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ゲー選かけ流しvol.20 『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』

ゲームの選評を気の向くままにチビチビとかけ流す、ぬるま湯スペース。
節目の第20回は『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』(以降、『ToM』)。

先日『聖剣伝説 VISIONS of MANA』をクリアしたのだが、こちらの選評を書くには、前身となる聖剣伝説3のリメイクについてまとめる必要があると筆者は考えている。今回は『ToM』の魅力についてジックリ語っておきたい。

<筆者の『聖剣伝説』シリーズプレイ歴>
・原作は『聖剣伝説』『聖剣伝説2』をプレイ、クリア済み
・『聖剣伝説3』はリメイク版『ToM』でプレイ
・『聖剣伝説 LEGENDS of MANA』以降の作品はほぼ未プレイ
・ソシャゲ等派生作品は未プレイ
・『ToM』のプレイ時間は50時間強、3周クリア


フルモデルチェンジを果たした名作アクションRPGのリメイク

『ToM』はスーパーファミコン(以降、SFC)版の原作『聖剣伝説3』をリメイクした作品であるが、リメイクにあたり、相当チャレンジングな調整を行っている。

① 2Dドット絵から3Dポリゴンモデルへの進化
SFC時代の美麗でグラデーション豊かなドット絵から離れ、3Dポリゴンモデルへとモデルチェンジした『ToM』。

他のゲームに出張する事も増えた人気キャラ、
リースもこの美しさ。

スクウェアの名作を3DリメイクするケースはDSの頃からあった(FF3, FF4等)。しかし、全般的にローポリゴンで見栄えは必ずしも良くなく、いっそドット絵でリファインされる事を希望する声も多かった。
今回は主人公達の個性が際立つ3Dモデルへと生まれかわり、ファンタジーの世界観を損なう事のない仕上がり。物足りなさを感じる事は少ないだろう。

②『聖剣伝説2』以前に回帰したアクション部分の調整
原作の『聖剣伝説3』は『聖剣伝説2』以前にあったプレイヤーの位置取りによって敵の攻撃をかわすといったアクション要素が一部変更され、回避困難な攻撃が増えた。
その結果、ヒット&アウェイのような立ち回りが事実上不可能となり、手狭なフィールドの中をダメージ覚悟で、手数で攻める乱戦メインのゲーム性となっていた。(※筆者は原作未プレイだが、知人のプレイを観戦する機会で感じたポイント)

広さと奥行きのあるバトルフィールドを自由に動き
勝利をもぎ取るスタイルに。これぞアクションRPG。

一方、『ToM』は3Dにリメイクされたフィールドを有効活用できるよう、アクション性を強化。ザコ・ボス敵を問わず敵の攻撃を見切ってキッチリと回避できるようになった。ノーダメージや制限時間内勝利などで入手経験値にボーナスが付くようになっており、プレイヤーのアクションスキルを磨く動機付けも図られている。

ただ勝つだけでなく勝ち方にこだわる
メリットを見いだせるBONUSシステムが嬉しい。

以上2点の変更点により、『ToM』は原作の世界観を踏襲しつつも全く新しいアクションRPGへと新生を果たした。プレイヤー評価も良好で、最新作『VISIONS of MANA』にも本作のノウハウがしっかりと引き継がれている。

個性豊かな主人公と敵勢力たち

本作はゲーム開始時に6名の主人公からメインキャラ1人を選択できる。ここでは各キャラクターの特徴についてまとめておこう。

<デュラン>
フォルセナ王国の傭兵で、剣の扱いに長ける少年デュラン。国王の盟友であった父親ロキの血を継いでおり、国と王に対する忠誠心の強い人物。

年一度開催されるフォルセナの武術大会で優勝し、栄光をつかんだのもつかの間、フォルセナを襲撃した「紅蓮の魔導師」と交戦したデュランは敗れてしまう。紅蓮の魔術師に雪辱を果たし、祖国を守るため、クラスチェンジの力を求めて旅立つ。

武術大会に優勝したにも関わらず紅蓮の魔導師に完敗。
それが、デュランの闘争心に火をつけた。

<ケヴィン>
ビーストキングダムの王子ケヴィン。獣人王の父の元厳しい修行に励む中、人間である母の血を継いだ彼は優しい心も持ち合わせていた。

普段はカールとのんびりとした日常を過ごすケヴィン。
獣人王である父はそれを快く思っていないようだが…?

そんなケヴィンは、最も心を通わせていた狼カールが凶暴化した際に獣人の血が覚醒。カールをその手にかけてしまう。カール狂暴化の黒幕であった父獣人王に挑むも敗れたケヴィンは王国を離れ、「死を喰らう男」から知らされたカールを蘇らせる手段を求めて旅に出る。

<ホークアイ>
ナバール盗賊団に属する少年ホークアイ。天涯孤独の身ながら性格は明るく女好き。盗賊団の首領フレイムカーンに拾われてからは実の子のように育てられた。

ある時、フレイムカーンが豹変した事を訝しんだホークアイ。その原因がナバールに取り入った「美獣イザベラ」にあると睨んだホークアイはイザベラの調査を進めるものの、逆に親友イーグル殺しの濡れ衣を着せられ投獄されてしまう。ニキータの助力で脱獄した彼は、イーグルの仇をうち、呪いをかけられた少女ジェシカを救う手段を求め、光の司祭を探す旅に出る。

親友を失い、自身は無実の罪で投獄。心を通わせる
ジェシカには呪いがかけられる。どん底の状況を
ホークアイはどのように打開していくのか。

<アンジェラ>
魔法王国アルテナの王女でありながら魔法を使う事ができないアンジェラ。女王である母に対する反発心や、母の側近である「紅蓮の魔導師」に対する嫌悪感から、跳ねっ返りでおてんばな少女に育った。

ある時、母からマナストーンの力を開放するための生贄にされる事を知ったアンジェラ。彼女はショックから内に秘めた魔力を暴走させ、雪原へと転移してしまう。追っ手から逃れ、魔法を習得する手段を求め、アンジェラは旅に出る。

王国に帰れない身となったアンジェラ。
占い師に今後の進むべき道を尋ねる事に。

<シャルロット>
聖都ウェンデルの光の司祭の孫、シャルロット。彼女が慕っている神官ヒースが「死を喰らう男」にさらわれてしまい、ウェンデルを離れてヒースの行方を追う旅に出る事になる。

年齢の割にやや世間知らずな面が見え隠れする。
恐れを知らぬ無邪気さもシャルロットの個性ではある。

年齢と見た目が釣り合っていないシャルロットだが、これはエルフの血を引いているためであり、ヒースを追う旅路の中で思いがけず自身の出自を知る事になる。

<リース>
風の王国ローラントの王女で、アマゾネス軍のリーダーも務める少女リース。幼い頃に母を亡くして以来、弟エリオットを守るべく、保護者として、王女として強い責任感を持って日々を過ごしていた。

『聖剣伝説3』の主人公はみな何かを喪失するところから
物語が始まる。リースも然り。

しかし、エリオットがナバール盗賊団の策略に嵌り、「美獣イザベラ」率いる敵の侵略を受けてしまう。国王である父を失い、エリオットもさらわれてしまったリース。父の遺志を継ぎ、王国再建とエリオット奪還のため、故郷から旅立つ決心をする。


主人公6人はそれぞれ、「紅蓮の魔導師」「死を喰らう男」「美獣イザベラ」が属する3つの敵対勢力のうち1つと因縁があり、メインの主人公に選ぶか、パーティメンバに選ぶか否かによって主人公達の運命が大きく変動する事になる。

3つの敵対勢力もお互いが邪魔な存在となっているようで、メインで選択した主人公と因縁のある勢力だけが最後まで対立。残り2つの勢力は争いに敗れフェードアウトしていく運命にある。

選んだ主人公によって最後に戦う敵が決まる。他陣営は
敵同士の戦いに敗れ、あっけない最期を迎える事も。

選んだ主人公によってストーリーも黒幕も大きく変動するというのはSFC当時のRPGとしては珍しく、主人公を変えて周回プレイする良いモチベーションになるだろう。

プレイヤーの個性が際立つクラスチェンジ

本作は特定レベルへ到達(+専用アイテムを使用)する事で上位のクラスにチェンジ。パラメータの上昇に加えて専用のアクションやスキルを習得し、戦力を大幅に底上げする事ができる。

クラスチェンジの演出も見どころ。
リースの晴れ姿を拝める重要ポイント。

初期クラス(クラス1)からクラス2・クラス3へとチェンジする際に、それぞれ光 or 闇の属性をそれぞれ選択する事で計4通りのクラスに分岐。それぞれのキャラクターをプレイヤー好みのプレイスタイルに応じたクラスへと成長させられるのが本作の魅力となっている。

クリア後も続くやり込み要素

原作SFC時代はクリア後のやり込み要素は控えめだったが、『TRIALS of MANA』は今風のリメイクらしく、クリア後の遊びどころもしっかりと完備。特徴としてはやはりクリア後の追加ストーリーと追加ボス、そして「クラス4」の存在である。

4種類に派生したクラス3が、光と闇、2種類のクラス4に収束。主人公たちに更なる強化が行われる事となる。まずはパーティメンバを全員クラス4にチェンジする事が最優先のやり込みになるだろう。

どのクラスにするか悩むくらいなら、直観と本能に従い
見た目で決めるのもアリ。その方が後悔しないかも。

主人公達が更なる力を手にした後は隠しボスを倒す事が最終目標になる。隠しボスはシリーズ作品を跨いで語られる事がある存在で、シリーズをくまなくプレイしている人には、色々想像の余地を残す内容となっている。

………えーと、どちら様…?
シリーズをくまなく遊んでる人ならピンと来るかも。

やり込み要素のお陰で原作よりもボリュームアップが図られ、主人公それぞれのクラス4を操作したくなったら周回プレイも捗る。やり込み要素としては原作のイメージを損なわない範疇でキレイにまとまっている印象。

『TRIALS of MANA』という作品が担った"試練"

本作はスクウェアの『聖剣伝説3』のリメイク作という以上に、『聖剣伝説』というIPにふたたび火を灯すための役割を担っているのだろう、と筆者は想像している。

シリーズのナンバリング作は『聖剣伝説4』以降、長らく途絶えていた。
恐らく『4』のセールス・評価共に十分ではなかった事が原因と思われる(特にユーザ評価)。その後ポツポツとリメイクや移植作はリリースされていたが、いずれも評価はあまり芳しくなく、『5』がリリースされる気配を感じる事はなかった。
これは『聖剣伝説』のIPが事実上凍結し、ソシャゲなどの形態で過去作品のガワだけを流用するビジネス資産になったのだと、筆者は感じていた。

そんな状況の中、本作は『聖剣伝説3』で好みの分かれていたアクションRPG要素を抜本的に見直しつつ、グラフィックは現代向けに大幅にリファイン。原作の良さを残しつつ、ビジュアル・サウンド・ゲーム性を大きく進化させた。

3DモデルでSFC時代のセリフ回しはやや違和感を
感じなくもないが、一新されたゲーム性から得られる
恩恵と比べれば誤差の範疇である。

「もう一度聖剣伝説のIPを復活させ、ナンバリング続編を出したい」という製作者の強い意思を感じるリメイク作品となった『ToM』は、作品の評判も上々。DL版を含め、ワールドワイドで100万本を超えるセールスをたたき出した。

最新作『VISIONS of MANA』を遊べば、『TRIALS of MANA』がベースになっている事は容易に想像がつく。本作が成功を収めた事で、シリーズの未来につながったという事なのだろう。

シリーズのナンバリング最新作を手掛けるべきか否か?
その判断を問う「TRIALS」(=試練)。本作はその「試練」に見事に打ち勝った作品と言えるだろう。

おわりに

本作は『聖剣伝説』のIPをリブートするという役割を十分に果たした作品である。目立った欠点もなく、非常に高い水準でまとまっており、スクウェアのリメイク作品の中でもトップクラスの良リメイクであると筆者は考えている。

原作クリア済みのプレイヤーはもちろん、未経験者にも強くオススメしたい作品。本作を一言で表すならば、
シリーズ存続をかけた試練(TRIALS)を乗り越えた珠玉のアクションRPG
である。

『聖剣伝説』のバトンを未来につないだ渾身のリメイク。
サブスクでもプレイ可能。是非ともプレイされたい。

本作の選評を踏まえ、次は『VISIONS of MANA』についてまとめる予定。
次回もよろしくお願いします。

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