでいる時はロマサガ2と同様の緊張感を持って遊べた。
筆者はノーマル難易度で遊んだが、オリジナル難易度の場合は敵からの被ダメージが大きく、原作と遜色のないシビアなバトルを堪能できるようだ。

遂に明かされる七英雄の過去

ロマサガ2の目的はアバロン帝国による全土統一であるが、その最大の障壁となるのが七英雄である。

原作のオープニングで、七英雄はかつて英雄として民衆から多大な賞賛を受けていたにも関わらず突如姿を消した。長い年月を経て帰還した七英雄だったが…?という流れ。

なぜ七英雄は姿を消したのか?また、彼らが用いる「同化の法」、オアイーブが皇帝レオンに伝えた「伝承法」とは?なぜクイーンは七英雄も恐れた存在と伝えられているのか?

原作で触れられたキーワードにまつわるエピソードが
ロマサガ2Rで初めて詳細に語られる。

原作/リマスター版では断片的な情報のみ開示され、決して語られる事の無かった過去のエピソード(七英雄の記憶)が本作で遂に明らかになる。原作ファンにとっては最も興味深い追加要素であろう。

「七英雄の記憶」はクリア後のやり込みにも
影響するので、見つけ次第チェックされたし。

その他やり込み要素など

ロマサガ2のやり込みとしてはパーティーを極限まで強化する、レアアイテムのドロップを狙う、など様々。特に戦闘回数に応じて敵の強さが変化する原作は、特定ランクの敵がドロップするレアアイテムの収集が非常に厳しい作品だった。

ロマサガ2Rでは周回引継ぎが可能となったため、限定ボスから取りそびれたレアアイテムを2周目以降で再チャレンジできるようになるし、ドロップ確率を増やす装備品(ドロップリング)が追加された事で格段に遊びやすくなっている。

竜槍ゲイボルグを入手して思わずニッコリ。

クリア後の追加ダンジョンやボスはリマスター版をベースに再構成。公式からアナウンスされているように、七英雄の影を倒して専用武器と専用技を取得する事もできるので、パーティを更に強化する事ができるようになった。

一方、「もっとシビアなバトルを!」という声に応え、クリア後に開放される「ベリーハード」「ロマンシング」難易度にチャレンジするのもあり。筆者も少しだけ遊んだが、1周目の引継ぎを行ってもベリーハードは非常に厳しい難易度で、ロマンシングはちょっと意味が分からないバランス調整になっている。腕に自信のあるプレイヤーはチャレンジしてみるのも一興だろう。

周回引き継ぎしてもベリーハードの序盤はキツい。
ロマンシングはハンパな覚悟では遊べない。

バトルに歯ごたえがあり、やり込みの幅が広かった原作から、更なるやり込み要素が追加され、遊び応えは満点。のんびりとストーリーを追いたいカジュアルプレイヤーから、ロマンシングを追い求めたいガチプレイヤーまで幅広くカバー。間口が広く底の深い、理想形に近いJRPGに仕上がっている。

ロマサガ2を「今」リメイクする意味とは?

本作はスクウェア製ゲームのリメイク作品としてトップクラスの完成度を誇る仕上がりとなっており、いちサガファンとして非常に喜ばしい。

しかし、リマスター版が現行ハード・スマホで今も遊べる現在、なぜ改めてリメイク版をリリースする必要があったのか?という筆者の疑問について、自分なりに考えをまとめておきたい。

1.スクウェアの一軍IPリブート

『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』『ロマサガ2R』から垣間見えるリメイク作に対する「本気度」からすると、かつてスクウェアの看板タイトルとなっていた一軍のシリーズ作品のブランド力を取り戻そうとしているように見受けられる。

スクウェアのIPは、『FINAL FANTASY』を王者とし、『サ・ガ』『聖剣伝説』と続いていたが、サ・ガと聖剣伝説は共にSFCからPSのタイミングで売上がピークアウト。PS2のシリーズ作『アンリミテッド:サガ』『聖剣伝説4』でユーザ評価と売上を著しく落とし、その後のシリーズ新作まで大きな空白期間が置かれる事となった。

PS2以降は『KINGDOM HEARTS』が有力シリーズ作品として台頭したものの、こちらはストーリーが連作となっている上にリリースペースが落ちており、シリーズ作品としての未来は必ずしも明るくないのが実態だ。

ロマサガ2Rは、スクウェアの一軍IPであるサガの中でも名作とされる『ロマサガ2』を再構築する事でユーザー評価を獲得し、ブランド力の立て直しを目論んでいるのではないかと考える。

ではなぜ、サガシリーズを復活させる必要があるのか。その理由は次項で述べたい。

2.FINAL FANTASY(FF)のブランド力低下

『FINAL FANTASY』シリーズのファンとしては悔しく、口にするのを憚られる話ではあるものの……。
客観的事実として、FINAL FANTASYはPS時代の3作(VII・VIII・IX)をピークに、国内販売本数は緩やかに低下。FFXIIIまでは200万本クラスのセールスを維持していたものの、XV以降、最新作である『FINAL FANTASY XVI』はともに国内販売本数100万本を割り込むようになってしまっている。

ワールドワイドの販売本数は必ずしも悪くないものの、
国内での存在感が薄れていっている事実が寂しい。
(画像は『FINAL FANTASY XV』)

PS4/PS5のハード売上が芳しくない事も要因として考えられるが、FFのナンバリング新作を遊ぶためにハードごと買う、というIPでは無くなりつつあるという事実はぬぐえないだろう。

筆者はFF15の為にPS4を、FF16の為にPS5を購入した。
後悔など微塵もない。
(画像は『FINAL FANTASY XVI』)

今年はスクウェア・エニックスがAAAクラスの大作開発について見直しを行うというニュースも飛び込んでおり、DQやFFがそれに該当するのではないか、との憶測が飛び交っていた。真偽のほどは定かではないが、そういう疑念を持たれるくらい、現在FFはゲーマーに対する求心力を失っている事を意味する。
(稼ぎ頭という意味ではFFXIVがあるのだが、MMORPGであるため、ナンバリング新作の未来に直結するとは言い切れないと考える)

FFというスクウェアの屋台骨が揺らいでいる今は、相対的に他のIPの存在感を増すチャンスでもある。サガや聖剣伝説など、FFの脇を固めていたかつてのIPを再生させ、今一度スクウェアブランドを復権させるという役割を、本作は担っていると言えないだろうか。

3.ソシャゲ(ロマンシングサガ リ・ユニバース)との相乗効果

『サ・ガ』シリーズに限定して言えば、近年最もスクウェアの経営に貢献しているのは『ロマンシングサガ リ・ユニバース』(以降、ロマサガRS)だろう。

『ロマサガ3』の300年後の世界設定を元に、シリーズキャラが勢ぞろいするクロスオーバー型のソーシャルゲームで、リリース後1~2年ほど、非常に好調なセールスを記録していた。6周年を間近に控え、セールス・アクティブユーザー数ともに収束曲線を描いているものの、未だサガシリーズとしては稼ぎ頭と言える。

現在はロマンシング佐賀10周年イベント開催中。

今年発売された待望のサガシリーズ新作『サガ エメラルドビヨンド』も今回の『ロマサガ2R』も、ゲームの魅力をユーザに訴求しつつ、ロマサガRSにキャラを投入する事で、ソシャゲの経営貢献につなげる役割を持たせようとしているのだろう。実際にロマサガ2R発売に合わせて、新職業(鍛冶屋、踊り子)がガチャに投入されている。

早速ガチャに登場した鍛治職人フロスティ。

以上はあくまで筆者の主観であり、推測の域を出ない。ただし、当たらずと言えども遠からずではないかとも考えている。
こういった想像を膨らませたくなるほどに、『ロマサガ2R』は優れたリメイクであり、その存在感も十分という事なのである。

まとめ

シリーズの続編やリメイクは、「クリエイターが作りたいもの」と「ユーザーが求めているもの」の骨子が一致している事が肝要と筆者は考えている。その意味でロマサガ2Rは、ユーザーが求めているものをできる限り汲み取ろうという強い意思を感じる作品だった。

原作のドット絵(ポーズ)を再現する七英雄の
戦闘前演出。「分かってる!」と思わず膝を打つ瞬間。

原作のツボをしっかりと押さえた上で、他のシリーズ作品の要素も柔軟に取り入れた結果、ロマサガ2の面白さはそのままに、連携やタイムラインバトルなど、新しい楽しさも提供してくれている。

今ロマサガ2を遊ぼうかと考えているプレイヤーには、原作よりもリメイク版の本作を強くオススメする。
「今サガシリーズの中でどれか一作遊ぶなら?」という質問についても、『ロマサガ2R』と即答する。

本作を一言で表すならば、

先帝の無念を晴らすべく、歴代皇帝の長所を継承した最新にして最強の皇帝(=サガ)
である。
断じて最終皇帝ではない、と信じたい。

聖剣伝説3とロマサガ2を傑作にリメイクした立役者、
株式会社ジーン。要チェックなデベロッパーかと!

長くなったが、これでも語り尽くせないくらい魅力に満ち溢れた作品である。
未プレイなら、是非!

ロマサガ2Rの選評は以上。
次回もよろしくお願いします。

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